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Paradise⑦

「いや、ごめんね。待たせたね。休日なのにごめんね」

神父様が遅れて入って来てはそう言いつつ頭を下げては祭壇さいだんまで歩いていく。


そう、日曜は唯一の休日だった。

神様の休息日というのも名目上はあったけれども。

そうなると神様も休息日だけれども、今日みたいな日は働くことにもなるわけで──そんな風に考えると不思議な感覚にもなった。


「では、始めようと思う。やり方は大丈夫かな?」

神父様が問い掛けつつ、この場に集まった僕を含む6歳の子供達に優しく微笑む。


話しはシスターからも受けている。

一人ずつ呼ばれては祭壇に赴いては膝をついてお祈りをする。

そしたら、神から加護とステータスの機能を授けて貰えるというやつだ。


加護は本当に千差万別らしい。

上の子達の話を聞いても、冒険に役立つものや、魔法とか生活に役だつもの。

商売や読み書きや計算、記憶力……はたまた超能力に近いものまで。

だから、皆加護は貰えるまでは緊張するという。


僕に至ってはステータスの方が気になっていた。

これは身分証明書にもなるらしい。

基本的には自分自身でしか見られないらしいけれども、商業ギルドや鍛冶ギルド、冒険者ギルドや後は街の治安を維持する軍関連の方はこのステータスを参照した身分証明書を作成するらしい。


要は僕の夢……願いの為には必要なものであり。

何よりも世界を生きていく上では必須の物だと言えた。


そう、考えている中で順番に皆が呼ばれていっては加護を授けられていっているらしい。


そんな様子を少しだけ遠巻きに見ている感覚でいたけれども。


「トワ──おいで」

神父様に呼ばれた事で一気に夢見心地な状態から現実に引き戻される。


『は、はい……』

少しだけ声が緊張で震えちゃっただろうか?


でも、ちゃんと足は動いてくれていた。


僕はゆっくりと椅子から立ち上がっては祭壇まで歩いていき膝をついてお祈りの姿勢をとる。


「トワに──加護とステータスを……」

神父様の声がどこか遠くに感じる。

そして、僕を包み込むように仄かな明かりが射し込んで来たように思えたらポワッと身体を包み込むように発光が起こる。


「うん、良いだろう。トワは、どんな加護を貰ったのかな?」


【─✕✕✕ルの書─】


ステータスには加護欄にはそう記載されていた。

加護欄……というからに、加護は機会があればポッと習得したり授けられたりすることもあるらしい。

だから、望んだものが得られなかったとしても悲観することは無いというのが通説だ。

あくまでも適性に応じたもの? という、説も浮上しているらしかった。


「んー? なんだか、珍しい加護だね。トワ? 少しだけ加護を見せて貰えるかな?」


神父様の顔が少しだけ思案顔になりながら、自分を見てくるので言われた通りに──加護を意識しては発現させる。


──ポンッと手もとに本が現れる。

子供の手では大きめの本だった。


「本だね……? 中身は……」


神父様は中身を見ようと本を開くがパラパラ──パラパラ──……。

すべてまくってみたのだが、空白のページらしかった。


「空白だね? オリジナルの加護なのかもしれないね。けれども、有害指定とは思えないから大丈夫だと思うよ。トワ? おめでとう」


ポンッと最後に本をじては僕にそう言って神父様が本を手渡してくる。

オリジナルの加護とは、その人特有のユニーク加護の扱いだ。

多分、世界に1人しか持たないかも知れない加護をいう。

一応、教会内にはある程度は加護の一覧が集計されているらしく。

教会に応じては加護を申告してはそれがどんどんと加わっているらしい。

ただ、報告をしない教会もある。

うちみたいに小規模な教会はしないというよりも、そこまで労力や余裕が無いとも言えた。


そして、有害指定とは世界に危険を伴わせる加護の事だ。

これも幾つかはピックアップされており、有害指定の加護はある程度教会や世界の人に周知されている。

有害だからといって、処分とか物騒な話ではないらしく。

必用に応じては教会でちゃんと指導をしては危なくないようにするのが世間一般的な認識だった。

有害といえど、扱い方を間違えた場合であって、逆に正しく扱えば大きなアドバンテージにもなり得るというのが世界の認識だった。


ただ、今回は神父様が見た感じは空白のページであり、危険性も薄いと判断されたようだった。

そして、僕は神父様の祝福の言葉を聞きながら震える手を隠すように本を抱き締めていた。


だって、周りの人は読めてなかった……いや、空白に見えていたであろう本だけれども、僕には神父様がまくっている最中でも、挿し絵や文章がしっかりと見えていたのだから。


多分、これは僕だけにしか読めない本なのだと知ってしまったから。


だから、その日は洗礼式が終わっては休日なので、皆思い思いに過ごすなかで僕はゆっくりと自室に戻ってはポンッと本を取り出しては中身を見ようと本を開くのは当たり前の行動だったと思う。

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