01
私はエリ。
ちょっと前までは地元でイケイケな生活を送ってたんですけど、今は訳あってマーシャルロードという職場で門番をやってます。
ここマーシャルロードは、武の道を究めようといきり立つほとんどの人たちが旅立ちの第一歩として訪れます。
なんでも、昔の偉~い武術の達人ガン・エンがここから旅立って、技を磨き、数々の難敵を打ち破り、伝説を作って、最強の名を欲しいままにしたってことで、そっち系の人たちから大変有難がられてるらしいです。
なにもこんな森の中から旅立たなくてもいいのに。
ガン・エンを讃える立派な石碑も、新人を送り出すでっかい門も、今は私たち門番が毎日丁寧に掃除してるんです。
お陰で今日も腕はパンパンで、脚は蚊に刺されまくってます。
仕事とはいえ、年頃の乙女の麗しいボディーが日々ボロボロになっていくのは、正直あまり考えたくありません。
お金のためです。幸せよりも、男よりも、まずはお金です。仕方ありません。
「ん~~、いっちょあがりっ!」
石碑の周りに逞しく生えている雑草を一掃してやりました。
疲労はありますが、ビフォーアフターを直に感じると、やっぱり達成感が段違いです。
後は、この何十とある草の塊をゴミ捨て場に全部持ってくだけです。
あ~ぁ、こんなに綺麗になったのになー!
もう終わりだと思ったんだけどなー!
やり切った顔で遠くを眺めていましたが、リーダーに一瞥を食らいました。
現実逃避も空しく、私は大量の草を押し車に積み込み始めるのでした。
…………………………
「ち、ちかれた~」
最後の一塊をゴミ捨て場に投げ捨てると、私はその場に座り込んでしまいました。
砂場なんで、お尻がちょっと痛いですね。
陽はすでに大分傾いています。
仕方ありません、今までサボってたツケです。
リーダーにこってり絞られて、今日は徹底的にやらないとお夕飯を抜かれかねなかったのです。
お金も大事ですけど、やっぱり空腹は嫌です。
「おい、エリ。終わったのか?」
「は、はいリーダー! 石碑周りの雑草処理、完了しました!」
びっくりしました、また怒られるかと思って心臓がひしゃげるところでした。
「そうか、では無事今晩は飯にはありつけるぞ、ご苦労さん」
「やったー! よかったぁ!」
「しかし次サボったら容赦はせんぞ、晩飯どころか昼飯までもだ」
「いえいえいえいえいえ! 絶対サボりませんから安心してください!」
「本当か?」
リーダーは笑い交じりに言いますが、目は決して笑っていません。
どうやら次のサボりは命がけになりそうですね。
「今日はしっかり休んで、明日は修練の後、門の掃除だ」
「えぇ…また掃除ですかぁ?」
「朝飯もいっとくか…」
「私、昔から掃除大好きなんですよね、何ていうか庭の乱れは心の乱れというか、
清掃の行き届く様を見るにつれ例えようのない喜び、いえ幸福感がですね…」
「…期待してるぞ」
もう出ないと思ってたんですが、すごい勢いで吹き出しましたね、汗。
掃除に冷や汗に、今日はいっぱい汚れたので、早く湯浴みを終わらせてすぐ寝ましょう。
大抵のしんどいことは寝たら解決です。
「それではリーダー、またお夕飯時に」
軽く会釈しながら言うとリーダーも軽く手を挙げて返してくれます。
去って行くリーダーの背中を見送りながら、フっと溜息が漏れました。
早い事私も女子寮に戻りましょう。
そそくさと退散して余計な事は言わない、言われないようにしましょう。