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雲の上で

 フェリクスたちは、反帝国組織「リベラティオ」の「頭領」に会うべく、アルカナム魔導帝国へ向かうこととなった。

 飛空艇で直接入国するよりは、陸路の「抜け道」を使ったほうが安全らしく、帝国の領空の手前で、組織の迎えが待っているという話だ。


「同志たちとの合流地点へは十時間ほどで到着する予定です。お休みになるなら、空いている部屋がありますので、お使いください。喉が渇いたとか、小腹が空いたとかも、遠慮なく言ってくださいね」


 すっかり、フェリクスたちの世話係になってしまった感のあるシュクレが言った。


「この(ふね)の操縦室を見てみたいのだが、無理だろうか?」


 フェリクスは、シュクレに問いかけた。


「フェリクス、そういうのに興味あるのか」


 へぇ、という顔で、アーブルが言った。


「まさか、飛空艇に乗る機会があるとは思わなかったからな。どんなものかと、少し気になって」


「機器類に()れないということだけ守ってもらえれば、構いませんよ。では、こちらへ」


 そう言って、シュクレが操縦室への通路を(さし)(しめ)した。


「セレスティアも、来るか? 疲れているなら、先に休んでいてくれても……」


「行きます!」


 フェリクスが言い終わる前に、セレスティアは彼に駆け寄った。

 操縦室に入ると、操縦士らしい二人の男が、それぞれの席に座っている。

 化石燃料で動く乗り物は、内部構造も全体的に武骨な印象のものが多い。しかし、魔法技術を使用した飛空艇の操縦席には、基本的に突起物が殆ど見当たらず、代わりに、数字や文字などを映し出す、光る板のようなものが幾つも()め込まれている。


「おや、お客さんかい」


「この方たちが、見学したいって」


 シュクレが、操縦士にフェリクスたちを紹介した。


「今、話しかけても問題ないのか?」


 フェリクスは、操縦士たちに尋ねた。


「今は自動航行中だから、まったく問題ないよ」


「自動航行?」


(あらかじ)め、行きたい場所を入力しておけば、その間は自動で飛んでくれるのさ。何か予定外のことがあった時は手動に戻さなければならないが」


「なるほど……化石燃料で原動機を動かす飛行機とは、飛行する仕組みの考え方も異なるのだろう?」


「帝国の飛空艇は、魔法で重力制御をしながら飛ぶものだからね。化石燃料で飛ぶ飛行機なんて、すぐに()ちそうだし、俺は怖くて乗る気がしないよ」


 操縦士たちが、そう言って笑った。

 セレスティアは、操縦士たちに様々な質問をするフェリクスを微笑みながら見ている。


「フェリクス、楽しそうですね」


「俺は、皆より知らないことが多いし、知らなかったことを知るのは、面白いからな」


「あんた、時々、子供みたいに知りたがりになるよな」


 少し飽きてきたのか、アーブルが、欠伸(あくび)を噛み殺しながら呟いた。


「そういえば、あなたたちって何歳なのですか? 気にしたことがありませんでしたけど……」


 セレスティアが、思い出したように言った。


「俺は、もうすぐ二十一だけど」


「あら、アーブルは、私と変わらないんですね」


「えぇッ? 姫様って、成人してたの? てっきり、十六、七くらいかと思ってたよ!」


 アーブルが素っ頓狂な声を上げると、セレスティアは顏を赤らめた。


「そ、そんなに、子供っぽいですか?」


「いや、中身は、すごくしっかりしてると思ってるよ。あれか、時々見る『異能(いのう)』の血の所為で若く見えちゃうやつか」


 二人の会話を聞いていたフェリクスは、ふと自分のことを考えて、少し不安になった。


「俺は、何歳くらいに見えるんだ? モンスとシルワには、ニ十歳くらいだろうと言われていたが」


「何となくだけど、自分よりは少し上だと思ってたよ」


 アーブルが、首を捻った。


「でもさ、フェリクスも『異能(いのう)』だし、見た目はアテにならないんだよな。もしかしたら、とんでもなく爺さんだったりして」


「全く実感は無いが……その可能性は否定できないということか……」


 依然、村で保護される前の記憶が戻らないフェリクスは、思ってもいなかった可能性に気付き、愕然とした。


「おいおい、冗談を真に受けるなよ!」


 アーブルが笑いながら、フェリクスの背中を軽く叩いた。


「私は、フェリクスが何歳でも、気にしません……よ?」


「そう言ってもらえると、安心する」


 セレスティアの言葉に、フェリクスは、安堵の溜め息をついた。

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