エピローグ・・・橘彩音13完
アクセスありがとうございます。
これで彩音のエピローグは完結です。
「橘さん、何を思い出したのですか?」
「諒ちゃんを・・澤田くんを裏切ってしまった理由を・・・・私は! 吉岡湊斗に襲われたんです! 委員会の作業をしようと家に呼ばれて・・目が覚めたら、何度も何度も私を穢してきました・・満足するまでずっと!」
私の言葉に先生達の空気がガラリと変わり、私の味方になってくれると確信します。
「吉岡くん、橘さんが言う主張が事実なら犯罪行為です。本当に間違いありませんか?」
「ち、違う! 俺はそんなことシテない!」
当たり前ながら否定する湊斗くんに、私は絶対に逃げられないことを吐き出します。
「嘘だ! 私が寝ているうちに襲ったじゃない! ソレをスマホで動画に残して脅したくせに!」
「なっ・・」
私への脅し材料として持っていた動画が逆に証拠になる事実に、湊斗くんが絶句してくれたことで信憑性が上がりました。
スマホの写真フォルダを見せることを拒否するだけで湊斗くんの立場は悪くなり、三原先生の機転でスマホのロックが解除されたのです。
女の先生立ち会いのもとで彼のスマホを触り写真フォルダにある動画を再生すると、寝ている私へと近づき襲っているのを十分に証明できる映像が残っていました。
その他にホテルや部室での行為も隠し撮られていたことに私はショック過ぎて言葉が出ず指先の震えが止まらないでいると、三原先生が校長先生に伝えます。
「校長先生・・橘さんが言ったことに間違いありません・・・・もう酷過ぎます」
校長先生は目を見開き部屋の天井を見て溜息を深く吐き出してから正面に座る湊斗くんを見つめながら応えます。
「三原先生、そうですか・・・・吉岡湊斗くん。私が教師となり数十年になりますが、キミに初めて伝えなければいけない事態のようです」
湊斗くんは校長先生の言葉を無視するかのように視線を逸らしています。
「ふぅ・・・・吉岡湊斗くん、キミを退学処分とします」
退学処分と言われた瞬間に湊斗くんは声を大にして異議を唱えますが覆る未来はなく、彼と停学処分となった私の手続きは滞りなく進み翌日から湊斗くんは学校に来なくなりました。
停学となった私は教室で皆んなと授業を受けれないだけで勉強をしなくても良いという訳ではないため、空き教室で出された課題をやることになりました。
いつも通りの時間に通学して誰もいない教室の真ん中にポツンとある私だけの席に座り先生を待ちます。
その日に終わらせる課題を受け取り自習のような時間が流れ昼休みにお弁当を食べて夕方まで課題をして家に帰るだけの色の無い学校生活です。
停学期間は2週間だと言われた唯一の先生と向き合ってする授業は、道徳心を学ぶ特別授業の時だけで誰かと話をする貴重な時間でした。
今日は偶然にも空き教室から出た後に偶然出会った仲の良かった友人に声を掛けられ停学の理由を面と向かって聞かれたことに驚きつつ、ただ無断バイトが先生に見つかっただけだと言って足早に別れます。
静かな停学期間を過ごし終わり、クラスに復帰した私の席は1番後ろへと移動していて、その列の席が1人分無くなっている事に気が付きます。
「・・だよね。退学だもん・・・・」
居心地の悪い教室で久しぶりにクラスメイトと受ける授業の日々が始まり、待ちに待った久しぶりの週末の朝早く
に目が覚めた私は理由も無く外に出てから思うがままに道を歩きます。
「・・ここのカフェ、懐かしいな」
諒ちゃんと行ったカフェで一緒にカフェオレを飲んだ思い出を胸に抱きながら通り過ぎる途中に、水色の軽自動車が開店前なのに駐車場に止まっているのが気になりますがそのまま歩き進みます。
「あの路地を曲がって歩いた先には、諒ちゃんの家があるんだよね」
週末の朝早い時間だからきっとまだ諒ちゃんは寝ているだろうなと思い、彼がいる部屋の窓を遠くから眺めたいなと思い歩く私がいます。
もう一緒に居ることができないことを本当は知っているくせに、これから週末デートのため約束より早い時間で向かいサプライズで彼の部屋に行く彼女を想像しながら路地を曲がりました。
「諒・・・・ちゃん」
「橘さん」
なんで諒ちゃんがここに居るのと驚きを隠せない私は、からの恰好をゆっくりと見てから聞きます。
「えっと、諒ちゃんはお出かけ?」
「・・・・あぁ。知り合いの子と遊びに行くところ。そっちは、彼氏とデート?」
「ちがぅ・・よ」
諒ちゃんと出会うさっきまで寝ている諒ちゃんを起こしに行く彼女役を想像していたのに、目の前にいる諒ちゃんは私に現実を突きつけます。
「そっか・・俺、もう待ち合わせの時間だから・・・・橘さん?」
目の前から諒ちゃんがいなくなりそうになったことに、私は何も権利がないのに無意識に手を伸ばし止めてしまいました。
「諒ちゃん、お願い・・行かないで。私を置いて行かないで・・・・話しを聞いてよぉ」
拒絶する諒ちゃんに私は縋ろうとしますが、彼に触れることができず立ち止まります。
そんな私を見る諒ちゃんはよく私に見せていた笑顔で再び想いを告げられ、締め付けられる胸が苦しくて黙り込んでいると誰かが来ました。
「香苗さん」
「諒太くん、ここにいたんだ」
「はい」
諒ちゃんの声が私に向けられる声質と違い過ぎて悲しくて涙が出てしまいます。
「えっと、そこで泣いている子は?」
不意に現れた女性は困惑しているようで、何故か諒ちゃんに事情を聞いています。
「元カノです」
もう今の私は元カノなんだよね。でも、ただの知り合いって言われてしまうよりはマシかなと考える自分がいます。
「そっか・・その子なんだ・・ホントに可愛い子ね」
女性は私の前に来たようで、足元だけを見ますが年上みたいですが、わたしのことは知っていたようです。
「はじめまして。橘彩音さんだったかな? 私は、諒太くんのバイト先の先輩の三原香苗です。たしか、あなたの学年に三原先生がいるでしょ? その先生は、私のお姉さんです」
隣りで驚く諒ちゃんに対して私は何も反応できず、ただ俯いているだけです。
「諒太くんと橘さんの関係は、それなりに聞いているんです。だから、ひとつだけお願いがありますが、聞いてくれますか?」
このお姉さんは私なんかになんのお願いがあるのだろうかと思い、顔をゆっくりと上げました。
「・・・・なんですか?」
「諒太くんは、今日・・今の時間を持って私と彼氏彼女の関係になります。そして橘さんは幼馴染・・それを伝えたくてここに来ました」
「えっ? 諒ちゃんはわたしの・・」
「橘さんは幼馴染です。私は諒太くんの彼女なの。これからデートだから、邪魔しないでくれるかしら?? それじゃ行こう、諒ちゃん!」
「うん、行こう香苗」
手を伸ばし笑顔を見せるお姉さんの手を握る諒ちゃんは笑顔を私に向けることなく目の前を通り並んで歩き去り、2人の幸せそうな背中が路地を曲がり見えなくなりました。
幸せな2人に置いて行かれた私には、容赦無く孤独感が襲って包み込もうとするため逃げるように私は家へと走り帰る途中の物陰から飛び出して来た何かに衝突し、青い空が赤く染まっていくのを見上げながらただ痛みと共に深い暗闇へと沈んでいってしまったところで記憶は止まったのでした・・・・。
感想評価ありがとうございます。
諒太と香苗のアフターストーリーは
要望があれば投稿したいと思います。
彩音と湊斗の先を知る諒太視点でストックしています。
次から新作を投稿させてもらいます。次も幼馴染絡みですいません。




