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おはようございます、エリです。




門番の朝は早いです。

陽が昇るとともに起床です。

できれば太陽が真上に来るまでは寝ていたいところです。

昨日は早めに床に就いたので、身体の方はバッチリですがこれから仕事に行くっていう気分が、ね。




ちなみに、ここは女子寮です。

寮というよりタコ部屋ですね、まだ二段ベッドが大量に置かれてる分男子寮よりもマシですが…。

プライベートなんて無い様なもんですね、最低限人が生活するに困らないものだけ設置されています。




なんて考えているうちに周りも続々と起き始めて、着替えに身支度が始まります。

私もあまりゆっくりはしていられません。

軍ほどではないですが、ここの規律もなかなかのものです。

寝起きの髪をさっと()かして寝ぐせはお水でちょちょいのちょいと、他の身形(みなり)も最低限整えて鏡でチェック。

大丈夫そうですね、食堂に向かうとしましょう。




…………………………




食堂には、既に多くの従業員が集まっています。

配膳もいつも通りきっちりと終わっています。

早速、作り置きの冷え固まったパンに温かいスープを吸わせたいのですが、食事の前には朝礼です。

お預けを食らっているみたいで、非常にもどかしいです。




朝礼は、リーダーから今日一日の流れを説明されるところから始まります。

普段であれば、食後に門番と修練を交代で進めて、午後は午前に加えてマーシャルロード敷地内の清掃などが入ります。




もちろん、例外はあります。

門番の仕事はその名の通り門を守るのですが、ここから旅立とうと訪れた新人の力試し(強制)も請け負っています。

なので、一日の業務内容に修練があるのですが、この新人が来た時は例外として予定は未定、全部すっ飛ばして対応します。

他の例外はそうですね……、賊や害獣が現れた時とかですね。




「集まっているな。朝礼を開始する」




リーダーの声がかかると、皆椅子から立ち上がりビシっと直立します。

集団で生活する以上、一糸乱れぬ連携が何より大切です。

先程までは騒がしかったのですが、直立と静寂は同時に実行されました。




「皆、今日も早くからご苦労。今日も一日、門番としての矜持を……」




食事を前にして小難しい話や長い話は、正直気が乗りません。

でも、今のリーダーは前任の時よりはマシだそうです。

前任は話し出すと気持ちよくなって、食事の時間を全部使って挙句の果てには「一食抜いたくらいで不満を溢すな!」という滅茶苦茶が日常茶飯事だったようです。

怖いですね。

仕事は出来なくとも優しい上司がいいですね、お互い助け合って責任は上司だけ…、えぇ、これは甘えです。




「次に、今日の予定だが…」




おや、今日はいつもと口上が違います。

それに気付いた人たちも、少しザワっとしますが、そこはやはり鍛えられた精鋭。

何事もなかったかのように瞬間冷却、だんまりです。




「昨晩、偵察隊より『身元不明の男が一人こちらへ向かっている』と連絡が入った。

 男の特徴は大柄で軽装、食料採取用の小型携帯ナイフの所持を確認済み。

 ここへの到着は早くとも陽が昇り切る前との予測。

 久々の新人か、ただのならず者かは分らんが、本日はこれに対応する。

 皆、準備を怠らぬよう気を引き締めろ、以上だ!

 では、今日も神の恵みに感謝して朝食を頂くように!」




やった、やりました!

到着が陽が昇り切る午前中であれば、午後の掃除が無しになります。

これはおサボりチャンスですよ!

朝から運がいいですね、これは。

食前の祈りが終わったので、皆各々朝食に手を付け始めています。

私もルンルン気分でパンを千切ってスープに浸しました。




……でも、いつの間にリーダーは私の横に来たのでしょう。

肩を叩かれるまで、全く気が付きませんでした。




「あ、リーダー。おはようございます」

「おはよう、エリ。今日、もしも男が新人であれば、今日の試しはお前だ」

「ぁ゛ぇ…」




しっかり頼むぞ、と一言置いてリーダーは去って行きました。

驚愕のあまり、エッジの効いた声で応答してしまいました。




えっ、私ですか、その男の相手。

武器はあり? 徒手空拳?

なんにもわかんない!




咄嗟(とっさ)の事って、人間ですからやっぱりパニック起こりますよね。

私は浸し過ぎてジュクジュクになったパンを、程良い温度に冷めたスープで胃に流し込んで急いでリーダーの後を追いました。

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