バケモノの能力
「…ねぇ、アンタさ……それ、どうにかなんないの?」
バケモノの流動する溶岩の脚を見つめ、少年は言った。
少年は人間である。化け物じみてはいるが、確かに育ち盛りの人間である。したがって、バケモノとは違い、よく食べ、よく寝る必要があった。
しかし、二人は着の身着のまま村を出た。旅の道具など持ち合わせておらず、村に戻って見繕おうにもあの惨状ではすっかり焼けてしまっているだろう。
そのため、まずは近場の町へ向かい、仕度を整えようとしたのだが、
「さっきも言ったけど、悪魔は討伐対象だよ?他のはまだ獣人の血が色々混じってるって言い訳できそうだけど…その脚だけは無理」
「つまり…人間になりゃ良いのか?」
「いやまぁ、できるんならそれが一番だけどってハァ!?」
少年が話している間にバケモノがグニグニと形を変え、尾も角もない普通の手足を持つ人間となった。
「……アンタ、何でもありだね」
「──俺は、潜入、でも、それは違、」
「?オイ、アンタ大丈夫か?」
「町に、で、生活、機能?好きに、悪魔、欲のまま…?」
「あぁもう!正気に戻れ!」
「ゥギュッッッ!??!」
喉から絞り出すような悲鳴を上げて、バケモノは転げ回った。どうやら人間形態でも『聖水』は効くようである。
「これ、協力申し出たの不味かったかな…?」
思った以上の厄ネタを掴まされた気がして、少年は肩を落とした。
バケモノはまだまだたくさんの能力を持ってる。悪魔の能力をほぼ全部乗せしてるせいで「ぼくのかんがえたさいきょうのあくま」みたいな感じになってる