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道行き

 舗装されていない道の凹凸(おうとつ)が、車輪を通して、荷台にまで伝わってくる。


「いい加減、尻が痛くなってきたぜ」


 アーブルが、座っていた荷台から少し浮かせた自分の尻を撫でた。


「だが、この車に乗せてもらって助かった」


「そうだな……俺たちでも、徒歩じゃ骨の折れる距離だったからな」


 フェリクスの言葉に、アーブルが頷く。

 二人の出会いと、アルカナム魔導帝国による各国への侵攻開始から、ひと月ほどが経っていた。

 戦火を避けるように、フェリクスとアーブルは、日雇いの力仕事などで路銀を稼ぎつつ、転々と移動している。

 二時間ほど前のこと、彼らは道すがら、荷運び用の車両が大きな穴に車輪を取られて立ち往生しているところに行き会い、穴からの脱出を手助けした。

 車両の運転手は大層喜んで、自分の目的地まで運んでやろうと申し出た。二人は、その言葉に甘えたという訳だ。


「それにしても、化石燃料を使って走る車なんて、面白いよな。帝国の軍用車両は、魔法の力で地面から少し浮上して進むから、ほとんど揺れないんだ。車輪も無いのに車両と呼ぶのも変な話だけど」


「帝国が魔法技術の多くを独占しているから、他の国では、魔法を利用しない技術を開発する必要があったと聞いた」


「銃も、実体のある弾を飛ばすらしいな。当たると痛いんだろうなぁ」


「実弾は、使用すれば、いずれ尽きてしまうが、魔導兵器は無尽蔵と言われる『マナ』を動力源にする……やはり、帝国が圧倒的に有利という訳か」


「帝国と、それ以外の国では、文明の発展度が国によっては百年分くらい差があるって聞いたこともあるからな……」


 世界統一を掲げるアルカナム魔導帝国の圧倒的な軍事力により、既に幾つかの国が降伏し、その支配圏に加えられている。

 もちろん、座して死を待つ国ばかりではなく、複数の国が同盟を組んで帝国に対抗していた。


「それにしても、帝国軍は戦線を拡げすぎているように思うのだが。補給や、攻め落とした場所の管理などを考えると、物資も人員も足りなくなりそうなものだ」


 帝国が拡げすぎた戦線を維持できなくなれば、停戦の望みもある。しかし、魔法技術により弾薬も燃料も「どこにでも存在する」マナから賄える帝国と比べれば、やはり多くの場面で化石燃料や実弾に頼らざるを得ない他の国は絶望的に不利と言える。

 そして、フェリクスが疑問に思うことが、もう一つあった。

 帝国軍は、侵攻した土地を荒れたまま放置し、進軍しているという。占領した後のことを考えれば、水道や、魔導絡繰(まどうからく)りの動力源である魔導炉(まどうろ)など社会的基盤(インフラ)は残しておくのが定石だが、それらも根こそぎ破壊しているらしい。

 まるで、以後は、そこに人が住むことなどないとでも言うかのように。


「それも『智の女神』の言いなりなんだろ。『上』の考えることなんて、下々には分からないよ。でも、あんたも、何だか難しいことを言うようになったな」

 

 そう言って、アーブルが小さく笑った。


「毎日のように戦争の話を聞いていれば、嫌でも色々覚えるというものだ……」


 フェリクスは、溜息をついた。

 つい、ひと月前までは、質素ではあっても平和に暮らしていた筈なのに、今では、どうやって日々の暮らしを繋いでいたのかすら、彼は分からなくなっていた。

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