エピローグ・・・吉岡湊斗⑦完
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諒太がこの生徒指導室に来たと言うことは最初から俺と彩音を停学へと導くことだったのかと思い、適当に反省文とか提出すれば時間が解決するとわかり気持ちが楽になる・・・・はずだった。
「澤田くん、下校前に呼んですまなかったね」
「いえ、帰宅部なので特に用事はない・・です」
「では、澤田くん・・ここにいる2人を見て理解していると思うが、君の口から直接聞かせてくれないかな?」
「・・その、俺達3人についてですよね?」
校長は俺を見ている時とは違う瞳で諒太が話す内容を黙ったまま聞き入れている間に、周囲にいる教師達が俺に向ける視線は蔑んでいる瞳へと変わっていた。
「・・・・ありがとう澤田くん。君の想いは大人である私でも胸が痛い。全てを語ってくれたようだから、今日は帰ってくれて問題ないよ。この後の話は、2人の親御さんを含めてする必要があるからね。まだ君の胸に思うことがあるかもしれないけど、ここは校長先生に任せてくれないかい?」
「・・・・わかりました」
諒太は俺がバレないよう彩音にシテきたことの全てと言ってもいい程の内容を感情の抑揚がない言葉で暴露し部屋から出て行った。
ただ振り返り諒太の顔さえ見れない俺は隣りで前を向き涙を流す彩音ちゃんの横顔をみていると、なぜか俺だけ最悪な結末を迎えるのではと思ってしまう。
「・・澤田くんの胸に秘めていた好きだった想いを聞いて、どう感じましたか? 橘さん」
「・・・・諒ちゃんを・・澤田くんを裏切った私は、もう死んだ方が良いです」
「橘さん、心が苦しくて死を選ぶのは大人でもいます。ですが、ここまで育ててくれたご両親より先に自らの意思で死ぬことは間違っています」
「でも! 大好きな諒を裏切った私なんか、生きていても・・もう好きって言われない私なんか・・・・そうだ!! 私、思い出しました校長先生!」
「橘さん、何を思い出したのですか?」
「諒ちゃんを・・澤田くんを裏切ってしまった理由を・・・・私は! 吉岡湊斗に襲われたんです! 委員会の作業をしようと家に呼ばれて・・目が覚めたら、何度も何度も私を穢してきました・・満足するまでずっと!」
諒太が彩音に俺との行為を知りつつも自分の所へ帰っておいでと伝えるも、応えてもらえなかったのは自分の責任だと諒太が想いを吐露し帰った後に校長に聞かれた彩音が急に発狂し立ち上がりながら俺から離れ女教師陣の方へ行き睨む。
「吉岡くん、橘さんが言う主張が事実なら犯罪行為です。本当に間違いありませんか?」
「ち、違う! 俺はそんなことシテない!」
「嘘だ! 私が寝てるうちに襲ったじゃない! ソレをスマホで動画に残して脅したくせに!」
「なっ・・」
脅し材料でスマホの写真フォルダに残している動画をそのままにしている俺は、この場で見られたら言い訳できない。
「吉岡くん、スマホの写真フォルダを校長先生・・いや、三原先生達の女性に見せてくれるかな?」
「・・イヤです」
スマホの写真フォルダを見せない選択肢ししかない俺は拒否しながら、残ったデータを消していないことに焦る。
「見せてくれないということは、事実だと認めているのかな?」
「そんなデータありませんし、プライベートな写真を先生にでも見せたくありません」
校長は俺が見せたくない理由を繰り返し聞いてくる。女教師達は、見せれないには彩音の証言通りの証拠動画があるからと騒いでいる。
「吉岡くん、キミが潔白を証明しない限り疑惑はきえないのだよ?」
「・・・・わかりました」
見せる素振りの中で写真フォルダをアクセスし初期化すればデータは抹消され、床に落とした衝撃でデータが消えたと言い訳すれば確かめようがないから俺の勝ちだと考え、スマホの顔認証でロックを解除しようとした隙に三原先生にスマホを奪われた。
「なっ! 返せよ!」
「どうぞ」
手元のスマホを奪い取った三原先生は、一歩下がったくせにすんなりと俺にスマホを差し出したことに俺は油断していた。視線を生徒からスマホへと向けると、不自然に画面を向けられていたことに気づいた時にはロック画面からホーム画面へと切り替わり伸ばした右手は空振りに終わる。
「あ!」
「成功ね!」
俺のスマホを持つ三原先生は彩音の方へと戻るため奪い返そうと椅子から立ちあがろうとした時に高倉先生が行手を阻む。
「クソが・・」
「この俺に言っているのか? 吉岡・・」
「・・・・」
コイツに立ち向かっても勝てない俺は何も言えず黙っているその向こうで、俺のスマホのフォルダを彩音が確認していた。
「校長先生・・橘さんが言ったことに間違いありません・・・・もう酷すぎます」
「三原先生、そうですか・・・・吉岡湊斗くん。私が教師となり数十年になりますが、キミに初めて伝えなければならないといけない事態のようです」
「・・・・」
校長の顔は怒りというより哀しげな顔をしているように見えた。
「ふぅ・・・・吉岡湊斗くん、キミを退学処分とします」
「お、俺が退学!? なんで退学なんだよ!?」
「高校生として、あるまじき行為をしたからです」
「なんだよソレ! 恋人同士なら普通だろ!?」
「キミは普通じゃないことをしたんだ。澤田くんの彼女である橘さんを悪意の中で寝取った・・これは学校側として一般的な恋愛ではありません。ましてや、校内でシテきた行為が問題でありさらに寝込みを襲うとは・・もう犯罪行為で退学処分しか残されてないのですよ」
「は、犯罪って・・別に俺は警察に何もされてねーし! マジ意味わかんねーよ!?」
「女の子の心と体を傷付けておいて、まだ言い訳するのですか貴方は!!」
「なっ・・俺は、そんなつもりは」
三原先生の圧に負けてこの部屋に誰も味方がいない俺は、裏切って暴露した彩音を見ることしかできない。
「吉岡くん。実は素直に罪を認めて反省していれば、自主退学という選択肢を私個人で残していましたが・・残念です。ご両親にお伝えして事後の手続きを進めるしかないですね」
「ちょっ・・マジで退学って・・停学処分じゃないんですか?」
「・・吉岡くんが重たい罪を犯したという事実があるからですよ」
「そんな・・俺の将来は、どうなるんだよ・・・・このまま中卒って・・」
幼馴染の可愛い彼女を俺の女に仕上げただけなのに、退学に追い込まれた意味がわからない。どんなに俺が校長に訴えても俺の退学は変わらないため、このまま彩音も退学にと巻き込もうとするも俺に逆らえないと言う事情で停学より軽い自宅謹慎で済むのが許せない・・・・けど、今の俺には何もできないまま生徒指導室から高倉先生に連れ出され空き教室で親が迎えに来るのを待つだけで、俺の未来は暗く見えなくなっていったのだった・・・・。
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吉岡湊斗のエピローグは、これで終わりです。
続きは、後日談で描く予定ですが彩音のエピローグを先に終わらせて
からですね。




