第四十九話 くっころ!
ミスティックダンジョンに向かう道中。
大きな馬車に御者を務めるメンバーを含めて11人、残る2人はそれぞれ馬に乗って馬車の前と後につき駆けている。
ミスティックダンジョンに行くには危険な地域を通る為、索敵役は馬に乗り警戒しながら走るのだ。
馬車の中ではリーダーに抜擢されたガルデンが大きな声を出した!
馬車は7〜8人が定員だが10人も乗ってることでぎゅうぎゅう詰めだ。
ちなみにニーニャ以外全員男である。
「よし新兵ども! 耳をかっぽじってよく聞けぃ!」
2メートルはあろう巨体を縮こませ座りながら叫んだ。
初リーダーに抜擢されノリノリのガルデンは野太い声でさらに続ける。
「今からこの指輪を全員に渡す! これはチロルが皆の為に作ってくれた指輪だ! 性能は聞いて驚けよ!取得経験値20倍なのだ!」
皆それぞれ指輪を受け取っていく。
もちろんチロル以外である。
「20倍…すげーこの指輪…ありがとうチロル」
今回のレベルアップ遠征に参加している若手ギルドメンバーのマルコがそう言ってきた。
その隣でニーニャが左手の薬指に指輪をはめている。
「チロル…謹んでお受け致します」
「はい!?」
隣にいるチロルが裏返った声で返事した。
「え!? プロポーズだよね?」
「え!? ちょっ!!! 違うし!」
「ウフフ…照れちゃって!」
「ってマルコもなに薬指に付け替えてるんだよ!」
「いや…オレもチロルのプロポーズ受けようかなって思ってさ…」
「受けんでいいわ!」
そこへエンドラが異空間から現れた。
キョロキョロして席が空いてないのを見ると、ニーニャの膝の上にちょこんと座った。
「われはチロルが男と契りを結んでも気にはせんからの」
「結びません!!!」
「っていうかみんな! その指輪を作ったのはエンドラだよ!だからエンドラから贈られた指輪だ」
チロルがそう言うと他の男メンバーが全員が左の薬指に指輪を付け直し始めた。
「こ…このロリコンどもがぁ!」
エンドラは汚物を見るような目で男どもを見ながらそう叫んだ。
さらにエンドラは一番奥にいたガルデンの薬指に目を光らせた!
「ガルデンよ… 以前われは言ったはずだが…? おっさんはダメじゃと…」
ガルデンはビクッとして動きが止まる。
直後誰かが叫んだ。
「おっさんはダメだ!」
皆も続き出す!
「おっさんはダメだ!」
「おっさんはダメだ!」
おっさんダメ!おっさんダメ!おっさんダメ!
大合唱が始まった。
馬車の中は最高潮に盛り上がる!
「っていうかエンドラ、ちょっと確認したいんだけど…」
「なんじゃ?」
「エンドラって異空間にいる時、外の声聞こえてる?」
「ん? 聞こえとるぞ?」
「や…やっぱりか。エンドラが出てきてもすぐ会話が繋がるから、そうじゃないかなぁって思ってた」
「ところでチロルよ、毎朝鏡の前でスッポンポンになって何をやっとるんじゃ?」
「ん?」
「変なポーズとって『オレは神だ!』とか言っておろう?」
「は? え? もしかして…見え…てる…の…?」
チロルの顔がひきつる…
「見えとるが?」
一瞬静かになった馬車の中が再び盛り上がる!
「スッポンポンの神チロル!」
「チロルはスッポン神だ!!!」
スッポンポン!スッポンポン!スッポンポン!
大合唱が始まった。
特にガルデンはターゲットが自分からチロルに移った事に安堵し大はしゃぎだ!
「や…やめろぉ!!! くっ、ころせよぅ…」
顔を真っ赤にして下をうつむくチロル…。
それからミスティックダンジョンに到着するまでの間、チロルは皆に『スッポン神』と呼ばれ続けていた。




