93 ガープ要塞の惨劇
「あら??」
ここは最前線から遠く離れた場所、ガープ要塞である。
アンデッドが湧き出す不浄の平原に屹立する鋼鉄の要塞。
その中央司令室でネクロマンサーのクミスカ・ぺーぺが
空間を見上げ呟いた。
「どうかなさいましたか?」
防衛を任されている魚怪人ウオトトスと副官の戦闘員№100の
カタブツ君が振り向き何事かとぺーぺに尋ねた。
「平原全体にかけられていた大魔王の死霊術が変化いたしました。」
防衛設備の探知機能には何の変化も見られなかったがぺーぺは
きっぱりとした口調で断言する。
「ふむ……」
それを受け防衛指令としてウオトトスは考えを巡らすと直ぐに
対応を指令した。
「警戒態勢を発令します。各員は配置についてください。それとゴースト
検知器の起動と専属オペレーターを待機させるように。」
「はっ!!ですがよろしいのですか?まだ闇大将軍閣下の第一主力隊は
魔王の領域に入っておらず要塞周辺のレーダーやセンサー、衛星偵察でも
特に異常は検知されていませんが……」
「規定の基準では異常なしと判断できる状況ですがぺーぺ殿が大魔王の
死霊術に手を加えられた事を感知されました。これは信頼に値する情報です。」
「なるほど。」
確認は便宜上のものでウオトトスの判断を信頼しているカタブツ君はテキパキと
指示を遂行していく。
「では私も装備を整え配置に付きます。」
そう言って半吸血鬼のネクロマンサー、クミスカ・ぺーぺは一礼した。
「よろしくお願いしますぺーぺ殿。頼りにしていますよ。」
ウオトトスの応えに笑顔をかえしてぺーぺは司令室から退出した。
彼女はガープ要塞内の中央セクションの廊下を進み技術開発ラボに向かう。
死神教授が考案し、共同で製作したぺーぺ用の『装備』を装着する為にだ。
メタリックで機能統一された、画一的だがクリーンな廊下を行く。
警戒態勢中なので武装した戦闘員達と何度かすれ違うが彼らは
ぺーぺを部外者扱いせず姿勢を正して敬礼してくれる。ペーペも
ガープ式の敬礼で応えた。
(ここまで疎外感が無い場所は初めてかも……)
半吸血鬼は基本的には日陰者だ。多くの地域で忌避されがちであり
国によってはモンスターに分類され人権を認めていない所もある。
とはいえ彼女の能力に価値を見出した組織や集団に雇用され迎え入れられた
経験も無くはない。だが新勢力ガープはそれまで関わったどんな組織とも
違っていた。能力だけを利用しぺーぺ個人に対しては差別的な態度で接する、
それが今までの経験だったがガープ要塞に来てからそんな思いをした事は無い。
種族や外見で相手の価値を判断するような油断をするほど
ガープという組織は弛んでいない。
元々が別世界の、それも世界征服の為にとことん合理的な行動原理で
動いていたガープにとってこの世界にある身分制度や差別意識などは
利用すべき弱点として記録するだけでガープが同調する事など無いのだ。
(それに半吸血鬼なんて普通過ぎるくらいとんでもない改造人間集団。なのに
秩序があって合理的、何のプレッシャーもストレスも無い理想の職場……ん?!)
クミスカ・ペーペは考え事を中断してその場に立ち止まった。
一切の表情を消し半眼で集中する彼女からは普段の気弱さは消え、それに
誤魔化され見えにくかった彼女の凄みある美貌が表に出る。
時間にして数秒ほど。おもむろに彼女は通信端末を取り出して最前までいた
司令部に連絡を入れる。
『どうかなさいましたかペーペ殿?』
「至急ゴースト検知器で正面ゲートと……念のため第三ゲート付近も
最大霊力感知で探査してください。間もなくかなり上級の悪霊系の敵が
複数、おそらく2体が正面ゲートから侵入して来ます。」
オペレーターではなく直接応答してくれたウオトトスに感知した内容を
報告するペーペ。
『間違いありませんね?』
「間違いありません。すぐに装備を持って私が迎撃し始末いたします。」
自信に満ちた口調でペーペが応えウオトトスも了承する。
「了解しました。お願いしますぺーぺ殿。」
「安んじてお任せを。」
そう言って通信を終えるとぺーぺは自信に満ちた足取りで対応に急いだ。
もちろんウオトトスの方も投げっぱなしではなくゴースト検知器など
使いモニターしつつ霊系モンスターに効果のある魔力弾を装備した
小隊を向かわせぺーぺ支援体制を整え未知の敵に対処したのだった。
……そして、ある薄暗い空間において不機嫌な声が響き渡る事となった。
「送り込んだ魔霊どもが消息を絶ったですって?」
声の主は魔王軍四天王の1人、内務公デモール。デモールは副官として
随行してきた最上級アンデッドのデスダークロードからもたらされた
不穏な報告に不機嫌な調子で応えている最中だった。
「残念ですが内務公、どうやらガープ要塞には亡き闘魔将らの霊魂を用いた
魔霊をも打ち滅ぼせる程の備えがあるようです。」
「……くっ。」
過去の戦闘で倒れた闘魔将のうち、勇者ゼファーに倒された炎怪サッカモリーと
五大賢者に抹殺された爛怪ルドラの霊魂の確保に成功していた魔王軍はそれを使い
魔霊を造り出していた。
それを用いた今回の作戦はこうだ。
2体の魔霊をガープ要塞に送り込み暴れさせる。むろん過去に毒怪グロリスの
魔霊が侵入した時のように短時間で消滅するだろう。だが転移の為のアクセス
ポイントは出来る。
以前にグロリスの魔霊が通った経路は通路ごと改築で消されてしまう
断固たる措置でポイントを利用不能にされていたが今回は即座に使うつもりだ。
マナの希薄なガープ要塞内、小さな質量の物を一方通行で送るしか出来ないが
それで良い。送るのは邪妖精達だ。ピクシーに似た姿に褐色肌と蝙蝠の翼を持つ
邪妖精たちは金属を腐食させる薬液の小瓶を持たされ、ガープ要塞内の精密機械や
操作機器などを狙って破壊工作させる予定だったのだ。
「こうなった以上、予定を変更しガープ要塞強襲を仕掛ける他はありません。」
「しかし…それでは成功率が……」
「内務公?負けても逃走しても大魔王陛下はお許しになりませんよ?」
逡巡するデモールにデスダークロードは淡々と圧をかける口調で続けた。
「現在のガープ要塞は武闘公が敗れた時と違いガープ三大幹部は不在です。そして
貴女は大魔王陛下から対ガープ用の特殊能力を授かった筈。どのみちガープ要塞を
攻略する以外に貴女が生き残る道はありませんぞ?」
追い詰められた内務公デモールは憂いた表情でその巨体を立ち上げた。
常人の10倍の身長を持つ巨人族出身のデモールは控えていた直衛の
ダークトロール重装歩兵12名とダークレイス3体に号令を発した。
「……直ちにガープ要塞攻略を開始します。」
そして自分が転移するのに合わせデスダークやレイスにダークトロールを連れて
転移するように命じる。むろん戦力はこれだけではない。主戦力は先行しており
間もなく予定地点に到達する手筈だ。…本来なら邪妖精奇襲が成功すると同時に
攻撃を開始する予定の戦力だったのだが。
「その代替案を考えました。デスダークロードのザラ・ダンマー卿よ、貴方に
高みの見物ではなく協力してもらいますよ?」
「もとより。大魔王陛下に勝利を捧げる為ならいかなる使命も果たす所存。」
「良い返事です。貴方にお任せしたい事は簡単。トロール兵を移送した後で
貴方は消えた魔霊の任務を引き継いでガープ要塞正門の間際に出て突入して
下さい。」
「……。」
隠密行動が出来る霊体とは違い実体が要塞正門前に出るのは危険だと
予想されていた。生身、アンデッドいずれに対しても対応可能な兵器や
火砲が集中配備されているに違いなく突入する前に集中砲火の洗礼を
浴びる事になるだろう。
「最上位のアンデッドならば切り抜けられますよ。きっと。それに
魔霊と違ってマナの薄い要塞内部でも貴方なら簡単に消滅せず破壊工作を
やり遂げられるでしょう。もし倒れてもそこを起点に邪妖精を送れます。」
「ふぅむ…、なるほど。」
「貴方の突入と同時に私と主力隊が強襲を仕掛けます。これが現段階で最も
高い成功率の作戦とは思いませんか?」
「いいでしょう。確かに戦略的合理性があると思えますな。」
こうして内務公デモール率いるガープ要塞攻略隊は崩れた作戦の前提を修正し
強襲作戦を実行するのであった。
フォン! フォン! フォン! フォン!
「敵襲!!」
「魔王軍四天王の内務公デモールの存在を確認!!」
ガープ要塞の中央司令室では魔王軍の出現に警報音とオペレーターの
報告が連続して上がり緊迫した雰囲気に包まれる。
「警戒態勢から戦闘態勢に移行。これより迎撃を開始します。」
落ち着いて指揮を取るウオトトスは一拍ほど考えて、
「四天王が陣頭指揮を取って乗り込んで来ましたか。申し訳ないですが
ソア大使とリルケビット大使を安全の為に特別隔離措置を行って下さい。」
「仕方ありませんね……」
「嫌われ憎まれるのは私だけで充分。私の名で措置を行って下さい。」
「了解しました。」
カタブツ君にウオトトスが指示を出していると別のオペレーターが
報告して来た。
「ぺーぺ殿が感知した通り新手のアンデッドが正門付近に出現しました。」
「想定通りですね。そのまま待機しているぺーぺ殿に対処を任せましょう。
支援体制は可能な限り整えてください。」
遂に始まった魔王軍の攻撃。最初に火蓋を切ったのは
ガープ要塞正門前だ。
何も無かった空間に出現した魔物。怪しく眼窩を輝かせた漆黒の骸骨、
豪華なローブを装備した存在。最高位アンデッドのデスダークロード
ザラ・ダンマー卿である。
シュオオオ!!!
ドルルルルルルルルル!!
ドルルルルルルルルル!!
ギュオオオオン!
出現した瞬間、自動、半自動のガープ要塞の防御火器が
このデスダークロードに激しい十字砲火を浴びせかけた。
「うおおおおお!!な、何事じゃぁ?!」
驚きの声を上げるザラ・ダンマー卿。
死神教授の手で要塞本来の防御兵器の多くが復元・再整備されており
その火力の密度はデスダークロードの想定を大きく上回っていたのだ。
高X線レーザー砲、近接火器防衛システムの30mmバルカン砲、
プラズマカノン砲にイオン・ランチャーだ。普通の生物なら
秒で消し炭に変わっただろう。
だが最高位アンデッドたるデスダークロードの肉体は只の骨ガラではない。
物体では有るが半ば別次元の存在『超幽体』だ。通常の物理攻撃を無効化し
魔法にも強い耐性を有する。事実、要塞からの初撃は無効化できた。
だが兵器運用システムが排除目標の種別が霊系アンデッドと判断し
30mmバルカン砲の砲弾をミスリル魔力弾に切り替えてから状況は
激変する。
「ぐあああ!!まずい!まずい!!こりゃまずい!」
流石にダークレイスのように即座に消滅はしない。砲弾に込められた
魔力は儀式魔術で半永久化された物だが魔術師ギルドの若手達とか
オリハルコン級冒険者だった女僧侶グラーガが内職として初歩的な
攻撃魔法を込めて量産し続けた物で『超幽体』にとりあえず当たる程度の
影響しかない。
だが毎分5000発以上という発射速度の集中砲火はひどい。つまり
毎秒84発の着弾、それはデスダークロードにしてみれば初歩魔法を付与した
短剣で毎秒84回ずつ切り刻まれ続けている状態だった。しかもバルカン砲は
正門左右に2基も配置されている。
ズタズタにされ崩壊しかける全身を復元しながらデスダークロードは
這々の体で要塞内に逃げ込んだ。正門に入る時に電磁シールドが行く手を
阻むが流石にシールドは透過できた。
「うぬぅ……」
要塞内に入ったデスダークはその瞬間から肉体の復元に困難が生じ
低く唸る。
「このマナの希薄さは実際に体験すると酷いものだな。まあ、魔霊如きと
違い体内のマナを使って力を……ぬ!何者だ?」
左腕を含む身体各所の欠損を体内のマナで復元しようとしたデスダークロードに
高レベルの霊体への攻撃・消滅呪文レイブ・スペクターが撃ち込まれ、復元を
中断して対抗呪文でレイブ・スペクターを打ち消しながらデスダークロードは
誰何した。
「土足で押し入って来た分際で誰何?さすがに魔王軍の無礼な態度は格が
違いますね。」
現れたのは白い肌に白に近い薄ピンクの髪をツインテールにした半吸血鬼の美女だ。
半吸血鬼のクミスカ・ぺーぺは真紅の瞳を細めて侮蔑する。それに対しデスダーク
ロードも侮蔑で応えた。
「何かと思えば半端者の吸血鬼モドキか。下等な半吸血鬼が私にかなうと
思っているのか?ガープから妙な装備を得たようだが話にならん。虫ケラの
ように叩き潰してやろう。」
「これの凄さ…分からないうちにお前は滅ぶのでしょうね。」
ペーぺは確かに変わった装備を頭に巻いていた。
呪い紐を帯状に編んだ物だが精密な小機器や電飾が取り付けられた
科学と魔術の融合したソレをハチマキのように頭に巻いて前で結んでいる。
ピコピコ光る電飾ハチマキ。よく見ればペーぺだけでなく手に持った杖の
頭蓋骨にもピコピコ光って巻かれている。さらに目を凝らせばハチマキの
後ろから細い電源ケーブルが延びているのが見て取れるだろう。
奇妙な格好のペーぺの嘲笑にデスダークロードは言葉ではなく
攻撃で応えようとする。
だが先手を取ったのはペーぺだった。ペーぺの口から早口で難度の高い
韻律が紡がれたのを聞いた瞬間デスダークロードは驚愕し叫びながら
対抗策を打つ。
「な?!『マグナ・ヴァニタス』だと!ふ、ふざけるな!!虚無の淵に
突き落とされてたまるか!!」
ペーぺが放つ最高位階の死霊術にやはり位階十二位と対等の対抗魔術を
展開して抵抗するデスダークロード。双方の魔素がドバドバ消費されて
行く展開にデスダークロードのザラ・ダンマーは内心焦っていた。
(くっ!焦る必要は無い!!魔力の強さは我の方が上!体内に蓄えられ
ているマナも我の方が圧倒的に多い筈だ!)
強がっているが彼は種族として劣位のペーペが実は高位のネクロマンサーだと
知り不安に感じていた。しかも彼の身体はズタボロ状態なのだ。
(くそっ、生身の半端者の方がこの場合は有利か!)
高位アンデッドといえど生身で無い以上は身体の維持に魔力と最低限のマナは
必要だ。それ故に生身のペーペがマナをどんどん注込んで死霊術を仕掛けて来る
事に疑問を持つ事に遅れたのだった……。
魔法の世界から切り離されたマナの無い空間で邪悪な魔法で身体を
維持しているデスダークロードは新たな危機の訪れに歯噛みする事となった。
ペーペを支援する為にガープ戦闘員部隊が現れ魔力を帯びた銃弾で
攻撃して来たのだ。それにペーペの術も全く勢いが衰えない。
「ペーペ殿!!支援を開始します!戦況はどうでしょうか?」
「順調です。この『魔力増強・マナ無限供給マシン』は期待通りの
性能を発揮していますので。」
(卑怯者めっ!!)
邪悪の化身たるデスダークロードのザラ・ダンマーはペーペの電飾ハチマキの
正体を知り自分の事を棚に挙げて内心で毒付くと大きく後ろに後退して、
「半吸血鬼ながら中々の実力者だな!!よかろう、我が好敵手と認め次なる戦いを
楽しみとしよう。それではサラバだ!!」
もはや作戦の成功は覚束ない。それに大魔王の命令ならともかくデモールの要請で
窮地に立ち続けるつもりは無かった。格好つけたセリフで戦略的撤退を選択する。
マナが希薄でろくに働かない魔法のローブをバサっと翻しデスダークロードの
威厳を保ったつもりで早足で正門へと後退しようとしたが……
「逃がす訳無いでしょうが。」
「ぐっ!!ぐあああああああああああああああ!!」
背中からペーペの死霊術マグナ・ヴァニタスと戦闘部隊の魔力弾掃射を浴び
ザラ・ダンマーの超幽体は虚無の闇に溶け断末魔の叫びと共に消滅した。
「ふうっ。さて、撃退の報告をしないと……」
司令部へと連絡を入れるペーペ。すると今度はオペレーターから指示が
届けられる。どうやらウオトトスは本格的に戦闘指揮に入ったようだ。
届いた指示は引き続き要塞内でアンデッドによる隠密破壊工作に目を光らせる
という物だった。的確な指示だとペーペは感心する。物理攻撃に弱いペーペが
前線に出ても役に立たない。マナの希薄な環境で供給マシンを用いればペーペは
最高位アンデッドすら容易に撃破可能なのだ。
納得したペーペはハチマキをきゅっと締めて気合を入れた。
さて、
戦闘が始まったガープ要塞。戦闘正面以外でも喧騒鳴り止まぬ状況だが
戦闘に無関係なある場所が今非常に喧しい状況になっていた。
転移門施設に一番近い非常ゲート付近の重装シェルター室では
中央に置いてあるトリカゴが大騒ぎになっていた。
「出せ出せバカァ!!」
「僕らも戦えるよ!!」
「ピヨピヨピ♪ピーピヨ♪」
トリカゴに閉じ込められているのはピクシーのソアとリルケビット、
そして鳴き声の可愛さで有名なチャンピー鳥である。少しでも2人が
退屈しないように考えられた気遣いだ。
彼らを護衛する戦闘員に向かって抗議の叫びと能天気な小鳥の
鳴き声がこだました。
「私達の強さを信じてよー!」
「とにかく出してぇ!!」
「ピーピヨピヨ♪ピッピー♪」
ソアとリルケビットは可愛い小鳥が居る為か魔法でトリカゴを破壊するような
過激な手段に訴えず大声で抗議を続けている。そんな彼らに護衛している
戦闘員№98『占い師』は落ち着かせるように占った。
「お2人の生まれ月は12月の射手座、今週は最悪ですので安全第一で
行きましょう。」
「てかさ!生まれ月と星座を関連させる占いなんて知らないけど?!」
「てかさ!そもそも星空の星座が違う世界の話だろ?!とにかく出して!!」
そう言われても占い師は出すつもりは無かった。二人の安全確保を最優先して
いざとなったらトリカゴを抱えて離脱するよう厳命されている。要塞陥落の
危険が迫った場合はすぐ近くにある転移門でアルガン帝国に送る為に。
外の王国側が用意した転移門施設は稼動状態にあり、魔王軍襲来とともに
退避している魔術師に無線連絡すれば一瞬だけ来てくれる。施設の護衛を
していた占い師と駐在する魔術師の関係は良い。魔術師の恋愛相談を占って
からは親友で万が一の時は万難を排して駆けつけると応じてくれていた。
トリカゴだけでなく窓の無い装甲シェルター内、そこに占い師の油断があった。
「……ねえソア、あれを見て…」
リルケビットがそっと耳打ちして天井の隅にある排気ダクトを指差し
用心の為に念話で相談を持ちかける。
「ピピ♪ピヨ??」
チャンピー鳥が見つめる前で頷きあった2人は相互に魔法をかけた。
「え??」
突然、7色の光を放ってソアとリルケビットの姿が消えたように見えて占い師が
驚きの声を上げる。だが2人は姿を消したのではなく小さな体を更に縮小して
ミツバチ程のサイズになったのだ。
「それ♪」
「じゃあね♪」
小さい身体でトリカゴの檻をすり抜けると2人は排気ダクトへと飛んでいく。
セラミックの格子をすり抜けピクシーたちは見事室外へと逃げ出してしまった。
「待って下さい!!今朝のタロット占いの結果だと今日のお2人の運勢は……」
シェルター内に取り残された占い師の静止の叫びは虚しく響き、慰めるように
チャンピー鳥が鳴き出すのだった。
同時刻の要塞正面、四天王の内務公デモールがトロールの上位種のダークトロール
重装歩兵の一団を率いて出現し、彼女を先頭に無造作といっていい様子で要塞に
向け歩を進める。
身長が20メートル近い巨人族の美女デモールに向けガープ要塞の兵器群から
猛烈な射撃が集中した。
殺到する超科学の破壊力。デモールの身体は瞬時に蒸発するかと思われた。
だがデモールが両手を広げ彼女を中心に30メートル程の半円形のエネルギー
バリアーを発生させると科学の兵器は威力を失う。
レーザー砲やイオン・ランチャーは消滅し実体弾は着弾しても一切の破壊を
発揮しなかった。
デモールは口元に手の甲を当て嘲笑する。
「おほほほ、我が軍がガープ要塞に攻撃を仕掛けるのは3度目。過去の戦訓を
生かさぬ訳が無いでしょう?」
可笑しくて堪らぬという様子のデモールは獄炎韻鉄の鎧と武器を装備した
トロール隊をバリアーで守りながら前進を再開した。
この状況をガープ要塞の量子スーパーコンピューターの戦略AIが即座に
分析し推論を立てた。内務公デモールは大魔王から魔力の無い攻撃に対する
耐性を付与された可能性が高いと。これは正鵠を射ておりデモールが大魔王から
『無魔力完全無効障壁』を張る力を与えられていたのだ。
ただし、この力には致命的な制限がある。その性質上の理由で魔法に対する
防御や対抗魔法を使用できない。対魔法防御と無魔法防御を同時に使用すれば
対で消滅する。ましてや高度でデリケートな完全無効障壁、これを展開している
間は確実に維持するためデモールは攻撃呪文など他の魔法も使用出来ないのだ。
戦略AIは分析結果を算出すると同時に設置された近接火器防衛システムの
30mmバルカン砲と電磁レール砲にミスリル魔力弾を装填した。
「よろしい。攻撃開始!」
司令官であるウオトトスも即座に射撃許可と発射命令を下す。
魔力兵器なら効果があると期待していた。
だがその時、30mmバルカン砲と電磁レール砲塔の基部の地面から
次々と砂煙が上がった!
亜空間要塞だったガープ要塞の壁面に設置されたエネルギー兵器と違い
実弾兵器はこの世界に来てから配備された物で30mmバルカン砲や
電磁レール砲は大地の堡塁に設置されていた。
その砲台群の地面から砂煙を上げ次々と出現したのは大きさ数メートルは
ある巨大なクワガタ虫の頭部のような怪物だった!
小型の亜竜やゾウくらいなら食いちぎりそうな凄まじい大顎。
ハヴァロン甲虫と呼ばれる化物だ。それが30mmバルカン砲や
電磁レール砲塔のスチール製の基部を食い破り次々と破壊していく。
更に砂煙が寄り集まり、砂で出来た人型の巨人を形成して
嘲笑するのだった。
「ひひひひひっ!見たかこの砂怪カロニア様の穏行術!今日をもって
ガープ要塞は陥落し我らの手で鉄の墓標へと変えてくれよう!」
闘魔将カロニアの率いるハヴァロン甲虫の大群。それがデモールが
先行して送り込んでいた主力部隊だったのだ。地中を移動し、更に
カロニアが薄く広く砂の身体を展開し甲虫共を包んで穏行術を行使して
進撃して来た為にガープ要塞側は把握出来なかった。
事実、カロニアが地上に出た途端に地中センサーに多数のハヴァロン甲虫の
反応が現れた。
即座に要塞表面の高X線レーザーや荷電量子ビームが攻撃を開始し
地表に出た甲虫を全滅させる。更に地面の下の甲虫も表層の虫は
全て撃滅した。だが地中深く潜った群れに対して攻めあぐねた。
通常空間、ましてや地中という障害物の先をエネルギー兵器で
攻撃するのは限界がある。そして地中の要塞外壁を守る感応地雷
を虫共は嗅覚で避けていた。隙あらばすぐに地表に出て攻撃し
即座に潜る行動を繰り返し始めている。
「地中対策については猛省が必要ですね。…移動可能な電磁レール砲の
予備は何台ありますか?」
「2台あります。」
司令室でウオトトスが確認すると戦闘員№100カタブツ君が
即答する。それに頷いて応えるとウオトトスは命令を下した。
「では魔力弾を装填して予備の電磁レール砲と共に第1、第2戦闘隊は
出撃、私も出ます。各隊は重機関銃に魔力弾を装備して下さい。確実に
迎撃します。」
即断で出撃を決めたウオトトス。魔力兵器を潰す事に成功した魔王軍は
遠慮なくデモールを要塞正門に進出させるだろう。絶対障壁に守られた
魔王軍のトロール隊やハヴァロン甲虫の群れ、そして砂怪カロニアが
要塞内に突入。要塞内で高威力の兵器使用に制限のあるガープ部隊は
圧倒的に不利だ。
入られる前に撃滅する。
デモールの結界が正門付近に達するまで100メートルを切っていた。
ウオトトス率いる戦闘部隊が正門に姿を現すと分厚い獄炎韻鉄の大盾
を構えたトロール隊がデモールの正面に並んで防護の構えを見せる。
正門前に展開し始めたガープ戦闘部隊にウオトトスは冷静に指示を出す。
「用意が整い次第に射撃を開始してください。射角を上にしてトロールを
無視しデモールを直接狙うように。」
「了解しました。ウオトトス指令は?」
「考えがあります。それを確かめる為に先行して仕掛けます。その隙に
電磁レール砲を配置してください。甲虫が要塞兵器の攻撃を承知で
特攻してくる可能性を考慮し慎重にお願いします。」
「了解しました。」
戦闘員№100のカタブツ君が応えると指示を出している間に全身を
ゲル粘液で覆っていたウオトトスは腹這いずりの姿勢になると一気に
トップスピードで内務公デモールに向け直進する。
「あらまあ……」
デモールが目を見開いている間に到達したウオトトスはトロールの1体に
攻撃開始。
(結果以内ですが……)
異様な速度でダークトロールに迫る。ダークトロールの攻撃をゲル粘液で
いなすとウオトトスはトロールの膝間接付近の鎧の隙間に直接噛み付いた!
そのままトロールの体内に溶解液を送り込む。すると……
「グギャ?!ナ、何ダコレハ?!」
屈強なはずのダークトロールの右足が溶け崩れ、悲鳴を上げて崩れ落ちる
ダークトロール。
「やはり体内に直接攻撃を加えたら結界の効果は無いようですね。」
(フフッ、デモールを直接狙えます。)
デモールの足元をがっちり防備しているトロール隊を避けて
何とか迫ろうとしていた。だがその目前に人型の砂の塊が現れ
ウオトトスの行く手を阻む。
「ガープ怪人に対抗出来るのは我ら闘魔将だ!砂怪カロニア押して参る!」
(さて、どう避けて進むか……)
カロニアに対し冷静に対処しようとするウオトトスにデモールの
嘲笑が届いた。
「見上げた行動力と判断力ですね。ですが失態のようで。流石のガープも
直前で与えられた私の力については調べきれなかった…貴方の負けですよ
ガープ怪人。」
デモールは両手を広げ無効障壁をコントロールする。すると半円形の
エネルギー障壁は様相を変え、幅はデモールの身体ギリギリで前方に
真っ直ぐ伸びる回廊に変形した。
無効障壁の回廊がガープ要塞正門まで届いてしまった!
「!!!!戦闘部隊後退せよ!!」
正門前に展開していたガープ戦闘部隊にウオトトスがインカムで出した指令が
届くのと足元から数十体の甲虫が飛び出して襲いかかるのはほぼ同時だった。
奇襲してきたハヴァロン甲虫に要塞外壁のレーザー砲や荷電粒子ビームが即座に
反撃を行うが無効障壁の回廊に阻まれ威力が届かない。
2門のうち1門の電磁レール砲が破壊された。そして合金スチールを食い破る
甲虫の大顎が直下から襲い戦闘員達にも次々と被害が発生。
負傷者多数、そして戦闘員№55が複数の甲虫に地中に引き込まれ№143が
2匹の甲虫に頭部と胴体を切断され倒れる。2名の戦死者が出たが戦闘部隊は
どうにか体勢を立て直すと無効障壁内でも効果がある魔力弾を装填した重機関銃で
攻撃を開始した。
「残ったレール砲を下げて保護せよ!下からの攻撃の無い正門内に後退し
銃列を敷いて反撃する!!」
ウオトトスの副官として隊を指揮していた戦闘員№100のカタブツ君が
電磁レール砲を保護しつつ後退を指示、そして最後尾で援護しつつ射撃で
甲虫を仕留める。
ハヴァロン甲虫の砂から出る頭部はクワガタムシの化物だが砂中の胴体は
アリジゴクに似て柔らか。弱点が判明してからは重機関銃で始末できた。
だが甲虫は数が多い。電磁レール砲を移動させていた戦闘員の1人に
甲虫が喰らい付いた。カタブツ君は攻撃されている№20を救援しようと
した瞬間、カタブツ君の足に激痛が走る。
「しまった!!」
甲虫に足を挟まれたカタブツ君は横倒しになりその胴体に別の
大顎が喰らいついた。
「副官殿!!」
「後退を止めるなぁぁ!!№13ゴルゴ、規定に従い君を暫定指揮官に
任ずる。任務を全うせよ!!ぐっ!ぐおぉ……」
その瞬間、戦闘員№100カタブツ君の胴体は大顎に切断され
意識が途切れた……
要塞正門の惨劇、その惨状に悲痛な気持ちで確認したウオトトスだが
戦いの最中であり心を整理し合理的に判断する。
(…全て私の判断ミスですね。犠牲は残念ですがレール砲は残り
隊も全滅せず退避出来ました。反撃能力の保持に成功し……)
腹這いずりで回避移動をしながら考えていたウオトトス。隙としては
余りに小さいものだったが闘魔将という存在を前にしては……甘かった。
荒野の大地に薄く同色の砂が広がっていた。ウオトトスの回避行動がそこを
通った瞬間、その砂が意思を持ったように動きウオトトスを包み込んだ。
意思を持ったような?否、それは確固とした意思を持っている。それは
広く散布されていた砂怪カロニアの体の一部だったのだ!!
「……しくじりましたか。」
膨大な量の砂が意思を持って寄り集まりウオトトスのゲル粘液を染込ませ
剥ぎ取って行く。ドロドロの粘液を奪い強くまとわり付く事で砂はウオ
トトスの手足の自由も奪ってしまう。
「ひひひひっ、我が闇影衆の諜報で貴様はドロドロ粘液を防御に使っている
事はお見通しだ!そうれ闘魔将をナメたツケは大きいぞ?くひひっ。」
ウオトトスは新しい粘液を次々と分泌しているがカロニアの砂はまだまだ
大量に有り早期の脱出は難しそうだった。
(捕らわれましたが……敵に攻め手はあるのでしょうかね?)
粘液を失ってもウオトトスにはダイヤモンド並みの硬さの鱗がある。
0.5㎜と薄いが相当の衝撃や斬撃など跳ね返すだろう。ウオトトス自身に
効果有る魔法は無く火炎や電撃を使えば砂怪カロニアも巻き添えだ。
ズドオオオオオン!!
そう考えていたウオトトスの背中に衝撃と途轍もない重圧がかかる。
「な?!」
ウオトトスの真上から内務公デモールの巨大な足が踏み付け、数十トンを超える
体重で踏み潰そうとしてきたのだ。
うつ伏せのウオトトス頭部と肩付近以外はデモールの靴の下となり凄まじい
重圧を受け続ける破目となった。硬度と剛性に優れたウオトトスの鱗だが
いかんせん薄い。重圧に耐え切れずビキビキと亀裂が入り始めた。
「私は小さい虫ケラを踏み潰すのが大好きですの。我が軍の処刑場で聖王国の
王族を順番に踏み殺したのは私ですのよ。虫ケラが足元で息絶える瞬間の恍惚と
愉悦は素晴らしくてよ?それに美しい私に踏み殺されるのは名誉。お前も光栄に
思いなさいガープ怪人。」
内務公デモールの戯言を完全無視して打開策を考えていたウオトトス。
(トロールの肉体を溶かした理屈を生かせば…)
ウオトトスは地面に噛み付き地中に溶解液の注入を開始した。
(仰向けで上を向けたならデモールの足を溶かせたものを…口惜しいですね。)
ウオトトスが地面を溶かし穴を開けて脱出する事を察したデモールは
「砂怪カロニア!!ガープ怪人の口を塞ぎなさい!」
「ええ?!ですが溶解液が……」
「誰も倒せなかったガープ怪人を最初に倒せた功績が私達の目の前ですよ!
圧倒的な名誉です!」
「……ええい、やってやる!」
溶け始めた地面の隙間からウオトトスの口にカロニアの砂が大量に入り込み
大地に穴が開くのを止めた。その代わりカロニアの砂が溶け始め毛細管現象
により溶けてない砂の方へ溶解液がどんどん染み出して来る。
「うひいぃぃぃ?!」
必ず一番大きな砂の集合体に在らねばならないカロニアの生命核である一粒の
黒い砂にも溶解液がじわじわ迫った。
「デモール閣下!!俺は離脱します!!よろしいですね?」
「駄目に決まっています。勝利は目前ですよ?」
「ですがっ!!」
「最初にガープ怪人を倒した闘魔将の称号が目前と言う事ですよ?」
「ううっ…」
自己顕示欲という欲望に揺れ逡巡した。それがカロニアの命取りとなった。
多くの砂が溶け総量が減ったためカロニアが思っていた以上の速度で
溶解液が黒砂付近に到達してしまったのだ。気が付いた時はもう遅かった。
声にならないカロニアの断末魔。しかしウオトトスにとってそれは遅すぎた。
グシャアア!!!!!!!!!!
嫌な音と激痛にウオトトスの意識が飛びそうになる。
「……尾と足の感覚が…無い。下半身が完全に潰れた…ようですね…」
その様子に酷薄な笑みを浮かべるデモール。彼女はカロニアの犠牲に1ミクロンも
関心を向ける事無く勝利に思いを馳せる。
(もう少しでコイツを殺せる。後はガープ要塞を占拠するだけ。……防衛機能を
麻痺させるため送り込んだザラ・ダンマーからの連絡が無いのが気懸かりですが
ガープ怪人さえ始末すれば要塞攻略は成ったようなものですね。)
デモールがグッと力を込めると足の裏からミシミシ、メキメキと音が鳴る。
潰れた下半身に続きウオトトスの上半身を防護する鱗も限界が近い。
「ほほほっ、さあガープ怪人を潰したらどんな色の内臓が飛び出すのか
楽しみです事。素敵な断末魔をお願いしますね。」
その時、デモールの至近で叫び声がした。
「「ウオトトスを虐めるな!!」」
「???!」
デモールが慌てて周囲を確認するが何も無い……かのように見えた。
実はデモールの目と鼻の先に激怒するソアとリルケビットが飛んでいたのである。
2人はミツバチサイズのままだったせいで大きさの違いからデモールに視認され
なかったのであった。
目も眩むばかりの体格差だが魔力の強さに大きさは関係ない。
2人は呼吸も魔力も憤怒の心をも完全同調させ必殺の統合大魔法
フェアリア・テリオンの呪文を練成、渾身の気合と共に撃ち放った!!
「「ぶっとんじゃえ魔王軍!!」」
至近距離から上級魔獣マンティコアや亜竜タラスクを即死させる必殺呪文が
何の魔法防御も無いデモールの柔らかい顔面に直撃した!!
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああ??!!」
ジュウウウウウウウウウウウウウワアアアアアアアアアアアア!!
熱した鉄板で盛大に肉を焼いたような轟音とデモールの絶叫が響き渡った。
無音ながら絶大な破壊力を持つフェアリア・テリオンはデモールの顔面を
粉砕した。鼻梁は叩き潰され前歯も顎も砕け散り、両目とも打ち抜かれ
眼底から脳にまでダメージが通る。砕いた上で焼き尽くされデモールの
美貌は悲惨な変化を遂げた。
「嫌ぁぁ!!私の美しい顔!!私の顔がああぁぁぁ!!!!!!」
生きているのが不思議、意識があるのは奇跡な状態のデモールだが
彼女にとってはダメージも痛みもどうでもよかった。たじろぎながら
両手で顔を覆うと必死に呪文を唱え始める。
デモールにとって一番大事なのは自らの美貌だ。苦痛を癒す為ではなく
顔面を蘇らせる為に全魔力を注ぎ治癒を開始するのだった。
それに全ての魔力を注ぐ以上、当然だが無効障壁は途切れる。
戦いの最中だった事さえ失念しているであろうデモールの足がズレ動いた
機会を捉えたウオトトスは意識が途切れそうになりながら渾身の力で上半身だけを
仰向けにすると最後の力を振り絞り溶解液カッターブレスでデモールの首を狙った。
シュキイイイイイイァァァァァ……
限界を迎えたウオトトスのカッターブレスの勢いは落ちていたが
障壁に阻まれる事無く装甲などで防護されてもいないデモールの首は
簡単に落ちた。横薙ぎのブレスに両手首と共に切り落とされた頭部は
悲惨な顔面を晒してボトっと地に落ちる。
無効障壁が無くなった事で要塞火砲群の攻撃が再開されトロールや
ハヴァロン甲虫は一気に撃滅され始めた。
「…………とりあえずは…勝利……ですね……」
意識が散漫となりつつあるウオトトス。目と耳も利かなくなっていく中で
泣き叫びながら自分の名を呼ぶ声が確かに聞こえた。
(ああ……あの2人を泣かせる事に……なってしまいますね…)
その瞬間、数十トンあるデモールの死体が轟音と共にウオトトスの頭上に
降り注ぎ彼の意識は消滅した……
三度目のガープ要塞攻略にも失敗した魔王軍。
デスダークロードに最後の闘魔将カロニア、そして四天王デモールを
喪う大敗。だが新勢力ガープ側も決して小さくない犠牲を払う戦いとなった。
戦闘員№20 昆虫博士 戦死
戦闘員№55 コント 戦死
戦闘員№100 カタブツ君 戦死
戦闘員№143 ガンコ一徹 戦死
下級怪人ウオトトス 戦死




