迎えに来た家族
こちらは百物語八十一話の作品になります。
山ン本怪談百物語↓
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私が体験した出来事です。
その日、仕事を終えた私はいつもより少し早く家へ帰宅しました。
車で家に帰ってくると、向かえの家の前に救急車が止まっていることに気がつきました。
どういうことかと思っていると、うちの家から妻や子どもたちが出てきたので、話を聞いてみることにしました。
「向かえの家に住んでるおじさんが家の中で倒れてたんだって!宅配便の人が発見して救急車を呼んだみたいだけど…」
どうやら向かえの家で急病人が出たらしい。
しばらく様子を見ていると、救急隊員によって担架へ乗せられた男性が家から運び出されてきた。
「お父さん頑張って!」
「もう大丈夫だよ!私も一緒だから!」
一緒に出てきた家族らしき人たちも、一緒に救急車へ乗って病院へ向かっていった。
「大変そうだな…」
私たちは小さくなっていく救急車を見届けると、家の中へ戻っていった。
次の日の夜…
「お父さんお帰りなさい。昨日の人、亡くなったみたいよ」
仕事から家に帰ると、妻が私に向かってそう言った。
「やっぱりか。残された家族さんたちも大変だなぁ…」
私がそう言うと、妻が不思議そうな顔でこう言った。
「何ってるのよ、あのおじさん家族はいないのよ?昔事故で亡くなったとかで…」
近所付き合いがない私は知りませんでしたが、あの男性に家族はいなかったそうです。でもそれじゃあ、あの時声をかけていた人たちは…
「そんな人いなかったじゃない!出てきたのは救急隊員の人だけよ?」
子どもたちも男性と救急隊員の姿しか見ておらず、私が見た人たちは謎の存在になってしまいました。
もしかすると、あの人たちは亡くなってしまった男性の家族で、死にかけていた男性を迎えに来ていたのかもしれません。
そう思うと、なんだか少し心が温まるような話ですね。
私も最期は、大勢の家族に看取られて死にたいものです。
「その家族って本当にただ迎えに来ただけなのかな?もしかすると『連れていった』んじゃ…」
ちなみにうちの娘はそう思っているそうです…