デート中に起きる違和感
アクセスありがとうございます。
今日は、日間5位にランクインできました。
「連休だから、朝でも人が多いね」
「うん・・」
電車に先に乗った俺は偶然空いていた席に座り後から来た彩音は左側に座り話しかけるも、もう朝と言える時間は過ぎていた。
隣に座る彩音から新しいシャンプーの香りがずっと感じながら彩音に話しかけるも、どれも彩音の反応は少ない。そんな彼女に対しても俺は、普段通りの諒太を演じきったはずだと思う中で思っていたより早く目的地の駅に電車が停まる。
「彩音、降りるよ」
「うん」
電車を降りて改札を抜けて駅前に出てからも、周囲に人が少ない駅前通りを歩く俺とは並んであるかず、彩音の靴のサイズ分だけ後ろを付いて歩いているため手すら繋げていない。
ここの岩清水駅前商店街の営業中の店はまばらで、ほんの少しだけ賑やかになる時間帯の前に俺と彩音は着いたらしく、どの店も素通りして海が見渡せる場所に辿り着いた。
「良い眺めだね・・流石に泳いでいる人はいないけど」
「まだ4月の終わりだよ諒ちゃん。あそこで浮いてるのは、波待ちのサーファー達だけだよ」
「だよな。階段降りて、砂浜に言ってみようよ」
「うん、夏を先取りだね」
「まだ、4月だけどな」
「知ってます〜」
海から吹く潮風を感じながら波打ち際まで歩き散歩をしている途中で、靴が濡れないよう波打ち際を攻めて、波と追いかけっこを彩音とする。
「もう諒ちゃん、そんなギリギリだと濡れちゃうよ?」
「大丈夫だって、この帰宅部の隠された実力を舐めんなよ?」
「そう言って、成功したこと一度もないよね?」
「・・あるよ? って、おわっ!」
急に波が今まで以上に押し寄せて来たことに焦りバランスを崩してしまう俺は、咄嗟に彩音の方へと大きく右足を踏み込み無意識に彩音に伸ばした右手は直前でサッと避けられてしまい、そのまま重心を戻せず悪あがきをするも間に合わずにそのまま砂浜に倒れてしまった。
「大丈夫? 諒ちゃん、だから言ったのに〜」
「くぅ〜やっちまったー」
付き合い初めの頃や幼馴染という関係だった頃でも、似たようなことが学校で起きた時の彩音は転けそうな俺を支えてくれていた・・でも、目の前にいる彩音は俺が触れようとしまう前に避けて静観するだけに終わった。
この情けない状況を彩音のせいにできない俺は、やはり帰宅部には無謀だったと苦笑いしながら立ち上がり砂を払う。
「はぁ・・」
彩音に背を向けながら少し離れた先にある小高い丘の展望台を見てから、小さくため息を吐き笑顔で振り返る。
「諒ちゃん?」
「彩音、あそこの展望台に行こう」
「え〜遠いよ〜」
「そうか? そしたら、展望台近くにあるカフェに行ってみようよ?」
「カフェに?」
「そう、景色が良いって有名なんだってさ」
「あ〜丘の上にあるカフェで、水平線に沈む夕陽がオレンジ色に海と空を染めて綺麗なんだよね」
「そう・・行ったことあるの?」
「あ、あるの・・友達に誘われて」
誘ったカフェの景色が良い席は、カップルシート専用だからきっと湊斗と2人で行ったんだろう。いつしかの週末に誘った時にクラスメイトの女子と遊ぶと断られた俺は、その約束したクラスメイトと近所の本屋で出会っていたのだから。
「・・また行っても、つまんないよな・・まだ昼前だし」
「そんな事ないよ!? 諒ちゃん行こ! ね?」
思わず湊斗とじゃなくてゴメンなって言いそうにな口を瞑り、下調べしていた丘の上にあるカフェへと予定通り彩音と向かうことになった。
ここから歩いて行くには少し距離があるため、一度大通りに戻り路線バスに乗って丘の下にある停留所で降りてから緩やかに続く坂道を歩いて行きカフェに辿り着いた時には昼飯の時間になっていた。
「今日は、当たりかもだよ? 諒ちゃん!」
「どうゆうこと?」
「さっき出たカップルが座っていた席が、1番人気の席だったもん! もしかしたら座れるかも」
「おぉ・・なら早く行こう彩音」
この良い流れで俺は彩音の左手を握りカフェの入り口ドアを開けて中に入る途中にピクッと少しだけ拒否反応を感じるも強引に歩き進む。
「いらっしゃいませー! 2名様ですね?」
「はい、そうです」
「ちょうど今、当店の人気席が空きましたからご案内しますね」
クルッと軽快に回る女性店員さんの後ろを付いて行き、店内を抜けて海側のテラスへと出ると、雑誌で見た何も遮る物がなく海を見渡せる席へと案内してくれた。
「本当のオススメは、夕陽を見ながら過ごすのが一番なんですけどね?」
「そうらしいですねー」
「はい。こちらがメニューです。お決まりになりましたら、テーブルのボタンを押してくださいね」
そう言い伝えると別の席の客に呼ばれ、営業スマイルで離れて行った。
「諒ちゃんは、カフェオレかな〜?」
「ん〜たまには違うのにしようかと悩んでいるところ〜だけど、彩音は?」
「わ〜た〜し〜は〜コレかな・・それと、ロイヤルミルクティーにするよ」
彩音がメニュー表に指差したのは、イチゴのタルトとロイヤルミルクティーだった。
「ミルクティーだなんて、初めてじゃない?」
「そう? カフェオレと違って、紅茶の香りが好きになったのかも」
「そうなんだ・・俺もロイヤルミルクティーにしてみようかな」
「お揃いだねー」
テーブルの上に置いてある呼出しボタンを押して、さっきの店員さんにオーダーを済ませ待っている時間に彩音と2人きりで話せ過ごす時間が物凄く久しぶり感じていることで、湊斗のことを問いただすなんてやめようかと揺らいでいる俺に、現実はそれを認めてくれないようだ。
「あれ〜? 橘さんじゃん」
不意に聞こえた声に俺と彩音は盛り上がっていた会話を止めて声主に顔を向けると、ここにいるはずのない湊斗が笑顔で歩み寄って来た。
「湊斗・・なんで、お前が?」
「おぉ? 諒太もいたんだ」
ここにいたら悪いのかよと思いながらも、鼻で笑い応える。
「彩音とデート中だからな」
「デート・・ね」
「なんだよ、湊斗?」
俺が何も知らないことをバカにして笑っている顔つきで俺を見下ろしていることにイライラする。
「別に・・デートの邪魔して悪かったな」
「湊斗、お前1人・・なわけないか」
「当たり前だろ? 中にツレがいるんだから」
「ねぇ、吉岡くん・・座ったら?」
「ありがとう橘さん。諒太と違って優しいね〜」
そこはツレがいる席に戻ったらと言うべきところだろと彩音に心でツッコミながら黙ってみていると、湊斗は彩音の隣りに座ろうとするも俺の隣りに座った時に彩音と同じシャンプーの香りが微かにした。
「・・・おんなじだ」
「同じ? 何が同じなんだ諒太?」
「いや、なんでもない・・そういえば、朝に御坂駅前で湊斗を見かけたな」
「俺をか?」
「あぁ、駅前のコンビニで立ち読みしていたら通りを歩くお前を見たよ。なんか、繁華街の方へ消えて行ったけどな?」
「「 ・・・・ 」」
急に彩音と湊斗は黙り込んでしまう。
「ん? なんか変なこと言ったか俺?」
「別に言ってないぞ、諒太は」
「ふ〜ん。そうか・・」
彩音とのデートに湊斗に邪魔されている俺は、なかなか追い返すことができず3人で話していると、あの店員さんが注文した物を運んで来てくれた。
「お待たせしました。ロイヤルミルクティーおふたつとイチゴのタルトです・・あの、お客様は違うテーブルでしたよね?」
新たにいる湊斗を見ながら遠回しに店内の自分の席に戻れと言っているようだけど、湊斗はそう簡単に戻る気はないらしい。
「お姉さん。俺はこの2人と幼馴染なんです。なので、一緒に居ても良いですよね?」
「お客様? ここの席は、カップル限定席なのでお戻りくださいね? 二度は言いませんよ??」
「・・・・」
お姉さんの優しい笑顔から出る無言の圧力に湊斗は秒で屈したようで、素直に席から立ち上がり店内へと戻って行った。
「・・では、ごゆっくりどうぞ〜」
同じ笑顔でも、こんなに違うのかと思いながら言葉には出さず軽く会釈するだけにした。
「ん〜美味しいよ、諒ちゃんも食べてみる?」
「食べたい・・」
「あげなーい」
彩音は最後までイチゴのタルトを俺にも食べさせてくれることなく、幸せそうな表情で食べる姿を俺はミルクティーを飲みながら眺めるだけに終わる。
「ごちそうさまでした〜」
満たされて満足した彩音を連れて会計のため店内に入るも、すでに湊斗の姿は無くそのまま支払いを終えてカフェを出た俺達は、丘にある展望台で景色を眺めながら過ごしお腹を落ち着かせた後に最寄りのバス停へと向かい緩やかな坂を下る。
「諒ちゃん、次はどこ行く〜?」
「次は、最近できたショッピングモールに行こう」
駅前からシャトルバスがあるようだけど、バス停で手を上げたら乗せてもらえるためバス停で少し待っているとシャトルバスが近付いて来たため手を挙げると止まってくれて、俺と彩音は乗り込みショッピングモールへと向かったのだった・・・・。
評価&感想ありがとうございます。
物語の進展まで、もう少しお付き合いしてください。