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窮地

 一瞬の攻防だった。

 九人の黒ずくめの男たち――「不死身の人造兵士」は、まるで一つの生き物の如く、連携した攻撃を繰り出してきた。

 彼らの、同期(シンクロナイズ)されたという思考が、それを可能にしているのだろう。

 光の(やいば)による斬撃が、フェリクスとグスタフを襲う。

 それらを()(くぐ)った二人の光剣(こうけん)が、敵の身体を捉えた。

 黒ずくめの男たちのうち、一人が肩から斬り下ろされて真っ二つになり、一人は首を()ねられて、地面に転がる。

 二人の黒ずくめの男の肉体は、生命活動が停止すると間もなく、塵となって崩れ、後には衣服のみが残った。

 その様を目にしたフェリクスは、思わず歯を食いしばった。


 ――死に方すら、普通の生物と異なるのは、彼らが造られた生命体だからなのか……そして俺も、死ねば、同じように……?


 一度に二人もの仲間が(ほふ)られたのは予想外だったのか、黒ずくめの男たちは、一旦、フェリクスたちを囲むようにして距離をとった。

 攻撃の機会を(うかが)うように光剣(こうけん)を構える彼らからは、仲間が殺されたことに対する恐怖も、怒りも、そして悲しみも感じられない。

 そこにあるのは、主人(マスター)の命令に従って、目の前の敵を排除するという意思だけだ。

 まかり間違えば、自身も彼らと同じ場所に立っていたのかもしれない――フェリクスは、背筋が凍る思いだった。

 フェリクスとグスタフは、背中合わせの態勢で、再び光剣(こうけん)を構えた。


「僕の勘だが、奴ら、実戦経験がないんじゃあないか?」


 グスタフが囁いた。


 ――だとすれば、生まれつきの性能は同等でも、経験を積んだ分、自分のほうが有利なのかもしれない……


 フェリクスは、小さく頷いた。

 再開された黒ずくめの男たちの攻撃を()なしながら、二人は敵の数を減らしていく。

 しかし、フェリクスは、相手の動きが、戦闘開始直後とは変化しているのに気付いた。


 ――紙一重で(かわ)せていた彼らの斬撃が、時折、かする程度にではあるが身体に触れるようになりつつある……この短い時間で、敵は、俺と同様に相手の動きを学習しているのか。更に、思考が同期しているのであれば、それぞれの情報を共有できる筈……長引かせるのは不味(まず)い――!


 残っている黒ずくめの男は五人――仮に、それぞれが、フェリクスたちと同等の力を持つようになったのであれば、圧倒的不利というものだ。

 フェリクスの思考の間隙(かんげき)を縫うかの如く、敵の(やいば)が襲いかかる。

 数十秒前とは、明らかに太刀筋(たちすじ)が違う――すれ違いざまに相手の胴体を薙ぎ払って両断したフェリクスだが、彼もまた、肩口に一撃を受けていた。

 傷そのものは深くなかったものの、累積すれば、やがては深刻な事態に陥ることになる……我々は、既に追い詰められているのではないか――

 焦りの生まれたフェリクスの視界に、首を()ねられて絶命し、塵と化しつつある敵の一人が映った。

 傍らでは、グスタフが左手で腹部を庇いながら、背中を丸めるようにして立っている。

 その足元の血溜まりは、彼女の傷が、常人であれば、とうに絶命していてもおかしくないものであることを物語っていた。 

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