森の聖女は道に迷う?
第二回なろうラジオ大賞投稿作品第四弾!!
西の森には聖女がいる。
俺の住む町にはそんな噂がある。
普通、森にいるのは魔女で、聖女は教会にいる存在かもしれない。
でもなぜか、俺の住む町にはそんな噂がある。
一体どういう事だろう。小さい頃からそう思い続け早十余年。俺は、そんな西の森で遭難していた。
遅刻しそうなので学校への近道にと、森を直行したのだ。
遅刻寸前であったが故の最終手段。だが今は緊急事態だ。
さっきから同じ場所をグルグル回っている気がする。しかも木が邪魔で、太陽の位置が分からん。よって東西南北も分からん。完全に迷子。まさか俺は、このまま森から一生出られないのか。
そんな絶望的な事を想像した時だった。
「あ、もしかしてあなたも迷子?」
俺の前に、ワンピース型の小汚い制服を着た一人の少女が現れた。
見たところ、俺とそう歳は変わらなそうな子だ。
しかも金髪碧眼で、美形の類に入るほど顔が整っている。
ま、まさかこの子が噂の聖女だろうか?
い、いやだけど今この子、俺も迷子かって訊いた?
もしや聖女の正体って……森で迷っている女の子?
「ちょうどよかった。孤独で気が狂いそうだったの。話し相手になって?」
そんないろいろ混乱する俺に、彼女は上目遣いでそう言った。
それから俺と彼女は、とりあえず話しながら、森から出るために彷徨った。
そして俺は、彼女の事をいろいろと知った。彼女の名前はエミリー。エミリーは帰国子女で、俺と同じく学校への近道のために森に入ったけど、そのまま遭難してしまったらしい。
でもそうだとすると、少々不可解だ。
俺が通う学校は共学だが、女子はエミリーの着ているような制服を着ていない。周辺の学校でもそうだ。
ならエミリーは何者なんだ?
まさか彼女は異世界の住民で、なんらかの要因でこの世界に、流行りの逆異世界転移的な感じで――。
「あっ! 出口!」
――その思考は、途中で断ち切られた。
エミリーが叫んだ通り、ようやく森から出られたからだ。
「あ、いっけない! 早く学校に行かないと!」
そしてエミリーは慌てて走り出す。
というか、ちゃんとこの世界の住民だった……って、あれ?
「なんで俺の行ってる学校の方角?」
「えっ? ま、まさか……伊世中の人?」
「えっ? もしかして同じ中学? あれ、でも制服……」
「ああ、これは前の学校の制服だよ。まだ転校初日だから、私の届いてないんだ」
なるほど。
いろいろ納得した。
ていうか転校初日で森に入って遭難て、なんてアクティブで紛らわしいアホの子!!
結局、聖女伝説は謎のまま( ̄▽ ̄;)
というかアホの子発言は盛大なブーメラン( ´∀` )