学校という日常に割り込んでくる違和感
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三原先生と長い廊下を歩き、見渡しても誰もいない4階にある生徒指導室へと連行され、長テーブルを挟んで三原先生と向かい合い座らされた。
「「 ・・・・ 」」
「澤田くん、連休初日のあの日の体育館で起きたことなんだけど」
「吉岡と橘のことですね?」
「そうです・・今朝、先生は・・橘さんと吉岡くんの2人から、話を別々に聞きました」
「そうですか」
「あの2人は、なんて言ったと思う?」
「何をですかね・・何もシテないと言ったんですかね?」
「・・・・吉岡くんは、橘さんと中学2年生から付き合っていたと」
「はぁ!?」
三原先生が言っている意味がわからなかった。
「それにね、後から聞いた橘さんも同じことを言ったの」
「ど、どういうことですか? さっぱりわからないんですけど・・あの2人は中2から既に付き合っていたと?」
「そうよ」
「待ってください先生。俺とあや、橘は高1から付き合う関係になったんですよ・・でも、あの2人は中2から付き合っていた・・っということですか?」
「えぇ、そうなるわね」
「そんな・・俺っていったい・・」
もう彩音との関係を昨日の夜で切った俺は、三原先生の前ではまだ彼氏という立場のフリをして反応することにした。
「澤田くん、どうする?」
「どうするって・・そう言われてもですね・・」
三原先生から突き付けられた2人の言葉にショックを受けたことにして力無く俯きも、このままでは俺が悪者で終わってしまうことにどうしようか考える。
「でもね、澤田くん」
「・・はい」
ゆっくりと顔を上げると三原先生は俺を責めているような雰囲気ではなく、どこか柔らかい表情をしていた。
「吉岡くんと橘さんの2人が嘘をついていることを先生は、知っているの」
「どうしてですか?」
「それは、先生が先生だからなの」
「・・・・」
相変わらず今日の三原先生の意図がわからず反応ができずにいると、急にニコッと笑いながら部屋のドアを見て椅子から立ち上がり、足音を立てずドアへと歩み寄り一気に開放した。
「澤田さんは、大好きなお兄さんが心配で授業をサボっているのかな?」
「はわわわ・・・・ごめんなさい先生」
開けられたドアの向こうに、ペタンと座り見上げる那月の姿があった。
「澤田さん、お兄さんのことが気になっても盗み聞きは関心しませんが、今回は不問にしましょう」
「あ、ありがとうございます。では、私は帰ります」
「澤田さん待ちなさい。今の授業はたしか、幸田先生だったかしら?」
「そうですが、よく知っていますね」
「それならサボっても大丈夫です。幸田先生は、よく授業が脱線してばかりと聞いていますからね? 早く部屋に入って」
「・・・・はい」
那月も生徒指導室に入ることになり、俺の隣りに借りてきた猫のように大人しく座る。
「うんうん。お兄ちゃん想いの妹さんで、なんだか先生は嬉しいです」
「「 ・・・・ 」」
「コホンッ・・では、これから2人にだけ先に伝えておきます」
「「 はい 」」
「午後の職員会議は、あの2人が体育館にある部室で行った問題行為が議題となります。そして、コレを起案したのは私です・・特に澤田くんは後日呼ばれるかもしれません。今日は、このことを伝えたくてこの部屋に来てもらったんです」
三原先生から呼ばれた理由に納得した俺は、那月と共に解放され生徒指導室から出て教室へと戻る。
「那月、午後も授業あるのか?」
「うん、今日からもう7限まであるよ。お兄ちゃんは、もう帰る?」
「いや、帰らないよ。那月と昼飯食べたいから」
「本当にいいの?」
「あぁ、1人で食べるより、那月と一緒の方が良いからな?」
「ありがとうお兄ちゃん。でも、お昼休みまでまだ時間あるよ?」
「そっか・・外に居ても目立つから、昼休みまで教室にいるかな」
「ゴメンね、お兄ちゃん。終わったら教室に行くから待ってて」
「待ってるよ。那月が来るまで」
廊下を歩いている途中でチャイムが鳴り、教室から次の授業のため教室から出てくる3年生とすれ違い、ここで那月と別れることにする。
「また後でな」
「うん。またね、お兄ちゃん」
階段を降りて1年生の教室へと戻って行く那月を見送ってから、誰もいない自分の教室へと入り席に座り静かな教室で1人外を眺め青空を見ていると、不意に胸騒ぎがした直後にガラッとドアが開かれ顔を向けると彩音と視線が重なってしまった。
「・・諒ちゃん」
教室には入らずドアの所で俺を呼ぶ彩音を無視しておこうと思うも、仕方なく席から動かず反応だけはする。
「なんか用か彩音? アイツと一緒に帰ったんじゃないのか?」
「だから違うの・・入っていい?」
「ダメだ。アイツに勘違いされて面倒になる」
「勘違い? なんで?」
「教室に湊斗待ってるんだろ?」
「いるよ。同じクラスだから・・・・」
「同じクラスだから・・・・か。なぁ、彩音?」
「なに? 諒ちゃん」
「俺が彩音にあの日にさ・・告白してOKして付き合い始めてから、そろそろ1年だよな?」
「うん、そうだよ諒ちゃん」
「だよな・・でも、湊斗とは中2からなんだろ?」
「・・・・」
彩音は瞳を潤ませながら大きく見開くだけで、特に反応を見せない。
「彩音? 別に俺は、彩音を責めてない。ただ、純粋に湊斗といつから幼馴染から先の深い関係になったか知りたいだけ・・・・」
彩音は俺の声が届いているはずなのにとても遠くにいるようで、俯き顔を見せてくれず時間だけが過ぎていく。そんな彩音の姿を座ったまま見ていた俺は立ち上がり、俯いたままの彩音の一歩前で止まり口を告げる。
「うん、そっかそっか・・もちろん、俺が悪いところもあった結果だと思ってる。だからさ、本当に別れよう俺たち。幼馴染としても」
ビクッとして見上げる彩音の顔をみてから俺は、黒板側のドアへと彩音に背を向け歩き出す。
「諒ちゃん、待ってよぉ・・私の話を聞いてください」
「聞くよ、今は無理。またそのうち話を聞かせて」
涙声で名前を呼び続ける彩音に背を向けたまま歩きドアに手をかけた所で校内放送が流れた。
・・2年C組の吉岡湊斗、同じく橘彩音の2名は、直ちに職員室まで来なさい。繰り返す・・」
「彩音、先生が呼んでるぞ?」
「・・・・」
「彩音〜呼び出しだとよー彩音?」
廊下から彩音を探す湊斗の声が聞こえるも彩音は動かない。俺の教室にいるそんな彩音を廊下を歩く湊斗が見つけたようだ。
「彼氏が呼んでいるから、もう行けよ」
動かない彩音を突き放すため廊下にいる湊斗を彼氏と呼び、俺は廊下へと出て右にいる湊斗を見る。
「おい湊斗! 大事な彼女を野放しにしとくなよ!」
「諒太! なんだよお前は! 彩音はな・・」
「もうたくさんだ湊斗! いや、これからは吉岡くんと橘さんだ。もう、俺は用事があるから帰る!」
2人に背を向け歩き出す俺は、まるで逃げるかのようでなんだかイライラするけど、あのまま2人と顔を合わせている方が危ないと納得させ廊下を歩いていると、向こう側から那月が俺を見つけて笑顔で走ってくる姿にイライラはいつのまにか消え去っていたのだった・・・・。
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