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前編 その恋、私が応援いたしましょう

藤乃 澄乃様主催の

『バレンタイン恋彩企画』参加作品です。



 ここは王立ストアール学園。


 この学園は "貴族平民、学園内では、みな平等"の理念のもと、現国王発案で設立された学園だ。

 親が決めた子の望まぬ政略結婚を否定し、恋愛結婚を推奨している。


 そんな通称恋愛学園に通う、エレナ・クロニア男爵令嬢は悩める少女達の話を聞いていた。



「私は好きな人がいるんですが、なかなか告白できなくて」


「みな平等に恋愛できると言われても、どうすればいいのか分からないんです」


「マリは好きな人がいるのね」


「はい!隣のクラスのラクアス様が好きなんです。何度かお話させてもらった事はあるんですが、親しくなるにはどうしたらいいのか分からなくて」


「なるほど……。ミリィは好きな人はまだいないの?」


「はい、素敵だなと思う人はいるんですが、話すキッカケがないので、遠くから見ているだけです」



 ーーみんなキッカケが欲しいのね。

 エレナはクラスメイトをランチに誘い、クロニア男爵家が王都に出店しているスイーツ店の新商品の試食をしてもらっていた。


 今回のターゲットは平民層。

 庶民向けの価格で質の良い商品を提供する為に、新たにオープンした『タインスイート』の新商品。

 だから花屋の娘マリと、雑貨店の娘ミリィに試食をお願いした。

 一通り試食した感想をもらった所で、マリが恋愛相談を始めたのだ。



「キッカケね……。もし、今試食してもらったスイーツを可愛くラッピングして好きな人に渡して告白する。みたいなイベントを企画したら、みんな利用してくれるかしら?」


「参加したいです!イベントになれば、告白しやすいと思います」


「素敵なイベントですけど、面識のない人にいきなり告白する勇気はありませんね」



 マリは告白したい相手がいるので乗り気だが、ミリィはまずは知り合う所からなので告白は難しそうだ。



「では、恋愛の告白だけじゃなくて、知り合いになりたい、友達になりたい、など色々な意味をもたせてメッセージカードで想いを伝える。なんてどうかしら?」


「いいですね!メッセージカードを添えるなら、両親や先生、お世話になった人に、普段なかなか言えない感謝の気持ちを伝えるのにも使えそうです」


「お友達になりたい女の子同士で、スイーツ交換できると、交友関係が広がるキッカケになるかもしれません」



ーーそれなら、貴族でも需要があるかもしれないわ。

 エレナは彼女達の話を聞いて、貴族向けの店舗と合同でイベントを開催する事を決めた。


ーーその恋、私が応援いたしましょう。




 クロニア男爵家からの許可はすぐに出たので、エレナは各店の代表と会って話を詰める。

 チョコレート菓子をメインに、クッキーやカップケーキをデコレーションして可愛くラッピングした物も売り出す事にした。



 高級店『バレンスイート』は、貴族のお嬢様がお小遣いで買える物から、奥様方がお茶会に出せる品まで揃えた。


 庶民向けのお店『タインスイート』は、子供のお小遣いで買える物から、ちょっと特別感のある物を手頃な価格で揃えた。

 それと、チョコレートを溶かして好きな型に入れて自分で作れる物も、型と板チョコなどをセットにして用意した。


 ただし、渡す相手が貴族令息の場合は、よほど親しくなければ手作りの食べ物は、安全性の問題で受け取ってもらえないので、友達同士で交換するのがお勧め。と注意書きしてある。


 各店舗の宣伝と、学園内での口コミでかなり情報が広まった。

 イベントの開催日は、一週間後の二月十四日。

 前日、当日は予約商品の販売のみで、すでに注文が殺到していた。




 今日は、中庭のテーブルでランチをしながら、三人でチョコレートを作る打ち合わせをしていた。



「前日に、学園の調理室の貸し出し許可をもらいましたわ」


「エレナ様ありがとうございます。チョコレート作る場所がなかったんです」


「マリは寮で生活しているからね。私は家でも作れるけど、やっぱり友達と一緒に作りたいです」


「友達……。そうね、マリ、ミリィ、貴方達はいつまで『エレナ様』と呼ぶのかしら。私達お友達でしょ?『エレナ』って呼んでほしいわ」


「エレナ……って呼んでもいいの?」


「本当ですか?」


「ふふふっ、もちろんよ!私も二人の前では、普通に話していいかな?男爵令嬢っていっても、田舎育ちだから都会のご令嬢言葉は疲れるのよ」



 急に話し方を変えて無邪気に笑うエレナを見て二人は同じ事を思った。ーーエレナ、可愛い。


 美人な貴族のお姉様風から、いきなり可愛らしい少女に戻ったエレナのギャップに二人は手で顔を覆った。



「ミリィ、普段の彼女も素敵だけど、これは天然人タラシだよね?」


「そうね、仲良くなると、可愛らしい笑顔が見れるのね。ご褒美かな?」


「?」



 二人が何の事を言っているのか、よくわからない。

 エレナはキョトンとした顔をして首を傾げた。


 その時、離れた席で椅子が倒れて二人ほど地面に崩れ落ちていたが、彼女達は気づかなかった……。




 イベント前日、三人は調理室でチョコレートを作っていた。


 もちろん調理室は三人だけではない。チョコレートを手作りしてみたい女の子達で溢れていた。

 湯煎で溶かして、型に入れて、冷やして、型から外す。

 簡単なので、普段料理をしない貴族のお嬢様達もチャレンジしていた。

 可愛くラッピングして一度持ち帰り、メッセージカードを書いて明日渡すのだ。



「そういえば、イベントの名前は何にしたの?」


「それ気になってた!」



 ミリィとマリの問いに、エレナは笑顔で答えた。



「スイーツ店の名前を取って、『バレン・タイン』デイよ!」

途中店名で気づいたかと思いますが。

まずは、この世界にバレン・タインデイを誕生させてみました。


実は、なろうラジオ大賞3投稿作品

『 お菓子を拾っただけなのに… 』


とも世界が繋がっているので、元々バレンタイン流行らせる気でいた所でまさかの企画。


もう参加するしかないですよね(°▽°)


読んでいただき、ありがとうございました!


次回2/2更新予定です。

だんだん甘くなります(*´∇`*)

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― 新着の感想 ―
[一言] 企画より参りました。 >「スイーツ店の名前を取って、『バレン・タイン』デイよ!」 なるほど、そうきたか! といった感じです。 異世界に記念日を誕生させるところから始まるのですね。 これ…
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