表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/117

◆剣とドレスと2

 跡継ぎが男子であることに(こだわ)った「父親」は、エリカに「グスタフ」という男の名を与え、男の格好をして、男として生活するように命じた。


 お姫様に憧れていたエリカだったが、「父親」から必要とされなくなるのも嫌だった。


 彼女は、言われるがままに、「グスタフ」と名乗り、男性として生活するようになった。


 果たして、「グスタフ」には戦闘に関して天賦の才があった。


 それに加えて、彼女は人一倍の修練を積んだ。強くなるほどに「父親」や周囲の者が褒めそやし注目してくれるのが嬉しかった。


 身分の高い家柄の生まれに、才能を併せ持った彼女には、(ねた)(そね)みの視線を向ける者も少なくなかった。


 女性だからといって侮られないよう、「グスタフ」は傍若無人かつ超然とした態度で振舞った。


 嫌な人間だと思われていれば、近付いてくる者もなく、まとった鎧が壊れることもない。


 やがて、努力が実を結び、「グスタフ」は、若くして皇帝守護騎士(インペリアルガード)に抜擢された。


 しかし、皇帝守護騎士(インペリアルガード)となった「グスタフ」に、所詮は親の七光りだと言って絡んでくる者もいた。


 「グスタフ」は、そのような者たちを文字通り全て叩きのめしてきた。


 公的な試合でも、私的な決闘でも、彼女が敗北することはなかった。


 いつしか、強さ、そして負けないことが、自分そのものなのだと、「グスタフ」は思うようになった。


 ──それなのに。

 彼女にとって唯一の()(どころ)である「強さ」を、「緑の目の男」は粉々にした。


 あまつさえ、「緑の目の男」は、敵である筈の「グスタフ」に情をかけ、(とど)めも刺さずに去った──敗者として憐れまれるなど、彼女にとっては最大の屈辱だった。


 そして、「智の女神」の命令に背くことへの罪悪感よりも、負けた自分は、もう誰にも必要とされないのではないかという恐怖が上回った。


 ──あの「緑の目の男」を倒せば、「強い」自分を取り戻せるのではないか。


 他者から見れば、目茶苦茶な理屈かもしれないが、「グスタフ」の頭の中は、「緑の目の男」を倒すことで一杯になっていた。


 「グスタフ」は、執念で反帝国組織「リベラティオ」本部まで辿り着いた。


 しかし、「緑の目の男」との再戦は叶ったものの、彼が、もはや別次元の強さを持つであろうことを、「グスタフ」は、その身に刻み付けられて敗北した。


 自分は全てを失ったのだ──絶望し、自ら生命を断つことすらできずに倒れ伏している彼女を、「緑の目の男」は、罵るでもなく、優しく抱きかかえた。


 二度も自分を殺そうとした相手に、何故そのようなことができるのか──男の行動は、「グスタフ」には理解できなかった。


 だが、その温もりに触れているうち、不思議と心が鎮まっていくのを、彼女は感じていた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ