第七話
ミケル君の言った通り、研究塔の中は禍々しい雰囲気が漂っている。
色々な儀式に使いそうな道具とか、古文書みたいなのもあるわね。
研究している人達は、老若男女問わずって感じで、子供もいたりする。
「この階は自由に研究をして貰っている。 子供達がいるのは、遊びから新たな発見を見つけられる事もあるし、柔軟な感性で色々な話をしてくれるから、研究者達にとってもいい刺激が生まれる。 次の階に行こう」
一つ上の階に行くと、ネズミを使った実験をしている。
凄いわね。
こんな中世っぽい世界なのに、現代と同じような実験をしているだなんて。
設備なんかに関しても、それっぽいものが置いてあるわね。
「この階での研究はあまり公に出来ないので、次の階へ行こう」
「公に出来ない? それって病なんかを治す研究をしているから? 大怪我や病は教会で治療するって聞いているし、そう言う事?」
「……どうしてそう思った?」
「私は教会へは行った事無いけど、凄いお金を取られるんでしょ?」
「いや、そっちじゃない。 どうしてここで治療の研究をしていると思ったんだ?」
「ああ、そっちね。 ネズミを使っているし、生体実験って事でしょ? それなら生物を生かすか殺すかの実験だと思っただけよ」
「成程……研究に興味は無いか? 才能がある様に見える」
「全然才能なんて無いわよ」
抗生物質とか発見したりしてるのかしら?
専門知識とか無いからアドバイスなんて出来ないけど……
ヒントなら与えられるかもしれないし、一応聞いておこうかしら?
「アオカビの研究とかってしてるかしら?」
「カビの研究なんてしていないな」
「それじゃあ、病原菌とかって分かる?」
「……ああ、知っている」
「じゃあアオカビを繁殖させて、それをろ過した液体を病原菌に使ってみて。 もしかしたら役に立つかもしれないわ!」
「わかった、研究させておこう。 次の階は軍事的な研究を行っているが……今日は回っている時間が無さそうだ。 最後に地下の研究室を見せよう」
ジャービス第二王子の後を追って階段を下りて行くと、地下にある研究室に辿り着いた。
沢山本があるけど、どれも古いわね。
見た感じ歴史とか古代の遺物っぽいものの研究している様に見えるけど、よく分からないわね……
あら? これ日本語じゃない。
なになに……この世界に生まれてきた事を呪う…‥か。
この人も現代からの転生者だったのかしら?
呪いの言葉は――
「それが読めるのか?」
「読めるわよ?」
「……声に出して読んで貰えるか?」
「ええっと……」
私はこの本に書かれている内容を読み上げた。
【この世界に生まれてきた事を呪う。
その為に我は生まれた。
記憶は無いが、成すべき事だけは分かる。
世界を僕の呪いで埋め尽くし、私は呪いの言葉を唱える。
これを読んでいるお前も呪いの言葉を口にしろ。
アカリットフェンドゥ】
あぁん! 急に力が抜けて立てなくなっちゃった!
何が起こったの? 私呪われちゃった!?
この揺れ……地震!?
こんないっぱい物がある場所で地震なんて最悪だわ!
ミケル君はミゲルちゃんを庇っているけど、棚の上から今にも大きな壺が落ちてきそう!
全力の力を振り絞って、私は二人を安全そうな方へ突き飛ばした!
壺は私の上に落ちて来たけど、体は結構丈夫に出来ているから平気!
双子ちゃんが無事で良かったわ……
あら? 私の方は平気じゃなかったみたいね。
そんなに痛いと思わなかったけど、床に転んで立ち上がれないわ……ええ!?
揺れが収まってきたと思ったら、凄い猛獣が目の前にいるんだけど?
ジャービス第二王子が双子ちゃんを守る様に身構えているけど、あんな猛獣に人が勝てるわけない。
だってこの狼みたいな見た目の猛獣って、ライオンより大きいんだもん。
人間が真面にやりあえる相手じゃないわ。
「私は動けそうにないから、私を餌にして逃げなさい! ジャービス第二王子、双子ちゃん達を守ってあげて!」
「心配には及ばない」
えっ!?
ジャービス第二王子に襲い掛かった猛獣の攻撃を弾き返した?
あれは……魔法?
「強い魔獣だ。 一人では殺しきれないか……動ける者は戦える者を連れて来てくれ!」
「その必要は無い!」
あれは!
ホーゲン第一王子!
颯爽と現れ、あの大きな猛獣を一刀両断! って訳にはいかなかったみたいだけど、その次の一撃で捩じ伏せちゃった!
魔獣はまだ動いているけど、すぐに追撃の一撃を入れてホーゲン第一王子は止めを刺した。
何よこれ、ホーゲン第一王子も、ジャービス第二王子も凄く格好いいじゃない!
それに、咄嗟にミゲルちゃんを庇ったミケル第三王子もポイント高いわね!
私の周りにいる男達ってみんな魅力的すぎて、どうしたらいいのかわからないわ……でも幸せ。
ミゲルちゃんが倒れている私を起こして抱きしめてくれる。
「助けてくれてありがとう。 本当は人前で使っちゃ駄目だけど、助けてくれたお礼」
「気にしなくてもいいわ。 お礼って……あら? 体に力が戻ってきたみたい! 人を癒す能力があるの?」
「うん、傷や体の悪いところを少しだけ治せる力。 この力を持っている人は教会に行かないと駄目だけど、内緒でこの能力を持っているの。 だから内緒だよ? ね?」
「ええ! 絶対に誰もにも言わないわ! ありがとう!」
まだ体はフラフラしているけど、立ち上がれる様になった。
もう少し休めば……ホ……ホーゲン第一王子が私を!
私の事を抱いてくれてるわ!?
「無理に立ち上がらなくていい。 バーンアストライド卿はもうお帰りになるそうだ。 馬車まで運ばせて貰おう」
「ホーゲン第一王子は優しいのね! それに、逞しくてとっても素敵だわ!」
「鍛えているからな。 それくらいしか誇れるものもない」
「誇れるものは数で価値がきまるわけじゃないわ! たった一つでも私からみたらすっごく魅力的! それに、とても優しいし、探せばもっと誇れる部分はあると思う!」
「誉めるのが上手いな」
ホーゲン第一王子の逞しい腕に抱かれて、研究塔から馬車の方へと向かう。
全揺れないし、体が大きいから歩く速度が凄く早い!
沢山褒めてあげると、「俺は不器用だ」とか「人に好かれる様な男ではない」だとか結構ネガティブな事を言っているけど、あくまで自分の道を行くって感じね!
あらゆる面でホーゲン第一王子はドストライクね。
もっとお近づきになりたいけど……もう馬車の前まできちゃった。
ホーゲン第一王子はカインに私をバトンタッチして、カインの腕に抱かれる。
ホーゲン第一王子の後だからすっごく腕が細く感じるわ……
送ってくれたホーゲン第一王子にお礼を言って、カインと一緒に馬車に乗った。
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