呼び出しの帰りに遭遇した彼女と幼馴染との違和感
アクセスありがとうございます。
サブタイトルの違和感を毎回つけている意味は
想像にお任せします。
休みの学校はグラウンドで練習する部活の掛け声が響き渡るだけで校舎の方はとても静かだ。職員室のドアを開けただけで廊下に音が響き、そのまま中へと入る。
「しつれいしまーす」
「おぉ! 澤田君、こっち〜」
静かな職員室の奥にあるソファに座る三原先生が右手を上げて俺を呼ぶ。
「先生、ゴールデンウィーク初日から呼び出しってなんですか?」
「ゴメンね〜。大人の都合なのよ」
「なんですか? その理由・・」
「まぁ、すわってすわって」
対面してソファに座る俺の正面にいる三原先生の服装は普段と比べてかなり胸元が開放的な服装で、少しでも気を抜くと深い谷間へと視線が吸い込まれそうだ。
「・・・・」
「澤田君?」
「あっはい」
「呼んだ理由なんだけど、体育館で悪いことシテないかな?」
「体育館? それは、どう言う意味ですか?」
「澤田君には、身に覚えがないと?」
体育館での出来事で思い出すのは彩音と湊斗のシテることぐらいで、それを盗み聞きしたぐらいで呼ばれる理由にはならないと思い言い訳をする。
「身に覚えがないというか、帰宅部ですし・・たまにボッチ飯で体育館近くのベンチで弁当食べるくらいですけど」
「そう・・ご飯は1人よりみんなで食べる方が美味しいよ?」
「そうですか? 変わらない気がしますけど」
「ん〜でも、昼休みに体育館の近くにいたことはあるのね?」
「・・はい。それは間違いないです」
尋問みたいな空気の中で、三原先生は俺の身の周りのことについて深く聞こうかどうしようか悩んでいそうに見えたため、あえて俺から誘導してみる。
「先生、何かあったんですか? 別に俺は隠れて何かをシテいる訳ではないですよ?」
「うーん、一つ良いかな?」
「はい」
「プライベートなことを聞くけど、澤田君に彼女いるよね?」
「はい、2ーCにいる橘彩音です」
「その橘さんと、最近何かあった?」
三原先生は、どこまで知っているのだろうかと思いながら当たり障りのない反応を選択する。
「特になにも、今のところは・・です」
「今のところは・・なんだ」
「未熟な恋人同士ですから」
三原先生は何か事前に聞いた情報と俺の返事を聞いて、何か答えを導き出そうと考えている。
「・・三原先生?」
「・・・・」
「昼休みの体育館で、何かあったんですか?」
「!!」
ドキッとした反応を見せる三原先生は、隠していることを吐き出しなさいと言う視線を静かに向けているため、このままでは帰らせてもらえないと思い溜息をつき口を開いた。
「あ〜もうその反応でわかりました先生・・白状します」
「どうしたの突然?」
職員室に誰もいないことを確認するため立ち上がり見渡して空再び座り三原先生に視線を戻す。
「あのですね・・・・ちょっとすいません」
彩音と湊斗が男子バスケ部の部室での行為の一部を話そうとしたタイミングで、ポケットに入れてあったスマホが震えて着信を知らせる。
「先生、電話に出ていいですか?」
「・・良いよ。ほんとうは、持ち込み禁止だからね?」
「すいません」
ポケットからスマホを取り出し、画面を見ると那月からの電話だった。
「那月?」
「お兄ちゃん、今すぐ体育館に来て・・あの2人が入っていったの」
「わかった・・すぐに行くから」
電話を切りスマホをポケットにしまってから立ち上がると、三原先生に呼び止められる。
「澤田君? 先生とお話しているのに何処へ行くのかな?」
「三原先生、先生が知りたいことが今からわかるので、一緒に体育館に行きましょう」
「えっ? どう言う意味?」
体育館に行くということで、三原先生は遅れて理解してくれたようで一緒に職員室を出て体育館に向かう途中に一つ質問してみた。
「先生、今日の部活で体育館を使うクラブありますか?」
「・・今日は、無いわ。出勤した先生たちは、みんな屋外の部活顧問だったし」
「そうですか・・・・ここからは、足音を消してください」
「えっ? えぇ、そうなのね」
校舎を出て赤茶色のレンガが敷かれた道を歩いて行くと、体育館入り口横に那月が座り待っていた。
「お兄ちゃん」
「那月、電話ありがとな」
「うん、部室出たら偶然2人の姿が見えたから追ってみたら体育館に入って行ったから、もしかしたらと思って」
「あなたは、澤田君の妹さんなのね」
「はい。1ーAの澤田那月です三原先生・・それよりもこっちだよ、お兄ちゃん」
那月は2人の行為が聞こえるだろう換気用窓が一つ開いている場所まで俺と三原先生を先導する。
「先生、お兄ちゃん・・ここからは忍び足になってください」
3人で足音を立てずに歩き開いた換気用窓の下で立ち止まり、体育館の壁に背中を預けてから隣りにいる三原先生の耳元で小さく告げる。
「先生、何が起きても最後まで動かないでくださいね?」
「へっ? えぇ、わかったわ」
3人並びこれから聞こえてくる声に耳を澄ませている状況に俺の心が乱れないのは、心の何かが壊れてしまっているのだろう。
「・・・・彩音。諒太に迫られなかったか?」
「何もなかったよ。那月ちゃんが家にいたから」
「ずっと、心配だったんだぜ? 電話越しでしか彩音の様子がわからないから」
「ちょっと、心配って言われても諒ちゃんは私の彼氏だよ?」
「俺と何度もこうやってシテいるのにか?」
「んぁ・・でも、諒ちゃんがいちば・・今脱ぐから待ってて」
「だ〜め。今日は、俺がするから」
「ちょっ・・湊斗?」
彩音は帰宅部の俺が部活の練習スケジュールを知らないから、部活を理由に学校に来て湊斗とシテいるようだ。
「ちょっ・・部室でこんんぅ」
彩音の喘ぎ声を聞いた瞬間に三原先生は2人がいる部室へと乗り込もうと動き出したため、素早く口を手で押さえつつ背後から抱き締め制止する。
「先生、いろいろすいません・・ですが、このまま最後まで・・終わるまで待ってくれませんか?」
「んぅ〜」
「お願いします、先生・・じゃないと俺の心が・・」
三原先生は俺の言葉を聞いてピタッと止まり抵抗するのを止めてくれたっため、口を塞いでいた手を離し腰に回していた左腕も離す。
「澤田君・・」
小さく俺の名前を口にした三原先生の瞳は少し潤んでいるように見え、同情してくれているらしい。壁を挟んだ向こう側で俺たちがいることを知る由もない彩音と湊斗は最高に盛り上がり続け、最後は一緒に仲良く最高潮へ達して静かになった。
「・・・・先生、帰りましょう」
「・・・・」
静かになった部室から俺は職員室へと戻ろうと歩き出すと、妹の那月は何も言わずに左手を握ってくれると那月の小さく柔らかい手から優しさが流れ出ている気がする。そんな中で、三原先生は衝撃が大き過ぎたのか壁に背中を預けたまま空を見上げている。
校舎に戻り那月と誰もいない職員室に入り奥にあるソファに座り、静かな時間を過ごしているとガラッとドアが開かれ三原先生が戻って来た。
「・・澤田君、いつから知ってたの?」
「一昨日、初めて知りました・・2人がいつから関係を持っていたのかは知りません。ただ、俺と橘さんは去年の夏から付き合っていました・・・・もう、家に帰っていいですか?」
「・・そうね。今日は帰っていいわ。さすがに先生も頭の中を整理したいし」
「「 帰ります!! 」」
那月と2人で職員室を出て置いたままの自転車を押しながら校門へと向かっていると、校門脇で彩音と湊斗が立ち話しているところにばったり出会ってしまったのだった・・・・。
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