アイテム
「あんたで最後よ」
杖でゾンビの頭を殴り潰すと、頭の中に鈴の音が鳴り響いた。
『おめでとうございます。ミシェル・ラウンデルはレベル10になりました』
『おめでとうございます。武術における杖術がE(レベル3)になりました』
『おめでとうございます。ミシェル・ラウンデルはゾンビ討伐数が千体に達したため、称号【ゾンビハンター】を取得しました。また取得報酬として、メッセージボックスに【グミいりアイス】が贈られました』
「はぁ、はぁ……。何よ、これだけやって、やっとレベル10で杖術レベル3にしかならないの? それに称号ゾンビハンターに取得報酬って。まったく、本当にふざけてるわ」
私は肩で息をしながらその場にへたり込んだ。
周囲からは、もうゾンビのうめき声は聞こえない。
粗方倒してしまったのか、それとも再び湧くまでに時間を要するのか。
何にせよ、ようやく一息つける。
「日が昇りもしなければ沈みもしない。薄暗いなかで時計もないから、時間の感覚がさっぱりだわ」
空を見上げて愚痴をこぼし、私はメニュー画面を呼び出してステータス画面へと進んだ。
【ミシェル・ラウンデル ステータス一覧】
レベル:10【白ゲージ(経験値)】
振り分けポイント:30
状態:普通
体力:887/1500【緑ゲージ】
魔力:478/2000【青ゲージ】
スタミナ:1500/1500【黄色ゲージ】
満腹度:10/100%【橙ゲージ】
生命力:G(15)【体力量】
精神力:G(20)【魔力量】
持久力:G(15)【スタミナ】
筋力:G(15)【物理攻撃力】
健康力:G(10)【物理防御力+状態異常耐性】
技量:G(10)【武術全般の成長率上昇、様々な要素にプラス補正】
敏捷:G(20)【身軽さ、攻撃速度】
知恵:G(11)【魔法攻撃力】
知識:G(10)【魔法防御力】
運:G(10)【幸運に巡りやすくなる】
根性:F(30)【経験値増加、自然回復力上昇。致命的な一撃を受けた際、まれに神の祝福が発動】
「……やっぱり、満腹度以外のステータスに変化はないわね」
ゾンビをひたすら倒し続けた結果、分かったことがある。
レベルが上がることでステータスの数値には変化がなくとも、明らかに身体能力が向上していた。
例えるなら【レベル補正】とでも言えばいいのかしら。
杖術や体術といった武術レベルにも同じような補正があるのかもしれない。
当初はポイントをある程度溜めてから振ろうと考えていたのだけれど、振らなくても明らかにゾンビが簡単に倒せるようになっていた。
それに、ゾンビの頭上に浮かんでいた名前の色が、黄色からさらに薄い黄色へと変わりつつある。
「たぶん、名前の色はその敵の強さを表しているのね」
ゾンビの名前が黄色だった頃は、ちょうどいい難易度だったのだろう。
けれど、色が薄くなるにつれて、レベルの上がり方も遅くなった。
レベル9以降、ゾンビをいくら倒しても白ゲージに変化は見られない。
とはいえ、完全にゼロではなく、倒し続ければ少しずつ上昇していた。
ゾンビとの戦いを通じて、自分がどのステータスにポイントを振るべきか、ようやく見えてきた。
「今、私が振るべきステータスはこれね」
【ミシェル・ラウンデル ステータス一覧】
レベル:10【白ゲージ(経験値)】
振り分けポイント:0
状態:普通
体力:887/1500【緑ゲージ】
魔力:478/5000(2000+3000)【青ゲージ】
スタミナ:1500/1500【黄色ゲージ】
満腹度:10/100%【橙ゲージ】
生命力:G(15)【体力量】
精神力:G(50=20+30)【魔力量】
持久力:G(15)【スタミナ】
筋力:G(15)【物理攻撃力】
健康力:G(10)【物理防御力+状態異常耐性】
技量:G(10)【武術全般の成長率上昇、様々な要素にプラス補正】
敏捷:G(20)【身軽さ、攻撃速度】
知恵:G(11)【魔法攻撃力】
知識:G(10)【魔法防御力】
運:G(10)【幸運に巡りやすくなる】
根性:F(30)【経験値増加、自然回復力上昇。致命的な一撃を受けた際、まれに神の祝福が発動】
精神力、つまり魔力量を優先的に60まで上げ、その後は知恵と知識の順に60まで引き上げてアイテムボックスを解放する。
それが今の最適解だ。
レベル補正と補助魔法の恩恵で、筋力・持久力・健康力あたりは後回しでも何とかなりそう。
そう判断した私だったが、念のため他の項目も確認しておこうと、まずは称号に目を向けた。
【称号】
食べられちゃった:敵からの標的率+1%
終わりなき鍛錬の始まり:取得経験値+1%
ゾンビハンター:ゾンビ系に与えるダメージ+10%
「あら、これは結構いい効果じゃないの」
声が思わず弾んだ。
ゾンビしか出てこない今の状況でダメージ+10%はありがたい。
続いて、私はメニュー画面に戻り、所持アイテム一覧を開いた。
「……カイネが最初に言っていた『二十種類まで』の意味、ようやくわかった気がするわ」
一覧には、私が持っている『普通の杖』が一つ。
そして、なんと『腐った屍肉』というおぞましい名前のアイテムが百個以上入っていた。
ゾンビを倒すと、白く光る玉が時折地面に残る。
それを拾った際、脳裏に『腐った屍肉を取得しました。所持アイテム一覧に登録されます』という声が響いていたのだ。
そのときはゾンビに囲まれていて確認できなかったが、どうやらそれがこのアイテムだったようだ。
「私はまだアイテムボックスを使えないはずだけど。これも祝福の力なのかしら」
首をひねりつつ、腐った屍肉を選択すると『補足説明』の表示が現れた。
「えっと、なになに……」
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