夜のカフェで会うお姉さんとの非日常の時間
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「りょ・・諒ちゃん」
「彩音・・」
「諒太、帰宅部なのに学校に用事か?」
湊斗は俺と学校で出会い動揺している彩音を庇うかのように話題を俺に振り、俺の意識を彩音から外そうとしている。もちろん無視して彩音に部活はと聞いても、もう終わったと言うだけでとりあえず無視していた湊斗と話しをする。
「なんか担任に呼ばれたから仕方なく、学校に来たんだよ湊斗」
「諒太・・お前まさか、補習か!?」
「はぁ!? ふざけてんのアンタ!?」
急に隣りで大人しくしていた那月が低い声で湊斗を威嚇するかのような態度に湊斗は驚き一歩下がる。
「こっわ・・那月ちゃん、なんで怒ってる?」
「私を名前で呼ぶなクズが!!」
「「 ・・・・ 」」
普段大人しい那月が豹変しキレる態度に湊斗と彩音の表情は固まり言葉を失っているため、兄として俺は妹の那月を落ち着かせるのだ。
「那月、一応あの2人は先輩だから、タメ口はダメだぞ?」
「あっ・・ゴメンね? お兄ちゃん」
低い声から一転して、普段の可愛い声に戻る那月は彩音と湊斗への謝罪ではなく、顔を見上げクリッとした瞳で見つめる仕草が可愛い。
「いいよ・・可愛い妹だからな」
「えへへ・・お兄ちゃん〜」
このまま彩音と湊斗の2人といると、那月が再びキレてしまうと思い立ち去ることにする。
「それじゃ、俺達は帰るよ」
「お、おぉ・・またな諒太」
「・・・・」
「彩音?」
「はい」
「・・信じてるからずっと」
「・・う、うん。私もだよ諒ちゃん」
「諒太、なんだよそれ? 最近そればっかり言うよな?」
「そうか? 気のせいだと思うぜ? また明日な彩音」
「明日ね、諒ちゃん・・バイバイ」
「バイバイ・・・・か」
「????」
不思議そうな顔で見送る彩音を横目に那月と自転車に乗って通学路を走って家に帰った後は、汗ばんだ制服を脱ぎ捨てシャワーを浴びているとリビングでアイスを食べていたはずの那月が浴室に入ってきた。
「お兄ちゃん、那月も〜」
「ちょっ・・那月? まだ兄ちゃんのターンだけど?」
「お兄ちゃんのターンは、秒で終わりだよ。今から那月ちゃんのターンなの。だから早くスッキリしたいんですぅー」
恥じらいもなく浴室に侵入してくる那月は、俺からシャワーを奪い取り無防備な姿に俺は兄としての威厳を保つため逃げるように脱衣所へと避難した。
「も〜逃げることないじゃん〜」
「バカッ・・出るに決まってるだろ?」
「小さい頃から見てる仲だよお兄ちゃん〜」
「小さい頃と年頃の今じゃ、色々と違いすぎるだろ?」
妹の裸を見て男としての反応を見せるわけにはいかず、バスタオルで濡れた身体を素早く拭きラフな部屋着になってから2階の自分の部屋に戻りスマホをイジりながらネットサーフィンをしている途中に彩音からメッセージが届いた。
「クラス委員会でやり残してた作業があったから、部活が終わっても学校にいたの」
「部活終わりに委員会の仕事大変だったね」
「吉岡君と一緒だったのは、同じクラス委員だからなの」
何も聞いていないのに彩音は必死に言い訳のメッセージを送ってくることに、逆に俺が不信感を抱くという考えにならないのかと思いながら適当にメッセージを返す。
「明日も暑くなるらしいから、久しぶりに海に行かない?」
さっきまで返事がすぐに返ってきていたのに話題を変えると、既読のまま10分以上経ってから返事が返ってきた。
「楽しみ! 9時に御坂駅西口に待ち合わせだからね」
「わかった」
場所と待ち合わせ場所を一方的に決められてしまうけど、ここは彩音の意見に同意した俺はスマホを枕元に置いて一眠りして起きた時には、もう外は暗くなっていた。
「やべ・・寝過ぎた」
今日の夜に香苗さんと会う約束の連絡を忘れていて、今からでも間に合うかスマホを手に電話をかける。
「もしもし、諒太です」
「もしもーし、香苗だよ」」
「香苗さん、すいません連絡せずにいて・・・・今からでも大丈夫ですか?」
「うん、バイトもサークルも無いから平気だよ」
「あはは・・よかったら、コンフォタブルっていうカフェで会いませんか?」
「あ〜コンフォタブルだね? 行ったことあるから大丈夫だよ。諒太くん、高校生なのによく知ってるね?」
「はい、バイトが無い日の学校帰りにたまに行くんですよ」
「そーなんだ。今から支度して行くからね」
「はい、待ってますね香苗さん」
「はいはーい」
香苗さんとの電話を終えてから着替えリビングに寄るも那月の姿は無く誰もいないため、そのまま家を出て歩いて待ち合わせ場所のカフェに向かう。
木目調のドアを開けて鈴の音を聞きながら店内に入ると、数人の年配客とカウンター越しにいる白髪混じりのマスターがニコリと笑い出迎えてくれる。
「いらっしゃい。この時間は、珍しいね?」
「そうですね。今日はバイト先の人と待ち合わせてるんです」
低い声でも聞き取りやすいマスターの声に密かに憧れている俺だけど、無理だなと諦めている。
「そうかい、いつもので良いかな?」
「今日は、アイスでお願いします」
「アイスなら、いつもと違う豆にしてあげるよ。席は自由に使ってね」
「はい、ありがとうございます」
ブラックコーヒーが飲めない俺は季節関係なくホットカフェオレを注文していたため、マスターに覚えられてしまったらしい。
学校帰りに座るいつもの席に視線を向けると、見知らぬ女性が座っているため2番目に気に入っている奥の壁際の席に座り香苗さんを待っているとメッセージが届いた。
「お店に着いたよー! 諒太くんは、お店かな?」
「いますよー奥の席にいますね」
「はーい」
・・カランカラン・・
バイト先のコンビニで見る香苗さんはいつもジーパンにシャツかトレーナーという格好なのに、今日の香苗さんは色気のある大人の服装で視線をずっと向けられない。
「諒太くん? どうして私を見てくれないのかな?」
「いや、その・・」
自分の顔が熱くなるのを自覚できるぐらい俺は動揺し、顔を逸らした先の壁のシミを見つめることしかできないでいる。
「お姉さん、悲しいな・・ちゃんとこっちを見てよ諒太くん」
「・・はい」
向かい合って座る香苗さんから逃れられない俺は、ゆっくりと香苗さんへと視線を戻すと前屈みで座っていない姿勢で待つ香苗さんの胸元がはっきり見え固まってしまう。
「えっち・・」
「すっすいません」
釘付けとなったままの視線をなんとか上に向け香苗さんの顔を見ると、彼女の顔も紅潮して瞳が潤んでいてジッと見つめていると先に逸らされてしまい気まずい空気が流れる。
「「 ・・・・・・ 」」
「・・いらしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」
不意に声を掛けてきたマスターに俺と香苗さんはビクッと驚きマスターを見る。
「これは、驚かせてすいません」
「い、いえ・・大丈夫です。ブレンドコーヒーのアイスをお願いします」
「承りました」
ニコッと笑うマスターは、そのまま何も言わずにカウンターへと戻っていき再び2人きりの空間になってしまう。
「あ、あの・・香苗さん」
「はい」
「服、とても似合ってますね」
「ありがとう・・」
「「 ・・・・ 」」
「じゃなくて、今日は諒太くんの話を聞きに来たの」
「そうでしたね・・・・良い話じゃないんですけど。俺には仲の良い幼馴染がいるんです。その幼馴染がですね・・・・」
表情が落ち着いた香苗さんを見ながら俺は、あの日知ってしまった出来事を香苗さんに告白するのだった・・・・。
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