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再挑戦

「なら、せめて取り返しのつかない要素ぐらいは教えてくれないかしら。私の神域攻略を余興として楽しみたいんでしょ? 攻略が行き詰まったら楽しめる時間が短くなってしまうかもしれないわよ」


『それは一理ありますね。少々お待ちください』


カイネは念話を切ったのか、それ以降、私が何を言っても返事がこなくなった。


お待ちくださいって言っていたから、クソ神に確認でもしているのかしら。


することもないから石碑の前で寝転んで、自身のステータスを見つめていると、ふいに呼び鈴の音が脳裏に響いた。


『お待たせしました』


「いいえ、気にしないで。それよりも、何か確認してくれたんでしょ?」


『はい。一応、どこまで伝えていいかという点についてを詰めてきました』


詰めてきたって、まるで仕事のような言い方ね。


もしかして、カイネって事務仕事専門の神様か何かなのかしら。


『お伝えできる取り返しのつかない要素としては、成長ポイントをあまり極端な割り振りをすると、振り直しができないので攻略に苦労する部分があるということぐらいでしょうか』


振り直しができず攻略に苦労するということは、物理や魔法だけでは突破できない場所が後々出てくるのかもしれないわね。


たとえば健康力というステータスの横にあった【物理防御力+状態異常耐性】なんかが怪しい。


腐ったドラゴンが瘴気を操ってきたことを鑑みれば、他にも瘴気を扱う魔物や瘴気が充満した場所がある可能性がある。


その時、状態異常耐性が低いと、事実上、攻略に詰まってしまうとか。


あのクソ神の性格上、十分にあり得る話だわ。


「なるほどね。他には?」


『現状だとお伝えを許されたのはこれぐらいです』


「……あ、そう。神様の割にケチくさいのね」


『ケチくさいですか。ミシェル、貴女は本当に面白いですね』


呆れ顔で肩を竦めると、カイネの笑いが脳裏に響いた。


『では、折角ですから取得した称号についてもご説明しましょう。メニュー画面の【称号】を開いてみてください』


「わかったわ、称号ね」


【称号】

・食べられちゃった:敵からの標的率+1%

・終わりなき鍛錬の始まり:取得経験値+1%


「……こんなの、いつ取得したのかしら?」


武具と鍛錬の祝福を得たばかりの時には、こんな称号なかったはず。


首を傾げていると、カイネが淡々と説明を続けた。


『様々な条件によって得られる称号は、取得することで様々な効果を受けられます。しかし、すべてが取得者にとって利点となるわけではありません。ゾンビに捕食されたことで取得した【食べられちゃった】の効果は、敵からの標的率+1%です。つまり、敵に狙われやすくなるということですね』


「あぁ、そういうことね」


ゾンビに食べられて意識を失ったあとに得た称号というわけね。


仮に生きていたとしても、取得したことに気付く余裕なんてなかっただろうけど。


それにしても、敵からの標的率+1%は地味に嫌な効果だわ。


「これ、いらない称号を削除する方法はないのかしら」


『汚名返上できる称号もありますが、一度得た称号を削除することはできません。ですから、日々の行いには十分気をつけてくださいね』


「わかったわ。まぁ、でも【終わりなき鍛錬の始まり】は経験値+1%だし、前向きに頑張るわ」


『はい、期待しております。それと、私から餞別がございます』


「餞別……?」


首をひねったその時、私の身体が暖かい光に包まれた。


何が起きたのかわからず、慌てて自分の身体を確認してみるが異常はない。


「ちょ、ちょっとカイネ。一体、何をしたのよ」


『お伝えしたではありませんか。餞別ですよ。ネルヴィアに許可をもらい、私もミシェルに祝福を一つ授けました。確認してみてください』


「え……⁉」


私は急いでメニューを開き、祝福一覧の項目を確認した。


【祝福一覧】

・武具と鍛錬の祝福

・慧眼の祝福


「本当だ。新しいのが増えてる。えっと、慧眼の祝福ね。効果を教えてもらってもいい?」


『はい。慧眼の祝福とは、本質を見抜く力。敵の強さ、武具に必要な能力値など、さまざまな場面で役に立つことでしょう』


「すごい、いまの私に一番必要かもしれない祝福だわ。カイネ、ありがとう。神様をケチくさいなんて言ってごめんなさい。貴方はクソ神と違って良い神様なのね」


『ありがとうございます。しかし、神に良いも悪いもありませんよ。私もネルヴィア同様、ミシェルが気に入っただけです』


カイネは声しか聞こえないけれど、その声音からはにかんでいるのがわかるようだった。


『貴女が強くなればなるほど、慧眼の祝福で見抜けることも増えていくでしょう。頑張ってください、応援していますよ』


「わかったわ。じゃあ、そろそろ行ってみるわね」


『はい、お気を付けて』


念話を終えて歩き出そうとしたその時、またしても脳裏に鈴の音が響いた。


『あ、そうそう。ゾンビ達に捕食される寸前、レベルが上がっていましたから振り分けをお忘れなく』


「あ、そうだったわね」


私はメニューを開いてステータス画面に進む。現在はレベル4で、ポイントが15余っている。


ここで最初に確認したときはレベル1だったから、レベルが上がるごとに5ポイントもらえていたわけね。


どう振り分けようかしら。


少し悩んだ末、私は一気に振り分けを終えた。


「よし、とりあえずこれで行ってみましょう」


【ミシェル・ラウンデル ステータス一覧】

レベル:4【白ゲージ(経験値)】

振り分けポイント:0

状態:普通

体力:1500(1100+400)/1500(1100+400)【緑ゲージ】

魔力:2000/2000【青ゲージ】

スタミナ:1500/1500【黄色ゲージ】

満腹度:70/100%【橙ゲージ】


生命力:G(15=11+4)【体力量】

精神力:G(20)【魔力量】

持久力:G(15)【スタミナ】

筋力:G(15=11+4)【物理攻撃力】

健康力:G(10)【物理防御力+状態異常耐性】

技量:G(10)【武術全般の成長力率上昇、様々な要素にプラス補正】

敏捷:G(20)【身軽さ、攻撃速度】

知恵:G(11=10+1)【魔法攻撃力】

知識:G(10)【魔法防御力】

運:G(10=4+6)【幸運に巡りやすくなる】

根性:F(30)【経験値増加、自然回復力上昇。致命的な一撃を受けた際、まれに神の祝福が発動】


「ゾンビ達を一蹴できるぐらいの筋力を得ることを第一優先。第二にアイテムボックス解禁が目標よ。さぁ、やってやるわ」


振り分けを終えた私は白い光の扉の前に立ち、息を整えてゆっくりと足を踏み入れた。


次の瞬間、景色が一変する。


地面には骨が転がり、あちらこちらに墓石が立つおどろおどろしい場所に、私は立っていた。


そして間もなく、地面から次々と手が這い出てくる。


「くそゾンビ共。さっきはよくもやってくれたわね。今度はそう易々とはやられないんだから……って、ゾンビ達の頭に何か出てるわね」


這い出てきたゾンビ達の頭上には『ゾンビ』という黄色の文字と、その下に赤いゲージが浮かんでいた。もしや、これが慧眼の祝福の効果なのかしら。


「まぁ、いいわ。殴ってみればわかるでしょ」


私は補助魔法で身体能力を底上げし、試しにゾンビの頭を殴ってみた。


赤いゲージが一気に消え、ゾンビはその場で倒れて消滅する。


「なるほど。黄色い文字が敵名で、赤いゲージが体力ね。わかりやすくていいじゃない」


慧眼の祝福の効果を実感している間にも、ゾンビ達が呻き声を上げながら次々と迫ってくる。


私は鼻を鳴らし、杖を握る手に力を込めた。


「レベル上げにちょうどいいわ。光栄に思いなさい、貴方達。経験値となって私の糧になれることを。目指すは、ゾンビ千体討伐よ」


私は背後に注意しつつ、ゾンビ達を次々に殴り倒していった。






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