表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/117

訓練場にて

 「リベラティオ」の隠れ家に着いた翌朝、フェリクスは、食堂でセレスティアやアーブルと共に朝食を()っていた。

 ここでは、組織の構成員たちが交代で炊事をしているらしい。考えてみれば、当然のことだ。

 何か手伝おうか、とフェリクスたちは言ったものの、「頭領の客人に、そのようなことはさせられない」と、丁重に断られたのだった。


「反帝国組織の中にいるってのに、今までで一番落ち着いてメシ食ってるなんて、何だか不思議だな」


 おかわりした野菜のスープと肉団子を美味(うま)そうに頬張りながら、アーブルが呟いた。


「ずっと粗食だったし、食べられるうちに食べて、体力を回復したほうがいいだろう。これから、何があるか分からないからな」


「そうですね……」


 フェリクスの言葉に、セレスティアが頷いた。

 何とはなしに、彼女の手元を見ていたフェリクスは、その所作の美しさに気付いた。

 そういう部分を見れば、やはり、王族の一人として育てられただけのことはあるのだ、と、彼は思った。

 三人が食事を終える頃合いを見計らっていたのか、一人の大柄な男が近付いてきた。


「ちょっと、よろしいですか?」


 その男に、フェリクスは見覚えがあった。

 国境を超える際に、「リベラティオ」から迎えに来た構成員の一人で、護衛を担当していると言っていた記憶がある。


「何か、用でも?」


「戦闘員たちが、フェリクスさんとアーブルさんに是非会いたいと言っていて……少し、訓練場にお付き合いいただければと」


「俺は、構わないが。アーブルは、どうする」


 フェリクスは、アーブルに問いかけた。


「別に、いいけど」


「私も、ご一緒してよろしいでしょうか?」


 アーブルとセレスティアが、同時に言った。


「君を、一人にする訳ないだろう?」


 フェリクスが言うと、セレスティアは安堵した表情を見せた。

 ホルヘと名乗る構成員に案内されて、フェリクスたちは訓練場へ入った。

 場内では、二十人ほどの若い男たちが、基礎的な動作の訓練をしたり、格闘や剣の手合わせ、射撃などを行っている。


「私を含め、ここにいる者は戦闘員です。もっとも、我々の役目は、暴力で目的を達成することではなく、身を守る術を持たない構成員たちを守ることですが」


 そう言うと、ホルヘは訓練中だった他の戦闘員たちに声をかけた。

 フェリクスとアーブルの姿を見た戦闘員たちは、即座に訓練を中止して集まってきた。


「あんたの記録映像見たぜ!すげぇな!」


 戦闘員の一人が、興奮気味にフェリクスの肩を叩いた。


「おいおい、落ち着かないか」


 ホルヘが、戦闘員たちを(たしな)めた。


「記録映像なんて、あったんだ」


 アーブルが、目を丸くした。


「フェリクスさんと皇帝守護騎士(インペリアルガード)の戦闘記録が、サレから送られてきていたので……ご覧になりますか」


 そういえば、偵察用の魔導絡繰(まどうからく)りで、グスタフとの戦闘の様子を見ていたと、サレが言っていたっけ──と、フェリクスは思い出した。

 戦闘員の一人が持ってきた、板状の情報端末を受け取ると、ホルヘは起動の為の呪文(パスワード)を唱えた。

 情報端末の表面に、アーブルを追いかけようとする皇帝守護騎士(インペリアルガード)・グスタフと、それを阻止するフェリクスの姿が浮かび上がる。


「こうして自分の姿を見るというのは、何だか妙な気分だな」


 フェリクスは、首を捻った。


「帝国の技術は、私などの想像を遥かに超えているのですね……あぁ!」


 グスタフに殴り飛ばされるフェリクスの映像を見て、セレスティアが小さく悲鳴をあげる。


「私たちが逃げている間に、こんなことになっていたなんて……」


「あれは、かなり痛かったが、その時だけだったから、大したことはないさ」


 フェリクスの言葉に、戦闘員たちがざわめいた。


「普通の人間なら即死してるし、『戦士型』の異能でも、すぐには動けないと思うぞ」


「『戦士型』というのは、何だ?」


 聞き慣れない言葉を耳にしたフェリクスは、ホルヘに尋ねた。


「『異能』の中でも、頑丈な肉体と高い身体能力を持つ者を、我々は、そう呼んでいます。ここの戦闘員の中にも、私の他に数人いますよ。ちなみに、セレスティア殿のように不可思議な力を持っている者は『特殊型』、また魔法を使う際、一度に扱うことのできる『マナ』の量が極端に多い者を『術者型』と呼びます」


「つまり、俺やアーブルは『戦士型』ということか」


「そうです。『戦士型』は、『異能』の中でも、比較的多いと言われています」


 二人が話している間に、記録映像は、フェリクスとグスタフの攻防の場面へと進んでいる。


「再生速度を落としてくれ。そのままじゃ、何が起きているか分からないぞ」


皇帝守護騎士(インペリアルガード)の戦闘なんて、普通の人間の目じゃ見えないからな」


 誰かが言うと、映像の動きが緩やかになった。


「フェリクス……こんな相手に、手加減して勝つなんて、本当に凄いんだな」


 アーブルの無邪気な賞賛の言葉が、フェリクスの胸に、ちくりと刺さった。


「私でも、皇帝守護騎士(インペリアルガード)と一対一では二秒も持たないでしょうね」


 ホルヘが、何度も頷きながら言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ