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Paradise⑫

「それでは皆──無事に成人したことをここに祝して……」


乾杯……!


神父様がさかずきを上げる。


今日は特別な日だ。

皆も成人を迎えてお酒をたしなめるようになった。

だから、この日だけ特別に一杯だけお酒を飲む。


神父様は嬉しそうに頬を緩ませては皆を見ている。

神父様もそろそろ本格的に老齢だけれども、やっぱり元気だ。

後任の方も神父様に教わって、お世話になった子が来てくれていて、実はもう安泰あんたいだったりする。


「トワ……お主は色々とさとい子だった。だけれども、世界は本当に広く、優しさと同じくらいに牙もある。だから、気を付けなさい」

『はい』

神父様の言葉に素直に頷く。


「本当に良い子だ……」

そうして、神父様は僕の頭を嬉しそうに撫でる。


神父様も腰はもうかがみ気味でいつの間にか僕の方が身長というか高さは越えてしまった。


『神父様……ここまで僕を育ててくれて、本当にありがとうございます』

少しだけ、涙を見せてしまった。

でも、神父様の手は少しだけ小さくなってしまったけれども包み込んだ手は暖かかった。


「トワよ……君に幸多からんことを」

そして、神父様はニッコリと微笑んで祝福をしてくれる。


『ありがとうございます』

そうして、僕は成人を迎えた。


後は、旅の支度は済んでいる。

僕は明日、お世話になったこの教会を出ては旅に出る。


当面の目標はニホンという、この国を下りながらトウキョウを目指してみようと思う。


その日の夜は遂に本の最終ページの記載が終わってしまった。


本からの最期の言葉は


【また会いましょう。】だった。


また? と脳裏に疑問は浮かんだけれども、もう本からは記載出来るページも無いために返事が無かった。


僕は少しだけの寂しさも感じつつも、この長くお世話にもなった自室で目を閉じては夢の中にと落ちていくのだった。

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