ビシバシ、所によりあまあま
コロナから回復しかけてるけど声が戻らない
痰?
連中は無様にも消え去って行ったよ(ティッシュの山)
「ほらそこ!顎を上げる!」
エゼルカがケンゾウの僅かに間違ったマナーに対して容赦ない激を飛ばしていた。
「エゼルカ、もうちょっと手加減をだな…」
「しません。今度ばかりは逃げられませんよ」
(全く、とんでもない嫁を持ってしまった)
「ヨシムネとキャロラインはそこでお茶でも飲んで、ゆっくり休んでおきなさい」
「なんか扱いが違くないか!?」
ケンゾウは不満の声を上げる。
「おだまりなさいな。貴方は一家の大黒柱にして一端の商会主」
「対して、ヨシムネとキャロラインはまだ子供とメイドですよ?」
「どちらのマナーを重点的に鍛えるか、残りの時間を考えれば明白です!」
「流石は我が妻…!なんて合理的かつ容赦のない判断力だ…!」
「と、いう訳ですから覚悟なさい!」
「ハイ、ワカリマシタ」
ヨシムネはエゼルカに扱かれるケンゾウの姿を尻目に、キャロラインと一緒に茶を啜る。
(ごめん、父さん…僕は何も出来ないんだ…!)
一方キャロラインは我関せずで茶を飲み干していく。
(このお茶おいしい!!)
「そう言えば、ヨシムネ様」
「?」
「今日は家庭教師のアナト先生はいらっしゃらないのですね」
「あー…アナト先生には母さんの方から休暇を出して貰ってるからね」
「普段は敷地の一角の離れにある研究室を使っているけど、今日は街に出るかフィールドワークに行っていると思うよ」
「ふぃーるどわーく???」
「山や川、海辺とか平原とか遺跡とか色んな場所で、生物や鉱物のサンプルを採集したり観察して記録を残す事だよ」
「食えない物を採ったり観察して何が楽しいんでしょうね…?」
「学者は個人的な依頼や繋がりで動いている事が多いから色々あるんだろうね…」
「それを専門にしている学者もいる位だしね。冒険者も兼業でやっていたりするって」
「ふ~ん…でもそう言えば元軍人の冒険者がそんな事言ってたような…」
(軍とも仕事している学者は居るけど、多分キャロの事だから気にも留めて無いだろうな…)
「もちろん商会お抱えの学者も居るんだ。それがアナト先生みたいな人だよ」
「ふ~ん…」
「彼女は通常の奉公人や護衛とかその場その場で雇われる冒険者とは違って、契約形態も特殊なんだ」
「へーぇ…学者サマともなると色々と違うんだねぇ」
「まず、契約期間に定めが無いんだ」
「うえっ!?ソレ本当なんですか??」
「本当だよ」
「ちょー安定してるじゃん…いいなぁ…」
「実はそうでも無いんだよ、キャロ」
「へっ?」
「彼等はその専門的知見とスキルを活かして雇用主に対し、常に成果を上げ続けなければならないんだ」
「それに王国の一般的な解雇規制の対象外なんだ」
「だから、一般的に思われている程、楽ではない商売だと思うよ」
「それに幼い頃から勉強に勉強を重ねてきているんだ。その苦労は並大抵じゃないと思うよ」
「自分はパスかな~…あはは…。とても毎日勉強なんて出来そうに無いや」
「そう?アナト先生はキャロの事を褒めていたよ」
「えっ?なんでですか!?」
「物覚えと勘がとても良いってさ。特に空間認識能力が高いって」
「えへへへ~…今度余分にお菓子差し入れてあげようかな…」
(単純でかわいいなぁ)
二人で和やかに会話していると、汗だくの男が二人の間に割って入って来た。
「助けてくれ!ヨシムネ!キャロライン!妻の指導に火が付いてしまった!」
(父さんのケツにも火がついている気がするけど…)
「あ~な~た~?」
「お慈悲を~!」
エゼルカはケンゾウの襟首をつかむと部屋の奥へと引き摺って行った。
「…」
「…新しいお茶淹れますか?」
「…うん。お願い、キャロライン」
学者は今で言うフリーランスや外資コンサルや特定派遣みたいなものです
国の機関に属していたり、個人で好き勝手やっている実家が太い学者とかも居ます。
税金の支払いとかめんどくさそうな職業ですね