光の剣
「──ずいぶん、賑やかですね」
聞き覚えのある、穏やかな声が響いた。
訓練場に、カドッシュが現れたのだ。昨日、素顔を見せたのは、あくまで例外らしく、今は仮面を着けている。
カドッシュの姿を見た戦闘員たちが、姿勢を正して彼を迎えた。
「こちらに、いらっしゃいましたか。フェリクスくんとアーブルくんに渡したいものがありましたので」
フェリクスたちを見て、カドッシュが言った。
「俺たちに?」
首を傾げるアーブルに、カドッシュは懐から取り出した棒状のものを差し出した。
それは、細部に多少の差異はあるものの、皇帝守護騎士のグスタフが使っていた光剣と同じものだった。
「これ、製造にかかる費用が高いとかで、皇帝守護騎士団みたいな、限られたところにしか配備されないものだろ?」
「私にも、色々と伝手がありますから。もちろん、正規品と同じく、ぶ厚い金属の板でも切断できる威力がありますよ」
カドッシュが、そう言って微笑んだ。
「でも、剣の心得はないんだよな。格闘や射撃は軍の訓練で習ったけど」
「あぁ、拳銃などのほうが良かったでしょうか?」
「いや、射撃は苦手なんだ。俺の場合、近付いて殴ったほうが早いしさ。何かの役に立つかもしれないし、これは、ありがたく貰っておくよ」
アーブルが、光剣を手の中でくるくると回しながら言った。
「こちらは、フェリクスくんの分です。セレスティア殿の護衛に必要でしょう」
「ありがとう……ございます」
フェリクスは、カドッシュから受け取った光剣を、じっくり眺めると、周囲に人のいない場所へ数歩移動した。
──この「剣」、不思議と手に馴染むな。
彼は手元の突起部分を操作し、柄の先端にあたる部分から、光の刃を出現させ、構えた。
「その手慣れた感じからすると、フェリクスさんは、剣の心得もあるんですね」
ホルヘが、感心した様子で言った。
「皇帝守護騎士との戦闘を見て、もしかすると、フェリクスくんは名のある騎士団や、軍の精鋭部隊に所属していた可能性もあると思ったのですが、少なくとも、帝国には、君らしき人物の記録はありませんでしたね」
カドッシュの言葉を聞いたフェリクスは、かつて帝国兵たちの生命を奪った時の記憶が蘇り、少し憂鬱な気分になった。
──戦いに関することになると、身体が自然に動いてしまう……やはり、自分は「そういう世界」の人間だったのだろうか。
だが、この力がなければ、セレスティアを守ることはできない──彼は、そう思い直した。
「それでは、私は用事ができたので、一度帝都に戻ります。ホルヘ、留守の間、ここの守りをお願いしますよ」
「お任せください」
カドッシュの言葉に、ホルヘが力強く頷いた。
「セレスティア殿、今後の予定については、私が帝都から戻った後に、改めて、ご相談させていただきます。それまでは、こちらで、ごゆっくりお過ごしください」
「承知しました。色々と、ありがとうございます」
セレスティアの言葉に頷くと、カドッシュは訓練場から出ていった。




