兄妹という日常の違和感とは違う戸惑い
アクセスありがとうございます。
「はい・・」
「お届け物です」
リビングにあるモニターのスイッチを押し訪問者を見ると、緑系のユニフォームを着た若いお兄さんだった。
「今行きます・・」
そう言ったものの印鑑が見つからず、仕方なく長く待たせるわけにはいかないため探すのを諦めて玄関ドアを開けた・
「すいません、印鑑が見つからなくて・・」
「そうですか、澤田諒太さん・・ご本人ですか?」
「そうですね」
「でしたら、ここに受け取りのサインで大丈夫です」
宅配のお兄さんのペースのまま伝票下の枠内にサインをして、手のひらサイズより少し大きい箱を受け取ると、お兄さんは爽やかな笑顔で立ち去りトラックに乗って走り去って行く。
「・・俺宛の荷物ってなんだ?」
リビングへと戻り受け取った箱を開けると、壊れたスマホと同型のスマホが入っていた。
「これって、カード差し替えたら使えるんじゃ・・」
急いで部屋へと戻り壊れたスマホから小さなカードを抜き取り差し替え電源を入れた後で、運良くデータ移行ができたようだ。
「すげぇ着信とメールだ・・・・」
新しくなったスマホの待ち受け画面には、那月と両親そして彩音と湊斗と表示される人物からも履歴が残っている。
「誰だ? 彩音と湊斗・・・・思い出せないな」
この2人の名前を見て思い出そうとすると酷い頭痛に襲われ気持ちが悪くなったため諦めた俺は、両親が仕事から帰って来る時間まで何もする気にはならず、ベッドで横になっていると夕陽が沈む前ぐらいに誰か帰って来た音が聞こえる。
1階でバタバタと忙しく動き回る足音は全ての部屋を移動しているような感じで、その後は階段を上がり近付く音が聞こえガチャッと部屋のドアが勢い良く開かれた。
「お兄ちゃん!!」
「な、那月さん・・ノックは?」
「ただいま!」
「おか、おかえりなさい」
制服姿の那月さんは、そのままベッドへと飛び乗り寝転んでいた俺の上に乗ってきた衝撃でベッドが深く沈み大きく揺れると、妹の那月さんと身体が密着し柔らかい感触が全身に伝わる。
「那月さん? ちょっと色々と問題が・・・・」
「お兄ちゃん!? 那月・・なーつーきー!」
「はい?」
「だーかーらー! 那月さん? じゃなくて、那月! なの・・」
「・・那月」
「おにぃちゃ〜ん!!」
年頃の兄妹でこの距離感はアリなのかと思うぐらい近過ぎる距離感に戸惑っている俺のことなんて気にせず胸元に顔を埋めてグリグリ押し付けている姿を見ていると、無意識に彼女の頭を撫でてしまった。
「ん〜お兄ちゃんだぁ〜」
妹の那月の頭を撫でたことに間違いはなかったようで、とりあえず一安心していると身体に乗っていた那月はゴロンと壁と俺の隙間に入り込み添い寝するカタチになった。
「那月さん?」
「なつき・・」
「那月」
「なぁに?」
「近くない?」
「なにが?」
「いや、それはその・・」
「変だよお兄ちゃん」
兄の部屋のベッドでこんな状況に何も感じない那月はどうしてだろうと思いつつ彼女が離れる理由を探し告げる。
「制服・・制服がシワになっちゃうよ?」
「いいの。他にもあるからぁ・・お兄ちゃんの隣りで横になっていると、眠くなってきちゃった」
「え? 冗談だろ? 那月??」
「ん〜」
那月はクリッとした瞳を細めては、ついに閉じて寝ようとしている。
「だ、ダメだぞ寝たら・・那月?」
一瞬だけ触れることを躊躇った右手を伸ばし肩を揺らすも、那月は起きることなく壁側に寝返り小さな背中を向けてしまう。
「・・・・・・マジかよ」
部屋に乗り込まれ飛び乗って来た時からチラチラ見えていた水色のパンツは、今では短いスカートがペロッと捲れ無防備になっている。そんな光景を終わらせるためスカートの端っこを掴みゆっくりと隠した瞬間にパシっと手を掴まれてしまった・・・・。
「お兄ちゃん?」
「いや、コレはその・・・・」
「なんで隠すの?」
「へっ?」
「そこは、禁断の愛に進むとこだよバカ兄・・」
「・・・・」
那月は顔を赤くしながら勢いよく部屋を出て行き、自分の部屋へと戻ってしまい出て来なくなり夜になると両親が仕事から戻り、夕食に時間で母さんが呼びに行ったところで那月は部屋から出て来て4人で一緒に食べ終えた俺は、早めに自分の部屋に戻り寝ることにする。
新しくなったスマホが枕元で初期設定の着信音が鳴り響き、強制的に目が覚めた俺は反射的に右手でスマホを手に画面を見る。
「なんだよ、いきなり・・・・」
画面には、彩音という人物から着信と表示されている。
「彩音? まだ朝の6時なのに常識が無い人だな」
名前を見ても人物像が浮かばない俺は、サイレントモードにして枕元にスマホを置き二度寝をしようと思うも、バイブで震えているスマホがしつこいため目が冴えてしまう。
「起きるか・・」
部屋を出てリビングへと向かうと、那月は制服姿で朝飯を食べている途中だ。
「おはよう、お兄ちゃん。起きるの早いね?」
「おはよう、那月。さっき、彩音って人から電話があって起こされたんだ・・」
「橘先輩から? 何か話したの?」
那月のクリッとした瞳がスッと僅かに細くなった瞳に胸がドキッとする。
「いや、さすがに知らない人からの電話は出ないよ・・しかも、早朝にさ」
「だよね・・さすが、お兄ちゃん。あっ・・もうこんな時間だ!」
那月はテレビから聞こえる時間を知らせる声に反応し、慌ただしく朝の支度を済ませ玄関へと向かう。
「お兄ちゃ〜ん!」
「どーした?」
玄関で急に俺を呼ぶ那月の声に俺は反応しリビングから玄関へと向かう。
「お兄ちゃん、まだ学校に行かないよね?」
「学校に? 一応、明日から行こうかと思ってる」
「明日から? わかったよ。明日から一緒に行こうね?」
「あぁ、一緒に行こう」
「やったね! 歩いて行くから、少し早起きだからね?」
「自転車通学を母さんにダメッて言われたからなー」
「そだよ〜!? 行ってきまーす!」
「気をつけてな」
「うん!」
那月は笑顔で手を振りながら玄関ドアを閉めて学校へと向かって行った。家に1人残った俺は、学校を休んでいるため予定が無くすることがないため、とりあえず着替え目的の無い散歩へと出かけることにしたのだった・・・・。
感想評価ありがとうございます。
次話からまた物語が進んでいきます。
彩音と湊斗の関係、そして香苗さんとのことも那月のブラコンは
本物なのでしょうか・・裏があるかもですね。
よかったら、評価と感想お待ちしています。