三角形の均衡(ゆいこのトライアングルレッスン:D)
『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ』のコーナー『ゆいこのトライアングルレッスン:D』(デートがテーマ)に応募した作品です。
ゆいこ・たくみ・ひろしの原案者は巽悠衣子さんです。
「俺たちが出会って、10年か」
ふと、ひろしが発した言葉に、ゆいこが嬉しそうに飛びついた。
「お祝いしよっ! そーだ! 3人でまだやったことないことしようよ!」
「たとえば?」
俺の問いにゆいこは元気よく答える。
「デート!!」
◇
待ち合わせ場所は、駅前ふくろうの銅像横。
「やっぱ、先に来てると思った」
読んでいた小説から顔を上げるひろしの黒髪がさらりと揺れる。
「少しでもゆいこと一緒にいたいからな」
そういうことは本人に言えよ。いや、やっぱ言っちゃダメ。
「意外だな。たくみは遅れてくるかと思った」
「お前と同じ理由だよ」
「クマできてるぞ。楽しみで眠れなかった、とか?」
「ゔっ」
図星をつかれて、思わず喉が鳴る。
「ああそうだよ」
「それも意外だ。女子とのデートは得意だろ?」
「はあ? 俺はデートするの今日が初めてだよ。女友達と遊ぶのと好きな子とデートするのは別だろ」
服変じゃないかなとか、喜んでもらえるかなとか、ただ友達と遊ぶときとは違う緊張と高揚。
「お待たせ〜っ! 待った?」
「いや、全然。今来たところ」
俺が言いたかったセリフ取んなっ!
まあ、しょうがない。今日は3人でデートなんだから。
気持ち切り替えてくぞっ! よし。
「ゆいこカバン持つよ、貸して」
「へ? たくみの方が荷物重そうだよ?」
「ってのは建前で、本当はゆいこと手繋ぎたいの。ダメ?」
覗き込むように目線を合わせると、ゆいこのまんまるくなった瞳がぎゅってつむった。
そんな無防備に男の前で目を閉じちゃだめだよ。
赤くなりながら右手を差し出してくれるゆいこ。
「緊張してる? 俺に全部預けて。楽しもうね」
囁くとゆいこの耳は最高潮に赤くなった。
「安心しろ。俺がいる」
ひろしがゆいこの頭をぽんと撫でると、ゆいこはとろんと甘えたような瞳でひろしを見た。
「左手は俺と繋ごう。今日は『デート』なんだろ?」
築き上げた三角形の均衡を壊すなら、このライバルの手強さは親友の俺が一番知ってる。
じりついた夏はもう終わったと思ってたんだけど。
まだ、こんなにもアツい。
お読みいただき誠にありがとうございました!
今回待ち合わせまでしか書けなかったけれど、どこかにデート行かせてあげたかった……!
だけど3人のデートしてる姿を想像するのとっても楽しかったです!!
通算10回目のゆいこのトライアングルレッスンおめでとうございます!!
次回の開催も楽しみにしています!!
(2021年2月26日放送の『下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ』にて、ご自由にとのことでしたので投稿しました。
もしも投稿の仕方に問題がありましたら、すぐにお知らせください。よろしくお願いします。)