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失せもの1(挿し絵有り)

この物語の舞台になっている惑星は、重力や大気の組成、気候条件、太陽にあたる恒星の周囲を公転しているとか月にあたる衛星があるなど、諸々が地球とほぼ同じと考えていただいて問題ありません。

また、人間以外に生息している動植物なども、特に記載がない限り、地球上にいるものと同じだと思ってください。

 モンスとシルワは、片田舎の村に住む、ごくありふれた老夫婦だ。

 日の出と共に起きて畑仕事や裁縫などの作業に勤しみ、日が暮れれば床に着く、そんな生活を数十年続けてきた。

 かつて、夫婦の間には息子が一人いた。しかし、成人する少し前に、息子は(やまい)によって、この世を去った。元から仲の良い夫婦であったが、大切な一人息子を亡くしてからは寂しさを埋めるかの如く、互いに寄り添って生きてきた。

 ある日、妻のシルワは家の近くの森へ入った。彼女にとって、森は自分の庭のようなものだった。

 シルワは、味も良く(かぐわ)しい匂いの茸が毎年生える、自分だけが知る秘密の場所へ向かった。

 あの茸は高く売れるけれど、夫の好物でもあるから沢山採らないと──シルワは落ち葉を踏みしめて森の中を歩きながら、夫の喜びそうな献立を考えていた。

 「秘密の場所」の茸は今年も豊作だった。

 もう少し経つと寒くなる。収穫した茸の半分は売って、夫に冬の服を新調してやろう……そんなことを思いながら歩いていたシルワの靴先に、何か柔らかいものが当たった。

 動物の死体でも落ちているのだろうか──シルワは、屈んで足元を見た。

 落ち葉に埋もれていたのは、倒れたまま身じろぎひとつしない、見知らぬ青年だった。それも、一糸まとわぬ姿の。

 陶器を思わせる白い肌と背中まで伸びた栗色の髪、そして、その整った相貌には美しいという言葉が相応しいと言えた。


挿絵(By みてみん)


 死んでいるのか、と一瞬ぎょっとしたシルワだったが、恐る恐る触れてみた青年の身体には体温があり、よく見れば静かに呼吸しているのが分かって、とりあえず安堵した。

 このまま放っておく訳にもいかないと思った彼女は、夫のモンスを呼びに、急いで家まで戻った。

 モンスとシルワは、他の村人たちにも手伝ってもらいながら、青年を自分たちの家へと運んだ。

 衣服も、他の持ち物も何もない状態から、青年が何者なのか推測することは叶わなかった。

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