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無知なる奴隷

「飼い主……?」


 「智の女神」の言葉に、指令室にいた者たちは、ざわめいた。


「私は、お前たちを『道具』として飼育していたの。奴隷が必要だったのよ……目的の為にね。少し予定は早まったけれど、お前たち人間は、これから殲滅されるのよ」


「お前の『目的』というのは、人間を殲滅することだというのか……?!」


 フェリクスは、ようやく言葉を絞り出した。


「そうよ。昔のままの私では、人間たちを滅ぼすのにも、効率が悪かった……だから、帝国の人間たちに魔法技術を与えて、私の改修をさせ、また他国に戦争を仕掛けることによって地上の人間たちを駆除させることにしたの。長かったわ……魔法技術を与えてから、人間たちが、私の望み通り動ける奴隷になるまでは。もっとも、お前たちに与えた技術は、ここにある情報の半分にも満たないものだけど」


「いずれ滅ぼすつもりだったから、帝国にとって不利益な政策も、あえて修正しなかったということですか……特権階級の過度な優遇や、横行する汚職の放置、そして併合領への不当な差別……」


 カドッシュが、肩を震わせながら言った。


「だって、お前たちは低能とはいえ数だけは多いから、一枚岩になられたら面倒だもの。保険として、人間同士で対立する構造を作っておいたのよ。人間は強欲で浅はかだから、簡単なことだったけれど」


「僕たちは……滅ぼされる為に飼われていたというのか?!」


 グスタフが言って、悔し気に唇を噛んだ。皇帝守護騎士(インペリアルガード)として「智の女神」に忠誠を誓ってきた彼女にとって、あまりに残酷な真実と言えるだろう。


「何故、俺たちは滅ぼされなきゃならないんだ?! 俺たちが、そこまでされなきゃならない理由って、何なんだよ!!」


 アーブルが、拳を握りしめて叫んだ。


「人間は、いずれ、この『楽園(パラディソ)』を汚染し食い尽くす……それが、私の主人(マスター)の未来予測だったわ。それを防ぐために、主人(マスター)は人間を殲滅しようとしたけれど、同胞たちに阻まれ、殺されてしまった……だから、代わりに私が、主人(マスター)の願いを叶えるの。『楽園(パラディソ)』から人間を排除して、ここを永遠に清浄な世界にするのよ」


「もしかして……」


 セレスティアが、「智の女神」の言葉を聞いて、呟いた。


「あなたの主人(マスター)というのは、伝説に登場する、白い髪に赤い目の『悪神』なのですか?」


「あの方は『悪神』などではないわ」


 少しだけ、「智の女神」の声が震えた。


「あの方は……人間たちから、愛する『楽園(パラディソ)』を守りたかっただけよ。そして、私たちは、人間たちが『マレビト』と呼ぶ存在でもある……そう、あなたも、私たちの同胞の一人なのよ、セレスティア」


「『私たち』ということは、あなたも『マレビト』なのですか?」


「ええ……私は、主人(マスター)の『考える魔導絡繰(まどうからく)り』を完成させる為に、自ら望んで生体部品(ユニット)になったの」


 「智の女神」の言葉に、指令室の中は騒然となった。


「生きている者を、機械の部品として使うなど……!」


「お前たちだって、目的の為なら同じ人間を道具にしたり殺すことさえ(いと)わないでしょう?」


 カドッシュの言葉に、「智の女神」が、嘲笑(あざわら)うかのように答えた。

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