思い合う(挿し絵有り)
フェリクスたちは、難民の集まっている区域から離れ、別の城郭都市に繋がるという街道へと出た。
「この街道を、しばらく進んだところで北に逸れると、小さな集落があると聞いた」
「でかい街は、余所者を締め出してるって話だし、その集落に向かってみるか……」
道すがら、フェリクスとアーブルが話し合っているのを横目に、セレスティアは、どこか沈んだ面持ちで歩いている。
「それにしても、まさか、姫様も『異能』だったなんてな」
アーブルが感心した様子で言った。
「ごめんなさい。怪我をした子を見たら、放っておけなくて……」
「何故、謝る?」
セレスティアの言葉に、フェリクスは首を傾げた。
見返りを要求するでもなく、当然のことだと言わんばかりに、他者を救おうとするセレスティアの姿は、フェリクスにとっては眩しく尊いものでしかなかった。
不意に、セレスティアが足を止めた。
「……あなたたちとは、ここで別れます」
彼女の突然の宣言に、フェリクスとアーブルは思わず目を剥いた。
「ここで別れるとは……どういうことだ?!」
フェリクスは、ひどく動揺した。
自分の前から、セレスティアがいなくなることなど、考えたくなかった。
「私が『異能』の力を使ったことで、帝国軍に見付かってしまうかもしれません。そうなれば、あなたたちも危険な目に遭わせてしまうでしょう。だから……」
セレスティアが、無表情に淡々と言った。しかし、フェリクスの目から見ても、それは明らかに無理をしているのだと分かった。
「『異能』の力は想定外だったが、君と行動を共にすると決めた時点で、多少の危険があることなど百も承知だ。俺は、君を守ると約束した筈だ」
フェリクスは、必死でセレスティアを説得しようとした。
「でも、私は……私の所為で、あなたたちが生命を失うようなことがあって欲しくありません」
「あのさ、姫様」
アーブルが、至極真面目な顔で言った。
「もし、姫様を置いて行った後、俺がジジイになるまで生き延びたとしても、一生ずっと後悔すると思うんだよな。俺、そっちの方がイヤだよ」
「…………」
セレスティアが、涙を溜めた目で、アーブルとフェリクスを交互に見上げた。
「それにさ、姫様は、こんな泣きそうな顔になってるフェリクスを突き放せる程、薄情じゃないだろ?」
「……俺が、泣きそうになっている……のか?」
アーブルの言葉に、フェリクスは目を丸くした。
「なってるよ! 姫様が『ここで別れる』って言った時から、この世の終わりみたいな顔してるじゃないか」
この世の終わり──なるほど、今の気持ちを表すのに、これほど相応しい言葉はないだろう──フェリクスは、変に納得した。
「……頼む、君の傍に、居させてくれないか」
言って、フェリクスはセレスティアの手を取った。
彼女と離れることは、自分にとっても辛いことなのだと伝えたかった。
──その時。
フェリクスの中に緊張感が走った。
「何か」が近付いている、と思った。
あの時──村が焼かれ、帝国の兵士たちと戦った際に彼らから向けられた、「殺す」という意思……それと同じものを感じた方向に、フェリクスは振り返って、身構えた。




