デートの帰りに起きた違和感
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シャトルバスに乗り込み彩音と2人で新しいショッピングモールへと向かい、中央入り口らしい場所の近くで降りてから中に入ると吹き抜けで6階フロアまであり見上げる。
「CMで見たけど、実際に来た方が広く見えるね〜」
100店舗近くあるらしい出店数を誇り、地方最大のショッピングモールは思ってた以上に圧巻だった。
別に何かを買いに来た目的は無くただ彩音と2人で歩く時間を過ごしても、既にできている見えない壁は崩れことなく微妙な距離感を作り、それを感じている俺はやっぱり湊斗に負けた幼馴染なんだと突きつけられている。そんな彩音と過ごす時間が、こんなにもつまらないなんて。
彩音から意識が離れながらも中身のない会話を交わし歩き店内を見渡していると、彩音が気になるショップを見つけたようだ。
「諒ちゃん、あのお店に入っていい?」
「いいよ・・ぉ」
彩音とは違う方向を見ていた俺は視線を戻しながら即答し、彩音が指差す方向にある店へと視線を向けた途端に足が止まった。
「恥ずかしかったら、外で待っててもいいからね?」
「ぉ・・おう。ゴメン」
彩音は水着が並んでいる店へと入って行き、高2男子には別世界過ぎてハードルが高すぎる店だった。でも、大学生だろう男の人は、彼女と手を繋ぎ普通に入って行く後ろ姿に大人だなと思い見送り待つことにする。
店の前を行き交う人の邪魔にならないよう吹き抜け側の透明なアクリル板にある手摺りに背中を預けながらスマホのゲームをしている俺は声をかけられて顔を上げる。
「諒太〜」
「湊斗・・」
「何やってんの?」
「彩音を待ってるとこ」
彩音が入って行った店に視線を向けると、湊斗は何か納得した顔をする。
「あ〜諒太は恥ずかしくて入れないんだ」
「当たり前だろ? 湊斗は平気なのか?」
「俺は、彼女と普通に入るぜ。諒太は、恥ずかしがってないで水着選びのイベントに参加して、彼女を1人にさせるなよな?」
「・・そのうちな」
「はいはい。まぁ、せいぜい嫌われないよう頑張ってな」
湊斗がいう彼女とは高1から付き合っている伊木さんなのか、それとも彩音のことなのかは聞けないまま湊斗はニヤつきながら人混みへと消えて行った。
「なんだったんだ、あいつ」
途中で放置していたスマホのゲームをやめて店内にいる彩音を見つけた俺は、意を決して店内に入ろうと踏み出すも、彩音は入り口近くにいる俺と視線が重なるとそのまま店の外に出てきてしまい、結果的に出迎えるとカタチになってしまった。
「諒ちゃん、お待たせ」
「大丈夫だよ・・良いの見つからなかった?」
「ん〜可愛い水着があったんだけど、似合わないかもだから今日はやめたんだ・・」
「そっか・・夏が楽しみだな〜」
夏の海を楽しみしているという俺のアピールに対して彩音の応えは薄いままで終わり、そのまま有耶無耶にしてショッピングモールを見回った俺と彩音が外に出た時には、空はオレンジ色に染まっていた。
「諒ちゃん、楽しかったね?」
「楽しかった。久しぶりに彩音とデートしたって感じがするよ」
「うん、そうだね」
駅に向かうシャトルバスに乗り込み、夕陽が綺麗だという丘の上にあるカフェを見ながら決められたルートを走るシャトルバスに揺られ駅前まで何事もなく辿り着く。
「諒ちゃん、電車混んでるかな?」
「連休だから、いつもよりは多いと思うよ」
「だよね〜座れるかなー」
駅の改札口へと向かう人達の背中を追うように歩き、御坂駅に行く電車が停まるホームでまっていると彩音のスマホに着信音が鳴る。
「あっお母さんからだ・・・・もしもし?」
彩音は順番に並んでいた列から離れながらチラッと俺を見て、少し離れた場所に設置されている自販機横で足を止めておばさんと会話している。
そんあ彩音の姿を見ながら彼女が戻ってくるまですることがない俺は、見つめていた彩音から視線を空へと向けて、どこまでも伸びていく飛行機雲を作る飛行機の姿を追いかける。
「ゴメンね、諒ちゃん」
「ん? 大丈夫だよ。なんかあった?」
「あのね、お母さんから夕飯で作る食材の買い物を頼まれちゃったの。だから、御坂駅でお別れでいい?」
「そうなの? 買い物なら一緒に行くよ」
「ううん、大丈夫。なんか急いでるみたいだったから」
「・・急ぎなら仕方ないね。改札口で見送るよ」
「うん、ありがとう諒ちゃん」
両手を顔の前で合わせて謝る彩音を見ながら笑い、ちょうどホームに来た電車に乗り過ごすことなく乗れた車内で、次に会う日を約束して予定通り彩音と御坂駅西口の改札口前で別れた。
「またな、彩音!」
「またね諒ちゃん!!」
頼まれた買い物のため先に帰る彩音の手を振る姿を見送りポツンと1人ぼっちになった俺は、今日のデートで別れを伝えたかったのに出来ず、消化不良の想いを胸に駅前の商店街を目的もなく歩く。
「あら、諒太くんじゃないの? 今日は、彩音とデートだったはずよね?」
「えっ・・おばさんが、なんで商店街にいるんですか?」
「何でって、夕飯の買い物に決まってるじゃないの。変な諒太くんね?」
「あはは・・買い物・・ですよねー」
「そうよ。でも、あの子は何処行ったの? デートが終わるには、まだ早い時間よ?」
「なんか、駅前で部活の先輩と会って、そのまま断れず連れて行かれました・・・・」
「そう? 優しいのね諒太くんは・・おばさんなら、怒っちゃうわよ本当に」
「あはは・・それじゃ、買い物の途中に邪魔してすいませんでした」
「何言ってるの? おばさんから諒太くんに声をかけたんだから・・あんな子だけど、彩音のことよろしくね?」
「はい、頑張ります」
彩音のお母さんは商店街にある地元スーパーへと入って行き、また1人になった俺は彩音がまた嘘をついたことが判明したことに何も込み上げる感情は無く、ただこのまま家に帰ろうと思っていた足はマスターがいるカフェのコンフォダルに自然と向かっていたのだった・・・・。
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まだ日間ランク上位に滞在していることにビックリしています。