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彼氏彼女とその幼馴染の物語  作者: だいちき
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目の前の光景である日常の違和感

アクセスありがとうございます。


 朝から気分が乗らないのはいつものことだけど、今日は過去イチ最悪な感じなままで自転車に乗り学校を目指す。通学路の途中にあるコンビニにも立ち寄らずに。


 学校の校門を通過して右に行くと駐輪場があり、いつもの場所に自転車を停めてから重い足取りで教室へと孤独にな俺が目指していると、視界の先に誰かを待っているような女子生徒の後ろ姿が見えた。


「彩音か・・」


 朝陽に照らされ茶色に見える長い髪を吹き抜ける風に揺らしながら足元に視線を落とし立っている彩音の後ろ姿に気付いた俺は、自然と彩音から距離を取るように別ルートで教室に向かおうと足を止めたタイミングで、彩音が振り返り俺を見つけると普段見せていた笑顔で歩き近付いて来た。


「・・おはよ」


 何か言われる前に俺は彩音に普段通り挨拶をして、いつもの彩音の返事を待つだけのはずだったのに背後から被せるように男子生徒の声が聞こえた。


「おはよう! 橘さん!」


「おは、おはよう〜吉岡くん・・諒ちゃん」


 彩音は俺に向けていた視線を背後から現れた幼馴染の吉岡湊斗に挨拶をしてから2番目に俺だった。その直後に、俺に用事があったのでは?と思っていた彩音は、湊斗と何気ない会話を始めたため俺の存在は空気になった気がして先に歩き出す。


「おっす、諒太。なに先に行ってんだ?」


「いよっ湊斗・・別に何もないさ」


「そうか? お前らしいな」


 幼馴染3人が揃うことに何も違和感は無いはずなのに、今朝は湊斗が真ん中でその左に彩音がいる・・いつも俺の左側を指定席のように歩いていてくれていた彩音は、湊斗の左側を普通に歩いているため俺は湊斗の右側を並んで歩くしかなかった。


 3人で歩けば1人だけなかなか会話に入れない。それが今の俺の立ち位置になっている。俺と彼氏彼女関係であるのに、彩音は湊斗と楽しそうに話しているため俺はポケットからスマホを取り出し、まだ返事を返せていなかった香苗さんに返事をする時間に決め画面に意識を向けメッセージを作成した。


「香苗さん、おはようございます。次のシフトは金曜なので、その日でもいいですか?」


 送信をタップして着信したマークが出て未読状態を確認してから、役目を終えたスマホをポケットに戻したところで彩音と湊斗の2人は、どうやら俺に何かの答えを求めていたらしい。


「どした?」


「諒太? 聞いてたか?」


「何を?」


「はぁ・・だから、お前は・・」


「湊斗、なんだよ急に?」


「もういいよ、諒太・・」


「めっちゃ、気になるんだけど?」


「諒ちゃん、なんでもないよー?」


「彩音もかよ・・まぁ、別にいいけど」


 彩音と湊斗は反応が俺らしいと2人仲良く笑いながら歩く光景に、幼馴染ではなく恋人のように見間違えてしまいそうな気持ちが芽生え、嫉妬から過去の俺では言わない言葉を吐き出してしまった。


「ってかさ、なんで今日は湊斗が真ん中な訳?」


「真ん中って、何がだよ?」


「諒ちゃん、いきなりどうしたの?」


 俺の言っている意味が解らない湊斗は、俺を見た後に彩音を見ると彩音の反応も理解できないような反応を見せたためショックで沸き起こる感情が冷めてしまった。


「・・いや、なんでもない。ゴメン朝から」


 これ以上この場で声を荒げるメリットが無いし、クラスメイト達の視線を集めてしまうことを避けたい俺は自分が暴走したことにして謝り先に行こうと踏み出したところで、妹の那月が前に立っていた。


「お兄ちゃん・・なんで?」


「那月、どうかしたか?」


「ううん・・・・コレ、お弁当忘れてたよ」


「マジ? サンキュー那月」


 視線が定まらない那月から弁当を受け取ると、那月は何度も彩音と湊斗に視線を向けてから小走りに自分の1年生の教室がある方向へと消えていく。


 今朝は変な那月だと彩音は呟きながら、3人一緒に廊下を歩き教室へと向かう途中で俺だけクラスが違うため彩音と湊斗と別れ自分の教室に入る瞬間に足を止め2人に視線を向けると、俺という邪魔者がいなくなったかのようにグッと距離感が近づいたかのように見え教室へと入っていく光景に動揺し、頭をドアにぶつけてしまった。


「いっってぇ・・」


 大きな音を出し痛がる俺の姿を見たクラスメイトは笑いながらも心配してくれるため、平気だと言いながら右手を上げつつ窓際にある自分の席に座ると、僅かに遅れて教室に入って来た親友がニヤついた顔で絡んでくる。


「諒太〜朝から腰砕けになるほど元気だったのか〜?」


「アホか太一? そんなわけねーだろ!」


「あんな美少女が彼女なら、俺は毎日でも・・んむ」


 目の前にいる太一のムカつく口に、洗った記憶の無い体育館シューズのつま先を押し込み黙らす。


「ぷはぁっ・・諒太に穢された・・」


「黙れ、この変態不審者」


 高校入学して彩音と初めて違うクラスになり、必然的に学校での会話が減り太一との会話が増えていたことで充実していた俺は、窓の外を眺めながら今朝の2人の姿を思い出すも同じクラスだから彩音と湊斗は会話が増え前より仲良くなったんだろうと納得させた俺は、午前中の授業に意識を集中し楽しみにしている昼休みを迎えた。


「諒太〜俺と一緒に、購買行こうぜぇ〜」


「今日はパス。弁当あるから」


「マジかー!? 諒太のせいで、2分もロスした!」


 激戦地と呼ばれる昼休みの購買に太一は孤独に飛び込む運命のようで、もう2分も教室でロスした学生には高額の売れ残りパンが優しく出迎えてくれるだろう。


「・・終わったな太一」


「うるせー! 諦めたら、そこでなんちゃらだ!」


 言えてない名セリフを叫びながら太一は教室から急いで出ていく姿を見送る俺は、那月が渡してくれた弁当をカバンから取り出し、自販機でお茶を買うついでに隣りの教室にいる彩音を一緒に昼飯を食べようと誘いに行く。


「彩音〜! 一緒に昼飯でも食べ・・・・」


 たまに行く彩音の教室の開いたままのドアを覗き込み、待っているだろう彩音の席に顔を向け声をかけた先の光景には、湊斗と向き合って仲良く弁当を食べていたことに途中で言葉を失った。


「りょうちゃん・・・・」


「おー! 諒太も一緒に食べようぜ!?」


 2人の反応は両極端で、彩音は戸惑いを見せ表情が暗く湊斗はいつもの笑顔で俺を誘い、並べる弁当箱の横には同じ銘柄の麦茶のペットボトルが置いてある。


 そんな予想していない光景に胸がギュッと強く締め付けられ苦しい俺は、彩音を自販機へと誘うこともできず逃げ出したい理由を正当化したような言葉を吐き捨てた。


「いや、もう先に食べてるなら良いよ・・ゴメン。もう、いいや」


「待って! 諒ちゃん!!」


 開いたままだったドアをピシャッと彩音の言葉を遮断するかのように閉めた俺は、廊下で呼び止める彩音の声を無視していつも利用する自販機には向かわず、教室棟から離れた体育館近くにある自販機へと自然と足が向いていた。


「はぁ・・俺って、なんなんだろうな」


 財布から小銭を取り出し、あの2人が飲んでいた麦茶の隣りにある緑茶のペットボトルのボタン押し手にしてから、周りに誰もいないベンチに座り昼休み中にグラウンドを整備する女子ソフトボール部員を眺めながら、ボッチ飯を久しぶりに堪能したのだった・・・・。


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