エピローグ・・・橘彩音12
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湊斗くんのように私を連れて体育館に向かって行く諒ちゃんは、急に違う方向へと黙ったまま歩きき続け校舎に入り職員室の前で足を止めドアを開けます。
「三原先生は、いますか?」
どうして職員室なんだろうと諒ちゃんの横顔を見ていると、三原先生は私達を職員室から遠ざけ廊下を歩き保健室へと向かわされました。
養護教諭の木葉先生は持ち場の保健室をあっさりと三原先生に笑顔で譲り渡し、足早にいなくなり3人になったら諒ちゃんはスマホを先生に見せて机に置きました。
休み時間以外にスマホを使うと没収されるのに何を考えているんだとみていると、スマホから会話が流れてきます。
急に音量が大きくなり湊斗くんと諒ちゃんが言い争い始め、湊斗くんが私との関係を自慢するように喋り始めたことに遅れて理解した私は大声で流れる会話を遮ろうと手を伸ばしたのです。
スマホまで後少しのところで三原先生に先にスマホを取り上げられてしまい、何も無い机に私の手は音を出し着地しギュッと握り締めながら顔を埋めます。
「橘さん!!」
「あぅ・・」
涙が止まらず机に伏していると、強く名前を呼ばれ顔を上げ先生を見つめた。
「学生とはいえ、彼氏がいるのに秘密裏に他の男子と身体の関係を持つことはあり得ません・・・・」
三原先生からゆっくりと告げられる言葉が重すぎて悲しくて頭の中に入って来なくなる私は、ただ諒ちゃんにざまぁと言われた瞬間に全てが遅過ぎたんだと足の力が抜け落ちました・・・・。
次の日からの私は諒ちゃんの保健室で言われた声が耳に残っているせいなのかまともに諒ちゃんを見れなくなり、代わりに校内で幸せそうに手を繋ぎ歩く男女を諒ちゃんと自分に重ねて見て滲む世界を過ごします。
そんな日の授業中に突然ドアを開けた生徒指導の先生が、強引に前の席にいる湊斗くんの腕を掴み反抗する彼を席から立たせ連れて行きました。
いったい何が起きたのだろうと私に助けを求めるように見ている湊斗くんからの視線に反応できず見送った後に、静かに入ってきた木葉先生が私の肩を優しく叩き廊下へと連れ出され生徒指導室へと連れて行かれます。
「橘さん、入ったらそのまま椅子に座って校長先生のお話しを聞きなさいね」
「・・はい」
ドアが開けられ中に入ると校長先生が湊斗くんと向きあうように座り、他の先生達が壁沿いに数人立って私をみています。
「橘彩音さん、吉岡くんの隣りに座りなさい」
「はぃ・・」
大人の圧に返事がうまくできないまま校長先生は後からもう1人来ると言って誰が来るかは濁しているけど、間違いなく諒ちゃんが来るはずと直感でわかります・・隣りの彼は別のようですが。
目の前に座る校長先生は、何か感情を抑えつけているような口調でゆっくりと告げます。
「吉岡湊斗くんと橘彩音さんの2名は、停学処分を言い渡します」
わたし・・停学なんだ・・・・今までの学校生活で停学になるなんてあり得ない世界だと思っていたけど、校長先生に言われたことで私はこんなに重いことをしたんだなと、客観的に感じ受け止めています。
そんな静かに受け止めているわたしとは違い湊斗くんは疑惑の全てを否定して停学処分が不服だと主張していると、校長先生に今以上に嘘をついて重ねたらさらに重い処分になると言われても諦めず意見を貫き通しています。
「そうですか・・・・おっと、彼がそろそろ来る時間のようですね」
「校長先生、さっきから後で来る奴は誰なんですか?」
湊くんは冷静さを失っているのかわたしと居ることなのに、諒ちゃんが来ることすら予想できないんだ。
後ろのドアがノックされ校長先生が入室の許可を告げた後に聞こえてきた声は、予想通り諒ちゃんです。
「澤田くん、下校前に呼んですまなかったね」
「いえ、帰宅部なので用事はない・・です」
「では、澤田くん・・・・ここにいる2人を見て理解していると思うが、君の口から直接聞かせてくれないかな?」
「・・・・その、俺達3人についてですよね?」
諒ちゃんは私と恋人関係になり幸せで充実した学校生活だった日々、湊斗くんと私が繋がる関係を知り苦しむ毎日で破綻しそうな関係をなんとか繋ぎ止めようと必死だった今日までの想いを話します。
そんな諒ちゃんの熱い想いを気付かぬフリをして頼らず避けて来た私の心は後悔で零れ落ちる涙を拭うことなく聞きます。
こんなに私のことを好きでいてくれた諒ちゃんに私は自分の恥を晒されないためだけに過ごした結果に、1人裏切られ苦しませていたんだなと改めて知ります。
諒ちゃんは包み隠さず最後まで想いを感情の抑揚が消えたまま吐き出した後に部屋から出ます。
「・・澤田くんの胸に秘めていた好きだったという想いを聞いて、どう感じましたか? 橘さん」
「・・・・諒ちゃんを・・澤田くんを裏切った私は、もう死んだ方が良いです」
校長先生は、私が苦しみから逃げないよう死ぬ選択は間違いだと諭すのを聞きながら、他に私には選択肢が無いのになと考えていると、ふとこの不幸の始まりの原因がなんだったのかを思い出す。
「でも! 大好きな諒ちゃんを裏切った私なんか生きていても・・もう好きって言われない私なんか・・・・そうだ!! 私、思い出しました校長先生!!」
「橘さん、何を思い出したのですか?」
この私を不幸にさせたい原因を言えば、わたしのことを諒ちゃんに振り返ってもらえるハズだと・・・・。
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