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第五話

 「お父様、牢獄にいる三人を解放して!」

 「アイラ……カイン、お前からも言い聞かせてやってくれ。 それは出来ないのだと」

 「アイラ様、バーンアストライド公爵を困らせてはいけないよ」



 現在、根回しなんて出来ない私は娘と言う立場を利用して、帰って来るなりお父様に直談判している所!

 道を切り開く為には行動あるのみよ!

 それに、重罪人と呼ばれている以上、時間も差し迫っているのだと思うし、助けるには早く行動を起こす必要があるのだと思ったから。



 「お父様、私にとってあの人達は恩人なの!」

 「むぅぅ……恩人であるはずが無い。 あの者達はアイラを(さら)った重罪人なのだ。 そのような者達を簡単に開放する訳にはいかん」



 「いいえ、恩人よ! お父様の気持ちも凄く分かるわ! 私もお父様も人生の一部を奪われたのだから。 でもね、彼等は私を大切に育ててくれた。 私の為に真っ当な生き方を望み、町に居る人達に許して貰うまで頭を下げ続けてくれた。 どんなに飢えていても私に優先して食事を与えてくれたし、何よりも愛があった。 そんな人達が恩人でなくて、なんだと言うの?」

 「アイラ……どうしてわかって貰えぬのだ? あの者達は大罪人なのだぞ?」



 「私には何一つあの人達に恨みは無い。 一緒にいてとても楽しかったわ。 彼等が罪に手を染めたのは生活の為。 そうしなければ生きていけない環境にあった! その環境を作ったのは誰かしら? その人には罪を(つぐな)って貰う必要はあるわね。 けど、罪を(つぐな)った人には温情(おんじょう)を持って(ゆる)されるべきだと私は思うの。 あの人達の為なら私はどんな責任でも負うわ! あの人達は十分すぎる程その罪を(つぐ)なってきた事を私は知っている。 だからあの人達を解放してあげて!」

 


 お父様は頭を抱えて悩んでいる。

 当然だと思う。

 だってお父様からすれば、あの人達は心の底から憎い相手だもの。

 かと言って、彼等を(した)う私の前でそんな発言は出来ない。

 


 苦悩する気持ちもわかるけど、ピリオドを打たせて貰うわ!



 「お父様、私の恩人をこれ以上傷つけると言うのなら、私は二度とお父様と呼べなくなってしまうわ! それでもいいの?」

 「分かった。 カイン、明日あの者達を連れて来い。 その為の書状は用意しておこう」

 「仰せのままに」



 「私の大好きなお父様でいてくれてありがとう! お父様!」

 「!?」



 私はカインの手を引いて自室へと戻った。

 最後の一言は余計だったかしら?

 あんな事を言えば、お父様は私の大好きなお父様であろうとして、その立場を忘れ兼ねない……

 そんな事無いわよね?

 でも、こう言う所が私の罪作りな所なんだと思うわ。

 それも仕方の無い事、本当に周りにいる人達の事が大好きなんだもん……



 「アイラ様……どうしてあの様な考え方が出来るんだい?」

 「あの様な? “罪を憎んで人を憎まず”の事かしら? 人は誰だって間違いを犯すもの。 それを許してあげないと人は報われないし、本当に悪いのはそう言う環境を生み出してしまった事。 だから、そうゆう環境を作らない様にする事が大切だと思うし、そうなるよう導くのは貴族のお仕事なんじゃないかしら?」



 「確かに……そうかもしれない……」

 「大丈夫? 顔色が悪いわよ? 大丈夫よ、人は変われるわ」



 「君は……いや、ごめん。 僕にも考える時間が出来たみたいだ。 気づかせてくれて礼を言うよ、ありがとう」

 


 カインが何を思い悩んでいるのかは分からないけど、「どういたしまして!」と返事をして自室へと辿り着いた。

 カインとはここでお別れね。



 自室のドアをノックするとダリアがドアを開けて私を部屋の中へと導いてくれる。

 


 「アイラ様、明日はお城へ行き、陛下にご挨拶しに行きますので、今からしっかりと貴族の礼儀作法を学んでおきましょう」

 「王様に会いに行くのね! わかったわ!

  どの道覚えなきゃいけないし、ドンと来なさい!」



 貴族の礼儀作法なんかは大体覚えている。

 ただ、身に付いたかと言われればまだまだかしら?

 


 ダリアの話しでは王様の他に四人の王子様もやって来るみたい。

 四人も男の子だなんて……世継ぎには困らないわね。

 一応ダリアから軽くだけど、どんな人達なのか教えて貰った。



 この国バイシタル王国の王様。

 ルナバルト・バイシタル王はお父様のお兄さん。

 お父様とは違い、明るくて陽気な人で剣の腕は現役バリバリの兵士達にも劣らない!

 会うのが楽しみね!



 そして、長男のホーゲン第一王子。

 父である王の影響から剣の道に(はげ)み、王国剣士としても指折りの剣士!

 ただ、王位には興味が無く、自分の事を頭が悪いと思っているらしく、自ら次の王は第二王子に譲ると公言している。

 凄く男らしい真っ直ぐな人! 聞いただけでゾクゾクするわ!



 次男のジャービス第二王子。

 彼は兄のホーゲン第一王子とは反対に学問に専念している。

 容姿はお父様の若い頃に似ているらしいんだけど、はっきり物事を言うタイプみたいね。

 話だけじゃ想像しにくいけど、物事をはっきり話してくれる人は責任感のある立派な人だと思うわ!



 三男と四男はミケル第三王子とミゲル第四王子。

 まだ幼く、見た目がそっくりな双子ちゃん!

 二人共母親似で、女の子の様な容姿をしているみたいだけど、性格ははっきりと分かれているみたい。

 ミケル第三王子は悪質な悪戯を好む性格で、ミゲル第四王子が控え目で大人しい性格。

 一部からは天使と悪魔と言う表現で区別されているらしいわ。

 可愛い男の子も私はウェルカムよ! 



 会えるのは楽しみだけど、やっぱり貴族のゴタゴタとかってあるのかしら?

 一応自分の身を守るくらいには剣術なんかを(たしな)んでおいた方がいいかもしれないわね。



 「ダリア、今度から礼儀作法とか学問だけじゃなくて、剣術も教えて貰えないかしら?」

 「その様な必要は御座いませんが、どうしてその様に思われたのですか?」



 「自分の身を守る為よ? それに、運動をするのは健康にも良い事なのよ」

 「そうですか……身を守る為と運動で御座いますね。 それでは指導される方をご紹介致しますので、その日までお待ち下さい」



 「先生を付けてくれるのね! どんな人が来るのか楽しみだわ!」

 


 新たな出会いに胸を(おど)らせて、明日も良い日であるようにと願いを胸に抱いた。

お願い。


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