日常で追い詰められる違和感を見る日常
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保健室から出て吉岡の制裁も時間の問題だなと思いながら1人教室に帰ると、昼休みに食べそびれた弁当箱とお茶のペットボトルが置いてあった。
「おい諒太、どこ行ってたんだ? 妹ちゃんがお前の弁当を届けてくれたぞ?」
「そっか・・なんか、悪いな太一」
「別にいいけど。ちゃんと、妹ちゃんに謝っておけよ?」
「あぁ、そうするよ」
午後の授業が始まるチャイムが鳴り、担当教科の先生が教室に入り授業が始まってからしばらくして、廊下を複数人の教師達が通り過ぎると、隣りのクラスが騒がしくなり吉岡湊斗が大声を発しながら先生達に連れて行かれる光景を席から窓越しに眺め見送る。
「アイツも終わったな・・」
「ん? 終わったって?」
「いや、なんでもないよ太一」
「そっか・・またいつもの諒太の独り言かよ」
「ん? 俺って、そんなに独り言を言っているか?」
「言ってるぜ?自覚ないなら、録音してやろうか?」
「自覚ないけど、それは断る・・」
「無いのか〜重症だなー諒太ぁ」
クラスメイトの太一と午後のつまらない授業を乗り越えた俺達に待っているのは、自由な放課後だけとなり足早に帰ろうと席を立ったところで、終礼を終わらせた三原先生が俺を呼び出す。
「先生、まだ何かあるんですか?」
「そうね・・これが最後になると思うわ澤田くん」
「わかりました」
三原先生に連れられて来た場所は、誰も近付かない生徒指導室だった。
「さぁ、入りなさい」
「・・・・失礼します」
前に来た時と同じように重苦しい生徒指導室に入ると、人の気配があり奥に進み歩いた先には集会の時に遠くで見かける白髪混じりの校長先生が座っていて、机を挟み手前側には橘彩音と吉岡湊斗の2人が並んで座る背中があった。
「澤田くん、下校前に呼んですまなかったね」
「いえ、帰宅部なので特に用事はない・・です」
入学して初めて校長先生と面と向かって話しかけられたことに、俺は緊張している。
「では、澤田くん・・ここにいる2人を見て理解していると思うが、君の口から直接聞かせてくれないかな?」
「・・その、俺達3人についてですよね?」
コクリと頷く校長先生は優しく微笑んでいるように見えるも、俺を見る瞳は全てを見透かすように感じてしまい、すぐそこで背中を見せる2人を見ながら想っていることを全て吐き出した。
「・・・・ありがとう澤田くん。君の想いは大人である私でも胸が痛い。全てを話してくれたようだから、今日は帰ってくれて問題ないよ。この後の話は、2人の親御さんも含めてする必要があるからね。まだ君の胸に思うことがあるかもしれないけど、ここは校長先生に任せてくれないかい?」
「・・・・わかりました」
前で座る橘彩音と吉岡湊斗は、終始俺に背中を向けたままで振り返る素振りすら無く、校長先生に一礼して生徒指導室を出た。
「ふぅ・・疲れた」
昼休みに那月と一緒に弁当を食べれなかったことを思い出し、きっと怒っているだろうと思いながら部活の練習中だろう女子ソフトボール部のグラウンドへと向かうと、那月が練習着で頑張っている姿があった。
グラウンドを囲むフェンス越しに俺は芝生に座り食べてなかった弁当を食べながら、練習に励む那月を応援するため、フライを取る順番が来た那月に声援を送る。
「那月〜頑張れ〜!!」
空高く上がる白球を見上げる那月はダッシュして素早く落下点へと目指し走るも、さらに加速してボールを見ることなく外野にいる俺の方へと全力疾走して来た。
「「「 なつきーーー!!! 」」」
部活仲間が突如暴走する那月の名前を叫ぶも、振り返る事なく背後でボールが虚しくバウンドを繰り返し転がり止まり放置される。
「お兄ちゃーん!」
「那月?」
俺と那月の間にあるフェンスの存在など関係が無いように、那月は勢いをそのままフェンス前で俺にグローブを投げ、網目に足先を掛け飛び越えるとそのまま俺に両手を広げ飛び込んで来て抱き止めた俺は勢いを消せず地面に倒れてしまう。
「お兄ちゃん、お弁当食べた? アイツに蹴られたって聞いたよ? お腹大丈夫? 見せて?」
質問攻めの那月に俺の言葉は届いておらず、ワイシャツを捲り吉岡に蹴られた場所を指先でソッと触れる。
「・・アザになってる。今からアイツ殺しに行くから待っててね、お兄ちゃん」
「なっ那月・・落ち着けって・・うぁっ」
馬乗りになっていた那月は、俺を傷付けた吉岡を殺すと言いながら立ち上がるのを阻止したせいでバランスを崩し、俺の顔に柔らかい胸が着地する。
「お、お兄ちゃん。初めてが外でだなんて大胆だよ・・友達だって見てるのに」
「ちがっ・・そういうことじゃないから」
兄妹で間違いを犯す方向に勘違いした那月は、いつのまにか吉岡への殺意を消してくれていた。
「お兄ちゃん、練習見てくれるの?」
「そう思って、ここに来たんだよ那月」
「嬉しいな。今日は軽いメニューだから、終わったら一緒に帰ろうよ?」
「いいよ。帰りにバイト先のコンビニに寄ってもいいか?」
「うん、いいよ! アイス食べたいな!」
しばらくして練習がおわったらしく、那月達がグラウンド整備をしている間に上級生達が先に帰って行き、最後の方に制服姿の那月が部室から出て来て走って来た。
「お兄ちゃん、お待たせ! 帰ろ」
「お疲れ、那月」
2人並んで歩いて帰る途中にバイト先のコンビニに寄って、レジにいたオーナーに休んでしまったことを謝り明日からシフトに入れることを告げてから、那月が食べたいアイスを買って店を出た。
「お兄ちゃん、バイト大丈夫なの?」
「前よりは慣れるまで少なめにしてもらっているから、負担にはならないよ」
「それならいいけど・・」
通学路に指定している朝とは違う道を途中まで歩き住宅街に入ってから通学路に戻ると、吉岡のおかげなのか近寄りたくない嫌な場所に連れて行かれたことで、一時的に記憶喪失だった俺は欠落していた記憶を全て思い出せていた・・もちろん、悪いことも良いことも全て。
学校でいろいろあって疲れていた俺は夕食を家族で食べてから部屋に戻り、しばらく連絡していなかった香苗さんにメッセージを送る。
「香苗さん、お久しぶりです。明日から少しずつですが、バイトに復帰します。これからも、よろしくお願いします」
送信をタップして、大きなことをやり遂げたような気分になった俺は、スマホをスリープにして枕に置きそのまま寝落ちしてしまっていたのだった・・・・。
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続きが見たいとか・・ざまぁが足りないとか・・妹の那月の
性格は、ありえないとか・・なんて笑




