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第1話の概要と、ちょっと説明☆


   ★



 宇宙のどこかに一つの星がありました。そこは地球と同じように、豊かな環境が溢れ多くの動植物達が弱肉強食の歴史の中、生きていました。

 そこへある時突然、天より不可思議な光が現れます。その眩さに照らされ続けた動植物達は、徐々に本能を制御できる理性と知性を得ていったのです。

 光はいつしか動物達から『ヒト』と呼ばれるようになり、世界を巡り照らし続けました。

 そして彼らが社会と呼べる程の文化を築き上げて、そこからしばらくの年月が経ち・・・。

 突然、彼らは団結しヒトへの反乱を起こしたのです。その理由は世界中の動物達が同調する程の、とても深刻なものでした。

 人にされて歴史が浅かったからこそ、彼らはそう判断できたのかもしれません。

 ヒトは狙われ続け、なされるがままの攻防を繰り返します。結果、動物達は倒すこと叶わずとも、代わりに五つの欠片へ分断することに成功しました。

 分かたれた欠片は世界に点在される大きな国に封印され、そして、それがおとぎ話にされてしまう程の時が経ったある日の事、それは起こりました。

 それは、誰もが意識せず、しかしいつか必ず起こりえた事態なのです。

 とある田舎町。とはいえ、ほんのり街に発展しつつあるのどかな場所。ガーデニングをするキリン、ペンキ屋のシマウマ、郵便配達のうさぎ等、多種多様な草食動物たちが暮らすそこへ、一人のライオンの少年がやってきます。

 何かに追われているのか、まるで身を隠すような動きを見せる彼の衣服は、長旅だったのかみすぼらしさを感じはするものの、外を歩くには場違いな絢爛豪華なものでした。

 彼の名は『イオン』。猫の国の王子様で、はるか昔に光の欠片を受け取った国の一つです。それが突然謎の強襲に合い、その絶大なる力に押され国は崩壊。イオンは狙いとされる光の欠片を持って逃げていたのでした。

 ここはそんな王国から途方もなく離れた場所にある村。少年の足ではさぞかし辛いと表現するには足りぬほどの苦難がつき纏っていたでしょう。

 のどか過ぎる、何かが起こる気配など微塵とも感じさせないこの場所であまりにも場違いな少年の様相に注目は集まってしまいます。普段の素振りはちょっぴり偉そうで、それでも分別を持って礼儀正しさも見せられる彼は優しい住民たちに声をかけられ、手厚くもてなされました。

 コミュニケーションに慣れていない故、イオンは戸惑いを隠せません。しかしこの対応を無下にできないのも本心。

「お心遣い、大変感謝します。が、これ以上皆様に関わっては・・・」

 そう、そんな温かい心にゆだねられている暇はありません。欠片を持っている以上、このような辺境の村まで足を向けてもきっと追っては来ている筈なのです。

 巻き込むわけにはいかないのに・・・。

 そして、予想通りイオンはコウモリの男に発見されてしまいます。

「いいかげん、それを渡せ!なんだ、民衆を守る立場の癖に、俺達の事は理解してくれないのか!」

 そんな風に投げかけるコウモリは、他の動物達とは何か異なる雰囲気を漂わせていました。

 光が与えた動植物達への恩恵。それは本来、彼らの外見さえも変えてしまっています。

 要するに、二足歩行になった生き物たちです。しかし追ってきたコウモリの男はそうではなく、普段のコウモリよりも大き目というだけで外観に変化は感じられません。

 言葉を解し発することが出来る部分は、与えられてはいるようですが・・・。

 どうやら彼の怒りには先祖代々、過去からのしがらみが関わっているようです。

 イオンは護身用に剣を携えてはいますが、空から襲うコウモリに成す術なく逃げることしかできません。村の人達も応戦してはくれますが、業を煮やしたコウモリは、あろうことか巨大な街灯を呼びだします。

 禍々しいレリーフに包まれた、宝石のようなデザイン。その場の全員が驚きを隠せない中、コウモリがその中へ入り込みます。

 逆さまの搭乗席に吊り下がると、頭の下にあるレバーを自分の方へ引っ張って・・・街灯は彼と同じようなコウモリへと姿を変え、街を混乱に陥れてしまいます。

 と、イオンはついに、光の欠片を奪われそうになってしまうのですが・・・、そこに割って入り欠片を取り返したのはなんと、うさぎの配達員『ララブ』でした。

「はい、受け取りました~っ☆」

「犬!?」

「犬じゃないよ!」

 深々と帽子をかぶり、茶色の体毛と垂れた耳のおかげで知らない人からは犬と間違われまくりのララブ。その否定の台詞は、いつの間にか口癖になってしまった程なのです。

 ラブレターがあると何よりも優先して届けてしまう為、怒られることもしばしばですが、町中を駆け回り誰よりも早く配達してくれる彼女。そんな元気で村のみんなから慕われている彼女には一つ、秘密が・・・。

 欠片を取り返す際、人となった生き物達には不可能なほどの跳躍を見せたのです。

 それに対してコウモリの男は、納得の行かなそうな疑問を飛ばしました。

「ていうか今の!お前、センゾガエリか!?」

「あ、しーっ!秘密なんだからね!」

「声でっか!」

 センゾガエリ。それは生まれてくる子供達の中からかなり稀な確率で発生する、体の一部分が元来の動物としての姿になっている存在。

 真っ赤な目を前髪で隠すララブの両足は、元々のうさぎの足に近い姿だったのです。

 どうやらコウモリは、そんなララブの態度が信じられないといった様子。

「どうして・・・どうしてお前が味方してんだ!」

「味方って何?」

 無論、コウモリが何を言っているのかララブには解かりません。

 しかし、ここでもっと信じられない、凄いことが起こります。

 実はイオンが国から持ち出した欠片は、まるで王冠のような形をしていました。というか見た目は何の装飾もされていない、おもちゃの様な王冠です。

 ちなみにカモフラージュの為イオンは王冠を逆さまにしてポシェットへと擬態させていましたが、当人も狙われている以上、それは意味を成しませんでした。

 コウモリの攻撃から逃げるララブ。被害が広がらないよう、懸命に街の外まで走り抜けますが・・・彼女にとって大き目の王冠はとても持ち運びにくく、面倒だとばかりに頭にがぶってしまいます。すると!

「おい、なにやってんだ外せ!」

「これはなんともおしゃんてぃー☆・・・おおっ?」

 後から追いついたイオンの言葉もギリギリ遅く、サイズの合っていなかったブカブカの王冠はララブのサイズに合わせるかのように縮み、その外観も神々しい装飾に変化を遂げます。そして・・・突然現れる王笏、何か凄いことでもできるのかとララブは振り回してみるのですが効果なし・・・。

 ですが、はずみか動きがそうさせたのか!

 タンッ!

 地面へ突くと、巨大な城がララブの下から浮き上がり出現したのです。

 バルコニーのような場所で呆けるララブですが、後方の大きな扉が開くとその中へ吸い込まれてしまいます。その内部は信じられない程の広さをもつ異空間でした。

「うひょおおおおおおなんじゃこりゃああああああああああああああああああああああ」

 落ち続けるララブはその内不思議な直立する棒を通り過ぎて円形の土台にゆっくりと降り立ちます。目の前にはドレッサーのような台と、自身のすぐ後ろには玉座。

 摩訶不思議な空間の中、全体を響かせるようにララブへ投げかける声がありました。

「何故わらわの中にうさぎなぞが迷い込んでおるのだ?」

 すこし軽蔑するような女性の声ですが、それにララブが返答する暇もなく、巨大コウモリが好き放題に攻撃を仕掛けてきます。

「無礼な、わらわの可憐な姿を汚すのか」

「ねぇねぇ、あれなんとかしてよー!」

「おだまりなさい、ああ、なんという品性の感じられぬ言葉遣い・・・!何も語らず立ち去るがよい!」

 尚も攻撃が続くがものともしない模様、しかしそれも時間と彼女の我慢の限界次第だろう。ともかく、ララブは思いつく限りの丁寧な言葉を使ってお願いしてみる。

 その努力の甲斐あってか、彼女もしぶしぶ応答をしてくれました。

「わらわの名はトラブチルナ。さあ、笏杖を収め、わらわの御身を披露するがよい!」

 どうやらあの直立した棒は笏の鞘であり、あそこに差し入れることで何かが起こるようである。普通の動物ならできなかった、しかしララブなら。

 大きく跳ね上がると王笏を差し込んでそのままレバーの様に床へ倒す。その瞬間、外では奇怪な現象が起こり始めた。

 城の土台が人の両足へ可変し、立ち上がったのである。これにはその場にいた全員が驚き眺め見るだけの状態になってしまう。

 ララブはトラブチルナに言われた通り、倒した鞘を一気に前方へ押すと、ドレッサーに向けて言葉を放つ。

「心開け、トラブチルナ!」

 声と同時にドレッサーが開くと眩い光がララブへ差し込みます。体毛が美しい純白へ染まり、配達員から王女のような衣服を纏った姿へ変化しました。トラブチルの本体も、城の上部が女性の上半身へと開放しその身をさらけ出しました。

 女王そのもの、長い髪をなびかせ、王族の衣服と鎧を兼ね備えたような人型のロボット。

「へへーんだ。こっから大逆転だよっ☆可憐な舞いでぴょんぴょーんって立ち回ってムキーーーッて言わせてやるんだから覚悟してよねっ!」

「・・・、キィ」

「何その冷静な対処!?すっごいムカつくムキーーーっ!!」

「お前が言うのかよ・・・」

 緊迫感のない掛け合いに呆れる言葉を放つイオンを前にして、『トラブチルナ』の姿に戸惑いながらも再度攻撃をしかけるコウモリ。

ララブは指示を出して応戦してもらおうと努めるが、いかんせん言葉遣いにこだわりを持っているのかなかなか聞いてもらえない。

「上品さを求められぬか」

 そんな場合じゃないだろうに・・・。

「お願いチルナぁ、たくさん覚えるからぁ」

「呼び名が反省しておらぬ!」

 しかしそこは女性、ララブの懸命な願いを無視できず、今回はと言葉遣いをレクチャーしながら立ち回る。

 ドレッサーの前へと移動した玉座に座りながら、鞘に納まった笏の先端、大き目の宝石手をあてがいトラブチルナと共闘するララブ。

 明るい光の中だと力を発揮できないのか、巨大コウモリの攻撃は強くはなさそうだ。しかし空中、そしてスピードを利用した動きはさすがに手間取ってしまったが・・・。

 隙を突いたララブはトラブチルナの指示に従うと、笏を鞘から抜く。抜かれた笏は剣へと姿を変えて見事、コウモリを撃退することに成功した。

 一難が去ったことで街は平穏を取り戻したが、トラブチルナはララブの態度に小言を捲し立てながら消えていく。

「なんで、頑張ったのにー、チルナのケチ!」

 そんな風に言うからです。

 ここまでの損壊を負わせても、町の住民は無事に戻ってきたイオンとララブを心配してくれていました。感謝の念に堪えないイオンは、自身が何故国を抜け出し、今の現象が何であったのかを、昔父が教えてくれたことだというのを交えて説明しました。

 イオン曰く、自分は王の誘導で避難する民とは別行動で欠片を手にし脱出したとのこと。この件に関しては王も王妃も反対はしたがお互い認知はしている。その後どうなったか、襲った者たちが何者なのかは全くもって謎。しかし先程のような力を集めて各地を襲い続けているなら、欠片を持つ他の国にも危険が及ぶのは間違いない。

 そして手元にあるこの王冠は、欠片の中でも特に重要な力を持っており、それこそがトラブチルナの存在らしいとのこと。

 で、そこに問題が。まさかと思い、試しにイオンが王冠を被ってみたのですが、何も起こりません。ララブが再び被ると、当然のように王笏が現れました。

「・・・、てへ☆」

「・・・!」

 どうやら王冠はララブ以外に変化はもたらさない模様。街の人達と沢山話し合いを交えつつ、イオンはララブを同行する決意をします。

 不本意ながら!

 ララブもたくさんの言葉に見送られ、二人はあくる朝、町を出ました。

「沢山お手紙書くからねーーー☆」

 トラブチルナを得たことで、イオンは搭乗者となってしまったララブを連れ世界に点在する国を廻る。というか、足元から話しかけまくる小さなうさぎが気になって気になって仕方がない。

 不本意ながら!

「お前うるさっ!黙らないと甘噛みするぞ!」

「え、マジ!?してしてー☆」

 こんなノリでこの先平気なのか・・・。しかもたった二人で。


   ★


 一つの星の冒険物語。人に近しい存在になったとはいえ、彼らは多種様々な生き物。そんな中でコミニュケーションを取る一つの方法が、言葉。

 ララブはトラブチルナを通して様々な言葉の重さと優しさを知っていきます。イオンもまた、自分の知り得ぬ多くの動物たちの触れ合いを間近で見ながら、世界の広大さと自らがどのようにして人の為となる存在になるべきかを意識していきます。

 旅の中、イオンを追って旅に参加する近衛の女の子『アド』不思議な建築物に暮らしながら様々な物を作り続けて、しかし村八分にされてしまっている象の初老『ゴンフォ』。人から与えられた光を完全に浴びぬまま、本能と意識の両方の作用に苦しむ者達の子孫である一人、コウモリの『アブラ』。彼らの冒険の先に出会う、かけらを集める首謀者とその理由は何か。それは大変奥深く、人間には縁遠い問題かもしれません。

 イオンの幼馴染でもあるアドは、彼に恋心を抱いています。ララブは目ざとくそれに気づき、旅が終わるその時までに、絶対ラブラブにさせてやる!と息巻く始末。

 優しい世界をめぐり、しかし現実を叩きつけられることもあり、『ヒト』がこの世界の命にもたらしたものが一体なんであるのか、老若男女、特に未来を担う子供達に向けたハートフルな冒険ロボットストーリー・・・。


それが『皇王伝 トラブチルナ』です。


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