電話越しに話す彼女との日常の違和感
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耳から聞こえるコール音が繰り返す中で、視線の先には着信通知が届く彩音の姿を眺めていると彼女は気付いたらしく湊斗とのキスを止めてポケットからスマホを取り出しだすと、画面を湊斗に見せてから電話に出た。
「も、もしもし諒ちゃん?」
「・・・・」
「諒ちゃん?」
「・・あっ彩音?」
「うん。どうしたの?」
「いや、バイト終わったからさ・・ちょっと彩音の声が聞きたくて」
「そうなの? もう、諒ちゃんは寂しがり屋さんだね」
「かもな・・今は家だっけ?」
「・・うん、そう・・そうだよ。家にいるよ〜」
彩音は普通に俺に嘘をついている、今まで、こうやって湊斗と2人でいる時も俺に嘘をついていたのだろう。
「そっか、テレビ今何見てる? 男の人の声が聞こえたけど」
スピーカーからは何も聴こえてないけど、とりあえず男の存在が近くにいるのではと疑問を持った質問をしてみる俺の性格は歪んでいるのだろうか。
「えっ? そだよテレビ見てた・・けど、今はお風呂に入るところなの」
「お風呂? ゴメン、邪魔しちゃったね」
「ううん、良いよ。気にしないで諒ちゃん・・んぁ」
「どした?」
俺と電話をする彩音に湊斗が腰に腕を回しイタズラをしているのを知る俺は、変な声を出す彩音を心配する反応を伝える。
「だぁ、大丈夫。シャツが少し引っかかったの・・」
「ゴメン、今から風呂だったもんな・・・・なぁ、彩音。明日は俺ん家来ないか?」
外にいるのに電話中の彩音の身体を触り邪魔する湊斗と、俺に気付かれないよう悶えながら耐える彩音のイチャブリを眺めつつ会話を伸ばす。
「諒ちゃんの家?」
「そう。明日からゴールデンウィークだし、まだ予定を決めてないからさ・・どう?」
「・・・・」
耐えきれなくなったのか彩音は左耳に当てていたスマホを下ろし湊斗と何か話しているも、距離も離れマイク部を手で覆っているため聞き取れずにいると、2人は顔の近さにそのままキスをしている。
「俺を忘れてるのか? あいつら・・」
何度呼び掛けてもスマホを耳から離した彩音に俺の声は届かず、彩音と湊斗は2人の世界に浸りキスを繰り返す光景を見飽きた俺は、通話を切ってから遠回りをして家に帰った。
「・・ただいま」
家の玄関を開けながら彩音と湊斗の関係が確実なものとなり、彩音への恋心が完全に消えてしまっている俺の心の隅っこに小さく暖かいモノがあることに気付き思い出すと、年上のお姉さんの優しさに惹かれている自分を知り、部屋に閉じこもってから香苗さんにメッセージを送る。
「ゴールデンウィークに暇な時間があったらで良いので、良かったら遊んでくれませんか?」
「あそぼ!」
すぐに返事はこないだろうと思いスマホを枕元に置こうとしたらスマホが震え、そのまま返事を返す。
「ありがとうございます。年下の俺なんかじゃ、つまらないと思いますが」
「そんなことないよ、諒太くん。まだキミの心を癒しきれてないからね」
「・・女神様だ」
「そうよ。私は女神様なんだから」
「ははぁ〜」
ノリがいい香苗さんのメッセージに笑っていると、タイミングを図ったかのように彩音からメッセージが届き溜息が漏れる。
「諒ちゃん、なんで電話切ったの?」
お前が湊斗とキスしてたからだよ!画面を見てツッコミながら適当なメッセージを送ろうと入力している途中に香苗さんからメッセージが届いたため画面を切り替える。
「諒太くん、彼女いるって聞いていたけど、私を誘ったらダメじゃない? 浮気と思われるよ?」
「彼女はいます・・いることになってますが、もう幼馴染で親友だと思っていた男に寝取られていました」
既読から十数分たっても香苗さんからメッセージが返ってこないため、途中で止めていた彩音への返信を再開し送る。
「ゴメン彩音。俺から電話したのに、電池切れてさ・・少し充電してから家に行こうかと思ってたんだ」
「諒ちゃんもう大丈夫だし、もう寝るから家まで来る必要ないからね?」
まだ家に帰らず湊斗と一緒にいるのかと感じ取れる内容に、俺は彩音への返事を返さず待ち受け画面を眺めていると香苗さんから着信が表示されスマホが震える。
「もしもし?」
「もしもし諒太くん?」
「はい、香苗さんどうしました?」
「夜遅くにゴメンね。えっと・・さっきのコトは本当なの?」
「本当ですよ。なので、バイト先で香苗さんに抱き締め・・その癒された時は、まるで心の中を読まれたと思いましたから」
「諒太くん・・」
「なので、香苗さん」
「は、はい・・」
「こんな俺ですけど、遊びに誘ってみたんです」
彩音以外の女の人を遊びに誘うのは妹の那月以外無かったのに、意外と冷静な自分がいることに驚く。
「そっか・・ねぇ、諒太くん」
「はい」
「その、彼女との話を会った時に教えてくれないかな?」
「はい、そのつもりで誘いましたから」
「わかったわ・・えっと、明日また電話しても良いかな?」
「はい、香苗さんの都合がいい時間で構いませんよ」
「ありがとう諒太くん。明日、電話するね」
「はい」
「うん、おやすみ」
「おやすみなさい」
香苗さんのスピーカー越しに聞こえる声に耳が癒される俺は、このなんとも言えない気持ちのままスマホを充電しながら眠りについたのだった・・・・。
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