後編 それは、キット気のせいよ!
藤乃 澄乃様主催の
『バレンタイン恋彩企画』参加作品です。
バレン・タインデイ当日。
放課後になり、私はマリとミリィと友チョコの交換を終えて、一人中庭のベンチで休憩をしていた。
二人は、意中の相手に本命のスイーツを渡しに行っている。
ここからが、彼女達の本番だ。
今回のイベントの開催に学園側は協力的だった。
調理室の貸し出し、放課後の学園内利用などなど。
私のイベントの提案理由を聞いて、何か思う事があったみたいだ。
気になって調べてみると、学園卒業後の恋愛結婚率が年々低くなっていた。
学園の中でだけ自由に恋愛を楽しむ人。
マリのように、好きな人とどうやったら親しくなれるのか分からない子。
ミリィのように、キッカケがなくて素敵な人と話す事も出来ない子。
理由は様々だ。
そもそも、学園で恋愛結婚を推奨しているのに、その下地が何もなかった。
卒業後相手がいない場合は、ほとんどが親の決めた人と結婚する事になる。もちろん学園が否定している政略結婚だ。
でも、家を守る為には仕方がないことだった。
だから、今回のバレンタインイベントが成功すれば、今後イベントの重要性が学園でも検討されるだろう。
「エレナちゃん、ここにいたんだ」
「ひゃっ?!」
「ごめん、驚かせちゃった?」
青空の中の雲を見ながら考え事をしていたので、背後の人影に気が付かなかった。
振り返ると、サージス・スワリエ侯爵令息が立っていた。
彼は、スワリエ侯爵家の次男で二年生だ。
スワリエ侯爵家の領地はクロニア男爵家の隣の領地で、私も父と一緒に何度か行った事がある。その時、サージスにも会っていた。
学園に入って久しぶりに再会したけど、最後に会った時よりずいぶん大きくなって、綺麗な顔立ちに男らしさが加わっていた。
それと、白銀の髪と真紅の目は変わらず綺麗だった。
彼は私の隣に座って話し出した。
「そういえば、イベント企画したんだって? 面白そうだよね、僕も参加したかったなぁ」
「ごめんなさい、女の子がメインのイベントだったから」
「そうなんだ、じゃあしょうがないね」
彼がとても悲しそうな顔をするので、私は多めに作っていたチョコの袋を取り出した。
「これ、チョコレートなんだけど、よかったら貰ってくれる?」
「いいの? 嬉しいよ!」
彼の悲しそうな顔が、一転輝く笑顔になった。
喜んでくれて良かった。
「あれ?メッセージカードが付いてる」
「友達と一緒にチョコレートを型に流して手作りしたの、メッセージは昨晩色々書いてランダムに貼り付けたから、それに何が書いてあるのか分からないんだけど」
友達に渡すからと、深夜テンションであれこれ書いた気がする……。あれ?渡しても大丈夫だったかな?
「あーうん、素敵なメッセージありがとう。家宝にする」
「え?何て書いてあったの?」
「内緒。それよりさ、これ貰えて嬉しいんだけど、お返しする日はないの?」
何か誤魔化された気がするけど……、そんな事より!
私は思わず彼に詰め寄った。
「サージス!素敵な考えね。いいと思うわ!男性が告白の返事とお返しをする日を作るのね」
「そうだね、男女にかかわらず、バレン・タインを告白する日にして、後日返事をする日があるといいかもね」
「なるほど、男性にも告白する権利は必要ね。今年はもうバレン・タインは終わってしまうけど、次があれば考えてみるわ。えぇと、お返しをする日の名前は何がいいかしら?」
「なんだろうね?」
彼が首を傾げた時、サラリと白銀の髪が私の顔に触れた。
ずいぶん近づいてしまっていたみたいだ。
恥ずかしくなって、彼の側から離れようと思った時に閃いた。
「サージスが発案してくれたイベントだから、貴方の綺麗な髪色にちなんで、『ホワイト』デイなんてどうかしら?」
「いいね、なんか僕も参加できたみたいで嬉しいよ」
そう言って彼は微笑んだ。とても暖かい笑顔だった。
そして、一ヶ月後の三月十四日に向けて、ホワイトデイを企画する事にした。
マリとミリィが笑顔で私に飛びついて来るまで、時が経つのも忘れて彼と企画について話し合った。
私の顔が少し赤くなっていたって?
それは、キット気のせいよ!
読んでいただき、ありがとうございました!
無事バレンタインデイとホワイトデイを作る事ができました。
サージスの髪色白銀にして良かった。
偶然の産物です。
次回別視点で完結です。
今日中に更新します!