期待
「近いうちに、あなた方には、帝都にある『リベラティオ』本部へお越しいただきたいと思っています」
フェリクスとセレスティア、そしてアーブルの三人を「客間」に呼び出して、カドッシュが言った。
セレスティアの政治宣伝映像を制作している間、古城地下の「隠れ家」の中が、次第に慌ただしくなりつつあったことには、フェリクスも気付いていた。
「何か、大きな動きを起こすということか?」
「察しが良いですね。我々の最終目的は、『智の女神』の機能停止もしくは破壊により、人々を、その支配から解放することですが、いよいよ最終局面への準備を整えつつあります」
フェリクスの問いかけに、カドッシュが、そう言って頷いた。
「私たちが帝都に行って、何かできることがあるのでしょうか?」
セレスティアが、少し不安げな面持ちで尋ねた。
「『智の女神』を排除すれば、しばらくの間、帝国内は混乱するでしょう。そこで、セレスティア殿には、人々の心を鎮める役割を担っていただきたいと考えています」
「私が……ですか?」
カドッシュの言葉を聞いたセレスティアは、驚いたように目を見張った。
「私は、ウェール王に王族同然に育てられたとはいえ、所詮は養女です。私などに、そこまでの影響力があるとは思えませんが……」
「あなたは、ご自分を過小評価しすぎです。先の政治宣伝映像、こちらから発信した時間は僅かなものでしたが、関心を持って保存した人たちから複製したものが拡散され、帝国内でも、その知名度は高まっています」
「保存……拡散……?」
セレスティアは、首を傾げた。これまでに触れたことのない技術を前に、理解が追い付いていない部分があるのだろう。
「情報通信網で流れた映像などは、自分の情報端末に取っておいて、他人に渡すこともできる……ということか」
「ま、そういうことさ。反体制の政治宣伝映像所持なんて、国による取り締まりもあると思うけど、キリがないからな」
フェリクスの言葉に、アーブルが相槌を打った。
「取り締まりか……だが、今は戦争状態で、国内の守りは薄くなっているのではないか」
「フェリクスくんの言う通りです。更に、あなた方のご協力を得たことで、我々の作戦の成功率は上がっていると考えています」
力強く頷くカドッシュを見ながら、彼が何故そこまで自分たちに期待を寄せているのだろうかと、フェリクスは、ふと思った。




