第三話 はじめての狩り
父さん待って…ハァハァ…
息を切らしたチロルは父の後を追っている
「チロル、最初はキツいが慣れてくる。頑張ってついてこい!」
「う、うん…」
翌日の昼前にチロルと父の2人は森を歩いていた
父は足が悪いといっても歩く分には大丈夫だ
走ったりする事ができないだけなのだ
「チロル、もうすぐボアがいるテリトリーに入るがさっき教えた感じで狩ればいいからな。まぁ剛腕があるなら大丈夫だろ」
村を出る前に30分ほど剣の使い方を簡単に教えてもらったチロルはやや小ぶりの剣を腰にぶら下げていた
「チロルいたぞ!ボアだ! まず見本を見せる!」
父はそう言うと近くの木の幹に剣をガンガンと当ててボアの注意をひいた
ボアは基本的には人を襲わない
ばったり出会っても静かに後退りして引けばボアも去っていく
狩る場合はその逆をすればいい。大きな音を出して威嚇すればボアはその人間を敵と判断して突進してくるのだ
ボアが唸り声を上げて父に突進していく!
「チロル見とけよ! ボアが突進してきたら直前で横に回避するんだ! せいっ!」
横に回避した父は方向転換しようとしているボアの眉間に剣を突き刺した!
急所を突かれたボアはその場に崩れ落ちる
マジックアイテムの収納袋にボアを入れる
この収納袋はそこそこの量を収納できるので狩りをする時は必須のアイテムだ
「チロル、まぁこんな感じだ…慣れないうちは眉間を突くより的の大きな腹や足を攻撃した方が安全だ。的の小さな眉間に剣を刺すのはなかなか難しいからな」
「わかった父さん! 次はおれがやってみる!」
少し歩いた所でさっきよりやや小さいボアを発見した
チロルは父と同じように木に剣を当てて音を出す
ガンガンガン!
チロルは突進してきたボアを直前で避けて方向転換しようとしてる隙に前足に剣を振るった
「うおおおおおお!」
剛腕スキルのおかげかボアの前足はキレイに切断される
動きが止まったボアの眉間に剣を刺しトドメをさした
「いい感じだチロル! なかなか筋がいいぞ!」
「父さんの教え方がいいんだよ!」
昼を少しまわった頃には2人でボアを5体仕留めていた
「チロル!そろそろ戻るか! 狩りすぎてもいけないしな、あと子連れや妊娠してる腹の大きなボアは狩るなよチロル。森の恵みを根こそぎ狩ればいずれ報いを受ける」
「わかってるよ父さん」
村に戻るとボア5体の内、2体を残して3体を王都から定期的に来ている商人に売り払った
商人は袋の中の時間が止まる高価なマジックアイテム袋を持っているので解体せずそのまま渡す
ボアを売ったお金のほとんどは村長に渡した
この村の中ではお金は必要ないからだ
狩人が肉を、農家が野菜をとれた分を村で分け合っている
残った2体は解体後、村の家に配る
ボアを解体してると村の子供が集まってきた
子供達に肉を渡すとそれぞれ家に帰り親に渡す
それは昔から続くこの村の子供たちの仕事だ
子供がいない家は大人が肉を取りに来る
「いつもありがとうおじちゃん!」
「いいってことよ!さぁ早く帰って母ちゃんにその肉渡してきな!」
「うん!」
子供たちはそれぞれ自分の家に帰っていった
余った肉や野菜を売ったお金は村長が代表して預かりこの村ではとれない、作れないものを王都から定期的に来る商人から買っている
狩りに使う武器や鉄製の農具、薬などだ
鍛冶屋や調合士がいないこの村ではそれらが作れない
チロルは数日狩りに出かけレベルが5になった