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婚約破棄系1

彼女は罪人? それとも……

作者: ひつじかい

 デルフィーヌは、自身を殺そうとしたエマニュエルの処刑を、先程恋人と共に見届けた。


(わたくし)は、無実です!』


 最期まで罪を認めなかったエマニュエルだったが、そんな人でも命を奪われるのは後味が悪い。

 聖女であるデルフィーヌを殺そうとした当然の報いだと、恋人のエドワールは言ったが、庶民として育ったデルフィーヌには、処刑はやり過ぎのような気がしてならなかった。


「エドワール様。暫く独りにして貰えませんか?」

「構わないが。……どうかしたのか?」

「……少し、疲れただけです」

「そうか」


 何となく、エドワールには解って貰えないような気がして、デルフィーヌは誤魔化した。



 独りになって暫く経った時、デルフィーヌはふと視線を感じて振り返った。


「?! エマニュエル様?!」


 其処に処刑された筈のエマニュエルの姿を見て、デルフィーヌは恐怖に青褪める。


「エマニュエルは、姉ですわ」


 しかし、そう否定され、よく見れば、其処まで似ていない事が判った。

 遠目で見たり・ぱっと見だったりでは、間違えてしまうだろうが。


「そうですか。失礼しました」

「間違えるのも無理はありませんわ。化粧の仕方によっては、もっと似ますもの」


 その目がデルフィーヌを嘲笑しているように見えて、嫌な感じがした。

 これから、酷い事を言われるような。


「エマニュエル様の処刑の件で、わたしに仰りたい事があるのですか?」

「ええ」


 姉が処刑されたのはデルフィーヌの所為だと、責めに来たのだろう。

 彼女はそう思ったが、そうではなかった。


「お礼を言いに参りましたのよ」

「……お礼? ですか?」

「そうです。(わたくし)の代わりに、姉を処刑してくださってありがとうございます」

「……え?」


 デルフィーヌの脳は、理解を拒んだ。

 何を言っているのだろうか?


「私、姉が大嫌いですのよ。ですから、姉の振りをして、婚約者のエドワール様に嫌われるように色々しましたの。貴女にも恨みは無かったのですけれど、思った通り、効果的でしたわね」

「それは、どういう……?」

「あら。解りませんの? 全て、私の仕業と言う事ですわ」


 最期まで否定し続けたエマニュエルの声が、蘇る。


『私は、無実です!』


 あれは、真実だった?

 私は、無実の人間が処刑されるのを止めずに、見届けてしまったの?!


 デルフィーヌは、罪悪感に押しつぶされた様に膝を着いた。


「酷い顔色ですわね。私は、これで失礼させて貰いますわ。捕まりたくありませんもの」


 その言葉も耳に入らない。

 記憶の中のエマニュエルの声が、デルフィーヌを責めるように、何度も何度も無実を訴えるからだ。




「良かった。気が付いたか」


 エドワールは、意識を取り戻したデルフィーヌに安堵して声をかけた。


「エドワール様……」

「処刑は、聖女たる其方には刺激が強過ぎたのだな。倒れている其方を見た時は、心臓が止まるかと思ったぞ。独りにするのではなかった」


 夢だったのだろうか?

 デルフィーヌは、あの女性との会話をそう思いたかった。


「あの……。エマニュエル様には、妹さんはいらっしゃいますか?」

「いや。エマニュエルの兄弟は、弟だけだ。何故、そんな事を?」

「いえ。特に意味は……」


 エマニュエルに妹がいないのであれば、やはり、あれは夢だったのだろう。

 そう思ったが、別の考えが浮かんでしまった。

 血の繋がりは無くとも似ている女性がいて、エマニュエルを陥れた可能性もあると。

 どうして、ちゃんと捜査して貰わなかったのだろう?


「また顔色が悪く……。デルフィーヌに癒しを!」


 エドワールに命じられた治癒術師が治癒術を使い、デルフィーヌを回復させる。

 しかし、後悔に支配された心は癒せなかった。




 どっち?! どっちが本当なの?!

 あれは夢? それとも、現実?

 あれは嘘? それとも、本当?

 エマニュエル様は罪人? それとも、無実?


 誰か、教えて!

 私は、どうすれば良いの?!

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― 新着の感想 ―
[一言] ちゃんと捜査しなくても、人一人を処刑できるとは、恐ろしい国ですね。 しかし、過去(もしかしたら今でも)冤罪で処刑された人は、少なくないのかもしれませんね。
[一言] いろいろと考えさせられる作品です。 本当にえん罪だったのか、罪悪感の見せた幻か、 弟が女装して復讐にきたのか。 エドワールや弟視点の話も見てみたいです。
[一言] ちゃんと捜査しなかった、んですね 彼女が罪人かどうかでなく 自分が罪人かどうかを問われていると気づくのはいつになるのか
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