お菓子
「『待て』はできるみたいだね」
「ちゃんと待ってたのに酷くね?」
町に到着した二人は買い出しをしていた。とは言っても、世間知らずなバケモノがいると何かと不都合が起こりそうなので、バケモノは店前で待機していた。
少年の体には大きいリュックを背負って、店から出てくる。小石を蹴り上げて口でキャッチし、そのままゴリゴリと噛み砕いたバケモノは、少年の暴言に反論した。
「悪食タイプかよ。ホント、属性盛りに盛ってるね」
「悪魔ってんな種類あんの?」
「そこから?…教本か何か買った方が良いかな。いやでも嵩張るし…。にしても、悪食ならアンタの分の食料買う必要なかったじゃん」
「どんなの買った?」
「基本僕のだよ。野営用のテントとか、替えの服とか、食料は日持ちするものを中心に──チョコレートとかも買ったよ」
「──チョコレート!?」
途端、バケモノが目を輝かせる。
「食べて良い!?!!!?」
「ハ?え、うん…?」
「わーい!!!!!!!!!」
戸惑う少年から言質は取ったとばかりにチョコレートを強奪するバケモノ。パキリと小気味良い音を鳴らして、板チョコを夢中で食べた。
少年は頭を悩ませていた。この挙動、明らかにおかしい。確かにバケモノは知識がなかったが、知能が足りていないわけではないのだ。それが『チョコレート』という言葉に反応して、それこそ脳が溶けたように言動が幼くなった。
「思い出した!!!!」
「ハ?記憶を取り戻せたのか!?」
「こうやってお菓子くれる人がいた!!!!」
「……それだけ?」
「うん!!!!!」
「死ね!!!!!!」
ぬか喜びさせやがって、と少年はバケモノを蹴るが、ダメージはないようだった。悪魔特効の『聖水』を作れるだけで、少年自身に戦闘能力はないのである。
「クッキーの匂いがする!!!!!!!!」
「ハァ!?あ、オイ!!!どこ行──クッソ速いな!!!」
いきなり叫んだ後、走り出したバケモノを少年は追いかけることになった。
少年はお金持ってた。いつでも迫害村から逃げ出せるように服に縫い付けてあったのと、燃える家から脱出するときに時間があったから、適当にパチって来てた。流石に他の村民の家を物色する余裕はなかった
少年「どうせならあのクズたちからも盗ってくれば良かった!!!!」