エピローグ・・・橘彩音⑥
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あんなに毎年楽しみにしていたゴールデンウィークという連休が、ゆっくりと近づいてくることがこんなに苦痛だったなんて私は知りませんでした。
大好きな諒ちゃんに言いたくても言えない隠し事が知られてしまうのではと怯える私と、前の席の男から逃れられない弱い私は周囲の友達にさえ悟られないよう行動して行く中で、アイツとの身体を重ねる時間だけ訪れる快楽に溺れて依存していくように落ちていたのです。
いつの間にか明日からゴールデンウィークとなり、ひさしぶりに明日諒ちゃんの家に遊びに行くことが決まりアイツと離れ諒ちゃんと二人きりになれるという実感が込み上げ熟睡できた夜を過ごし、朝になり諒ちゃんの家に向かう途中にアイツが待ち伏せしていました。
「彩音ちゃん・・」
「・・なに?」
「今から諒太の家に行くんだろ?」
「そうだよ。デートの話しするの・・だから、もう行くから」
「待ってよ、彩音ちゃん」
「離して!」
吉岡湊斗に手を掴まれ、諒ちゃんの家に行くことを邪魔され楽しい気分が台無しで最悪です。
「俺に逆らったら、わかってるよね?」
「・・・・」
「諒太の家にいる時間は、ずっと通話中にしとけよ?」
「どう言うこと?」
「わかんねーのか? 男の部屋に女が行ったら襲われるに決まってるだろ? 心配なんだよ、俺はさ・・」
「・・諒ちゃん、彼氏だから受け入れるけど。っていうか、諒ちゃんは、湊斗くんと違って紳士だし」
「はいはい・・俺の言うことだけ聞いとけよ」
「・・・・」
私は結局、アイツの指示に従うしかなく玄関前でアイツの電話にかけて通話中画面を確認してから諒ちゃんの家に入り、久しぶりに彼の部屋に入ることができました。
中学時代に愛用していたクッションが大事に置かれていたことが嬉しくて涙が出そうでしたが、グッと堪えて気付いてないフリをしながらスマホがスリープモードから画面が明るくなるよう位置を動かすフリして傾け、アイツの名前が画面に表示され諒ちゃんに気付いてもらう作戦は失敗しました・・。
そのままデートの行き先を話し海へと遊びに行くことが決まり、クラスメイトと行ったあの丘のカフェに諒ちゃんを誘うと決めた私は、那月ちゃんが家にいるせいで諒ちゃんが迫ってくれないのだろうと諦め帰ることになったところで、諒ちゃんから昼ごはんを一緒にと誘われるけど、アイツに聞かれているため部活を理由に断り諒ちゃんと別れました。
「はぁ・・一緒にご飯食べたかったよ・・」
落胆する私の心をさらに突き落とすかのように、背後から吉岡湊斗が声を掛けて来ます。
「彩音ちゃん! お疲れ〜」
「・・近くに居たの?」
「当然だよ、もしものためにね?」
「もしものためって・・」
「とりあえず、制服に着替えてから学校行こうか?」
「わかった・・」
吉岡湊斗が私を学校へと誘う理由は一つしかありません。愛の無い関係を男バスの部室で過ごし終わったら帰るだけ・・ただそれだけのはずでしたがアイツはすぐに私を家に帰してくれません。
「彩音ちゃんさ、明日の諒太と会う前に駅前の薬局に来てね?」
「意味がわかんないんだけど?」
「諒太と会う前に、俺色に染めてから送るんだよ」
「・・・・」
もう仲の良い幼馴染とは呼べなくなった吉岡湊斗を軽蔑の視線を向けていたところに、背後から歩く音が聞こえ振り返ると制服を着た諒ちゃんと妹の那月ちゃんのが居て息が詰まりました。
「りょ・・諒ちゃん」
「彩音・・」
「諒太、帰宅部なのに学校に用事か?」
「なんか担任に呼ばれたから仕方なく、学校に来たんだよ湊斗」
「諒太・・お前まさか、補習か!?」
容姿も成績も上の諒ちゃんになんてことを言うのと憤っていると、私より先に笑顔だった妹の那月ちゃんが豹変し私は背筋がゾクッとします。
「はぁ!? ふざけてんのアンタ!?」
「こっわ・・那月ちゃん」、なんで怒ってる?」
「私を名前で呼ぶなクズが!!」
「「 ・・・・ 」」
あんなに可愛い那月ちゃんが怖くて言葉になりません・・それに絶対に口にしない言葉であるクズ呼ばわりをするってことは、もう私とコイツの関係を知っているのではと考えてしまいます。
そんな豹変した那月ちゃんに対して諒ちゃんが向ける優しさは、私にも向けられていた優しい笑顔で胸がギュッと痛くなります。
「那月、一応あの2人は先輩だから、タメ口はダメだぞ?」
「あっ・・ゴメンね? お兄ちゃん」
「いいよ・・可愛い妹だからな」
「えへへ・・お兄ちゃん〜」
兄妹とはいえ、2人のやり取りを見ていた私の心に嫉妬心が生まれます・・そんな資格なんてない女なのに・・。
「それじゃ、俺達は帰るよ」
「お、おぉ・・またな諒太」
「・・・・」
「彩音?」
「はい」
「・・信じてるからずっと」
「・・う、うん。私もだよ諒ちゃん」
「諒太、なんだよそれ? 最近そればっかり言うよな?」
「そうか? 気のせいだと思うぜ? また明日な彩音」
「明日ね、諒ちゃん・・バイバイ」
「バイバイ・・・・か」
「????」
また明日ねというつもりでバイバイと言った私の言葉に対して、諒ちゃんが考え込みバイバイというフレーズに反応したことに、当時の私は理解できていませんでした。あの時にバイバイではなく、諒太ちゃん一緒に帰ろうと言う言葉がなぜ言えなかったのでしょうか・・・・。
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