猫がいっぱい
昼下がりの出来事です。
とある公園で、弁当屋で購入したほかほか弁当を食べようと思いました。
そこは戦国時代の城跡で、現在は公園として開放されているスポットです。
水場もあり、それなりにいい感じの公園でした。
当時の私は、昼は必ず食堂で済ませていましたが、その日に限って弁当を購入し、食べる場所を探していました。
なんとなく、ゴミの処理が面倒だったので、普段から外食で済ませていました。
だから弁当を食べる場所も決めておらず、うろうろとしていたら、この城跡の公園に辿り着きました。
公園に入ると、少し違和感を感じました。
公園なのに、鳥が一羽も居なかった。
水場もあるにも関わらず、鳩も雀も、カラスすらも居なかった。
しかし、別段気にすることもなく、むしろ静かでいいとすら感じていました。
そんなどこか暢気に構える私は、適当なベンチのど真ん中に腰掛け、弁当を広げることにしました。
すると・・・・。
いつの間にか、目の前に猫が三匹居ました。
「え?」
戸惑いながらも冷静に猫を観察するも、首輪が無いので野良猫のようでした。
しかし、三匹が仲良く並んでこっちを見ている様は、ちょっとしたホラーかもしれませんが、捨て猫が社会問題となっていた当時なので、特段恐ろしい風景ではありませんでした。
その時までは。
「やれやれ」
野良猫にエサをあげるような愚は冒さないつもりなので、猫は無視することにしました。
実際、猫はエサを催促する訳もなく、ただこっちを見ているだけでしたので。
まあ、それはそれで、怖いかもしれませんけど。
すると、足元に気配というか、何かが触れているのでそこを見ると、猫が私の足をすりすりしているではないか!
ええええええええ!!!!!!
「え?」
私の隣に何かの気配を感じ、視線をそこに移すと、そこには何と猫が居ました。
「いつの間に」
ここまで接近されると、ちょっと困ったと思うものの、ここまで人懐っこいのも困りものだと思いました。
「さて、どうしたものか」
1.弁当をしまって撤収。
2.無視して弁当を食べる。
3.猫にエサをあげる。
どれもなあ。
そんなことを考えていたら、猫が驚愕の行動に出ました。
ベンチに乗った猫が、私の脇の下に強引に頭を突っ込んできたのです。
猫は狭い所が好きとは聞くけど、何でだ?
やがて猫は、私の膝の上に乗りました。
困った私は猫に弁当を取られないように上に持ち上げるも、その猫は私の膝の上でしばらくじ~としていましたが、やがて丸くなってしまいました。
すると、今度はベンチに別の猫が居ました。
そしてその猫も、私の膝に乗ろうとしましたが、先客である猫と喧嘩になりました。
私の膝を巡って、喧嘩になったようです。
猫同士のの威嚇は、それなりに怖いものですけど、後から来た猫は先客の猫に追い払われました。
すると、安心したのか再び猫は丸くなりました。
私の膝の上で。
私はというと、茫然としていました。
というか、どうすればいいんだ?
と、ふと足元を見ると、私の足元で猫が数匹丸くなり、さっき追い払われた猫も、私の腰のあたりにぴったりとくっつきながら、やはり丸くなっていました。
猫に囲まれてしまった。
しかも、一匹は私の膝の上に乗り、身動きが出来なくなってしまった。
さて、問題です。
このような状況を、事情を知らない人が見たら、どう思うだろうか?
1.猫の飼い主と飼い猫。
2.野良猫に餌付けをしている、迷惑な奴。
3.通りすがりのただの猫好き。
まあ、普通に考えたら、2だろう。
通報されるかも。
上に持ち上げた弁当が、そろそろ重く感じるようになったその時だった。
猫が一斉に起き出し、急に駆け出したのだ。
「な、なんだ?」
すると、大型犬が私に向かってきた。
「今度は犬か?」
とにかく動かないでいると、犬は私を無視して猫を追い回していた。
幸い、猫は無事逃げのびたようだけど、そこにのっそりと犬の飼い主らしきおじさんが現れた。
「大丈夫かい?」
「はあ、まあ大丈夫です」
どうも犬の事ではなく、野良猫のことらしい。
おじさんは近所の人らしく、ここにたくさんの猫が居ることを話してくれた。
どうもこの公園は、比較的住宅街にありながらも戦国時代の城跡ということから、すっかり猫の住処になったようだ。
そのせいか、新たに野良猫を捨てる人が後を絶たないそうだ。
だからここの野良猫は人懐っこく、場合によっては拾ってくれる人も居るそうだ。
捨てるぐらいなら、最初から猫なんか飼わなければいいのにと、事情を知らない当時のまだ若かった頃の私は、そうつぶやきました。
「まあ、そうなんだけどね」
特に説明もなく、おじさんは犬を連れてその場を去りました。
私はというと、すっかり冷えたほか弁を食べ、さっさとその場を後にしました。
また再び、猫に囲まれるのもちょっと困るので。
しかし、その後猫が現れることはありませんでした。
その公園には、二度と行くことはありませんでした。
あれから、猫たちはどうしているんだろうか?
昔の話しなので、もう生きてはいないだろうけど。
でも、今でもあの出来事は、本当にあったのか不思議に思いました。
そんなひとときでした。
この文章を書こうと思たのは、テレビ番組で猫カフェの紹介があったからです。
猫を飼いたいけど飼えない人が楽しむ場、それが猫カフェなのかなあとふと思い、この不思議な体験を思い出しました。
いつか、猫カフェに行ってみようか。
あの城跡の公園に、言ってみようか。
そんなことを思いながら、この文章を書いた次第です。