59 勇気のポーション
ゴォォォォンン…
ゴォォォォンン…
蒼空を行く巨大な艦船。魔力を動力とする魔道飛行艦艇が統率の
取れた隊形で進んでゆく。
まず横一列に飛行駆逐艦ゴリゾント級10隻が先行し前衛を勤め主力艦艇を
エスコートしている。
続く主力隊の飛行戦艦ケーロフ級が6隻、円形陣を組んで大型戦艦にして
艦隊旗艦であるポトムキン号を守っていた。
そして最後尾に補給艦や病院船など補助艦艇6隻が追随する遠征艦隊。
彼らは幾何学的な流星のマークが印象的なポラ連邦の軍旗を掲げていた。
これこそ新勢力ガープを討つ為に派遣されたコナイコフ提督の率いる
ポラ連邦飛行艦隊であった。
飛行戦艦ケーロフ級はラースラン空中軍の戦列艦に匹敵する巨大艦で多数
の魔道砲を備え火力重視の設計が特徴的な艦艇であった。
飛行駆逐艦はラースラン王国の装甲コルベットとサイズ的に同格。機動力も
同レベルの艦船だ。そして砲撃艦に匹敵する大火力を保有する強力な艦では
あるが装甲はペラペラで防御力に性能のシワ寄せが集中した飛行艦である。
そして突撃巡航艦エネルギア級が2隻、特別編成で合流してきて左右側面に
1隻ずつの配置で航行をはじめた。
飛行駆逐艦は装甲コルベットと砲撃艦に相当し飛行戦艦は戦列艦と同分類と
言って良い。だがこの突撃巡航艦という変わった艦種は他国には無い変種で
あった。
正面装甲を可能な限り強化して砲撃艦の艦首巨大砲と同レベルの魔道砲を
真横に向け左右に設置、まるでハンマーヘッドシャークのような外観の艦だ。
敵艦隊に全速突撃を敢行し、すれ違い様に真横から巨大砲をぶち込む至近の砲
撃戦を挑む。
特定の戦法に特化し汎用性が皆無の艦艇を製造し量産してしまう等、
ラースラン王国との空中軍の運用思想の違いが顕著に出た一例と言えよう。
何故この艦が編入されたかというと装甲強化改装を施された船だからだ。
ラースラン王国の最新鋭ギレネス級戦列艦の主砲は改装前のエネルギア級
の正面装甲を貫通してしまう事が判明し、現在の5ヵ年計画の軍事部門に
おいて装甲強化が図られる方針が進められている。今回の2隻はその改装
型の初陣なのだった。
よーするにガープの航空戦力の詳細が不明だから強化した艦を付けておけ、
という事なのである。
(ガープの飛行艦…事前情報では能力は未知数だが数は3隻。油断さえ
しなければ撃退可能だろう。我が方は1個戦隊25隻だ。)
戦艦ポトムキンの艦橋で思考を深めているコナイコフ提督。彼は歴戦の
指揮官であり輝かしい戦歴を誇る。ラースラン王国とポラ連邦が国境紛争で
局地的な空中艦隊戦を戦った際には初陣のネータン王太女を撃退した将帥と
して知る人ぞ知る人物である。
「間もなく国境を越え連邦外の空域に出ます。」
航海士の報告に頷く提督。だがその瞬間、先行する飛行戦艦の1隻が大爆発を
起こし爆沈した!!
「敵襲か!!攻撃の方角を確認せよ!」
指令を出しつつコナイコフ提督は遮光グラスを目に当て太陽を仰ぎ見る。
太陽を背にして奇襲の急降下攻撃の可能性を考慮したのだ。っが、敵影
無し。そうこうしている内に2隻目の戦艦が轟音を上げ爆散してしまう。
「周囲に敵艦確認できず!!」
監視要員の報告にも緊迫感が張り詰めている。
「魔道レーダーの反応はどうか?」
「し、周囲20ケロン(16km)に反応無しです!」
「チッ、こんな時に作動不良か!!全艦に伝達信号!!雲に入れ!」
新兵器の魔道レーダー。だがまだ配備が始まったばかりで初期不良が
頻発していた。故に提督もこの時はそう考えたのだ。
しかし現実には彼等を襲った敵、ガープ艦は魔道レーダーの索敵範囲を超える
遥か遠くに存在していた為に探知出来なかったのである。
衛星システムが使えるようになった事で長射程の巡航ミサイルや対艦ミサイルが
使用可能になったガープ艦はポラ連邦艦隊から230kmも離れた場所から対艦
ミサイルを使ってのアウトレンジ攻撃で一方的な艦隊戦を仕掛けていたのである。
ズガァァァン!!!
対艦ミサイルにとって雲など目くらましにもならぬ。艦隊旗艦ポトムキンが
爆沈しコナイコフ提督は乗員達と共に大空に散った。半数にまで減った艦隊
は旗艦を失った事で士気が崩壊。各艦バラバラに敗走しポラ連邦艦隊は国境を
出た瞬間に敗北した。
最初の対艦ミサイル命中から僅か10分間で艦隊戦は決着し聖戦連合軍は
上空援護を失ってしまったのである。
○ ○ ○ ○ ○
威風堂々と行軍する聖戦連合軍。20万余の大軍勢ともなると
その隊列だけで何kmにもなる長蛇の行列となる…
交易都市メザークから攻略目標のガープ侵略基地まで8.9km。
最後尾がメザークを発する頃合で先頭は攻撃目標を目視出来る位置まで
到達していた。道中も渋滞する事すらなくスムーズに移動する事が出来た。
何しろ大陸有数の規模で非常に整備された西方大街道だ。そこを数キロ直進し、
ガープが設置した通称『黒の街道』に進出する。真新しいアスファルトで舗装
され白線が引かれた幅の広い道は並みの街道より充実し整備が行き届いている。
何せ開拓民が歩行する農道と交差する場所には横断歩道まで引かれているのだ。
伏兵や罠を警戒し偵察専門の傭兵団『捉える瞳』が先行し警戒しながらの
行軍だが何の問題も無く進撃は進み、これほどの大兵力が何の問題も無く
僅か半日で全軍が戦場に到達する事が出来た。通常ならそれだけで快挙だ。
聖戦連合の将兵達が見つめるガープ侵略基地の威容。
堅牢な防御力を予見させる堡塁の向こう、主郭の中央に聳え立つ
謎の巨大建造物の迫力に言葉無く兵達は凝視するばかりであった。
黒く輝く金属で出来た窓一つ無い巨大な四角柱。一辺が50メートル、
高さが80メートルはあるそれは日本人が見れば巨大な墓石に見える
形状で正面には巨大なガープの紋章ガープ・アイが赤い光を放っていた。
「報告書にあった通りの威容じゃ。しかし直接見るとやはり違うのう。」
「まったくですな。」
大アルガン帝国軍を率いるメルタボリー皇女にポラ連邦軍のボロザーキン将軍が
応える。敵基地前面に到達した連合軍は計画通りに陣を敷いた。
主攻勢軸を担当するのはゼノス聖堂騎士団と大アルガン帝国、そしてポラ連邦で
あった。義勇軍と個人参加の高レベル戦士もここに加わりその正面兵力は14万
8千。側面から攻めるのはロガー獣人族連合とクレギオン公国、タンバート王国
と傭兵団も加わり6万余、後方との連絡線の維持や鉄の要塞よりのガープの増援
に備えバーマ共同軍とクー・アメル朝が戦略予備として配置に付く。最終局面で
の総攻撃には参加予定だ。そして最高ランクの『君臨者』に率いられた高レベル
冒険者の隊が特殊任務に就く準備を進めている。
今、ゼノス聖堂騎士団の天幕において主攻勢軸に参加する部隊の司令官である
聖堂騎士団のゴーザー団長とメルタボリー皇女、ボロザーキン将軍に五大賢者の
赤玉の賢人ラーテと緑玉の賢人パオロが最終打ち合わせを行っていた。
側面から攻撃する副攻勢軸の方でも同様の事が行われているはずだ。
この連合軍には総司令官はいない。合議により作戦の意思統一
を成して置く必要がある。
「神聖なる攻撃開始は正午を期すように大神官は告げられました。」
大神官コロシアが遣わしたハイプリーストが頭を垂れて聖なる戦いを開始する
時刻を告げそれに頷くメルタボリー皇女。
「では正午を持って我がゴーレム隊がガープの小癪な罠を暴くとしようぞ。」
それを受けて、
「ガープの罠を潰したら我が聖堂騎士団は全力突撃し神の敵を殲滅しよう!」
「『連邦軍戦術教範』の攻城戦教例に従いポラ連邦軍は防御前進を行います。」
「……防御前進でどこまで進むつもりかの?ボロザーキン将軍殿。」
ゴーザー団長にはあえて反応せずポラ連邦のボロザーキンに尋ねる
メルタボリー皇女。
「敵侵略基地から5リケロン(400m)までと考えています皇女殿下。
敵の火器の射程が不明なので我が軍のそれの射程の3割り増しに計算し
決定いたしました。」
「なるほどのう。リケロン、連邦の単位じゃな。この地図だと……」
「こちら側から見て4列目の柵付近になります。」
「ぬはははははっ!貧弱な敵の柵など我が騎士団が踏み潰してしまいますぞ?
別の目印を考えられてはいかがか?のうミルスよ。」
「はい。聖堂騎士団は屈強にございますから。」
ゴーザー団長は傍らの少年従者の細い腰を抱き寄せ豪快に言い放つ。
彼は常にミルスという名の美しい少年従者を伴っていた。これほど
重要な会合でも例外ではない。
「ガープの罠が消滅し皆様の軍が前進を開始した頃合で我々が敵基地への攻撃を
開始しましょう。魔法力に乏しいガープ勢力は満足に対抗出来ますまい。」
緑玉の賢人パオロが自信たっぷりに発言した。
「御二方が超魔法文明の兵器を携えて来られたのか?」
手ぶらに見える賢人達にボロザーキン将軍が尋ねる。
「無論、我等も用意をしています。ですが黄玉のシスが準備している超魔法文明
・魔法帝国グレイゼンベールの超兵器『ニル・ピラムス』が稼動すれば阻みうる
存在などありますまい。」
「おおおっ…」
こうして五大賢者の援護の下での正面攻撃の手順が確定する。主攻勢軸が戦闘を
開始し敵の意識が指向したタイミングで側面を副攻勢軸の軍勢が攻め掛かる。
兵力差を鑑みれば負ける要素は無い。ただ新勢力ガープの能力が未知数なのが
不気味であった。
「皆さんの不安を払拭する最善の手段を用意しました。」
赤玉の賢人ラーテが高らかに言い放つ。
「恐怖心を取り払い大幅な身体強化が出来る『勇気のポーション』これは
超魔法文明の英知によってのみ調合可能なSSSランクの魔法薬です。」
「コストを度外視して我等は10万人分を御用意いたしました。既に聖堂騎士団
の皆様の手を借りて各陣営に届けさせております。全軍という訳にはいきません
でしたがそれぞれの精鋭隊に配布して頂きとうございます。」
「ほほう、豪勢な事じゃ。もう聖堂騎士団の方々は飲み終わったのかの?」
「まさか。我等は英雄神と信仰で強く結ばれております故に勇気充分!!この
勇気のポーションは全て共に戦う友軍の方々に配布させていただきましたぞ。」
メルタボリー皇女の言葉に高らかと応えるゴーザー団長。一瞬だけ険しい表情を
見せる皇女だったが感情を抑えて苦笑し、皮肉を込めて言い放った。
「聖堂騎士の志は何とも無欲な事よの。妾も頂戴した魔法薬を丁寧に扱わねば
ならぬようじゃ。」
「さようにございますなメルタボリー皇女殿下。」
美少年の従者を抱き寄せるゴーザーへ侮蔑の視線を向けるメルタボリー皇女に
聞きなれた声が掛けられた。
「そろそろ打ち合わせが終わる頃と考えお迎えに上がりました皇女殿下。
素晴らしき勇気のポーションがドンドンと我が陣営に運び込まれており
ますれば急ぎお戻りあそばされ配布の指示を賜りたく。」
戦地とは思えぬ満面の笑みを浮かべたザン・クオーク選帝侯である。
(何とも胡散臭い男だな。)
重要な議題がすべて済み、ポーションの話で会合が終了するであろう
タイミングで測ったように登場したザン・クオークを不審げに見る
ボロザーキン将軍。だが軽く頭を振り自身も退去する用意をするのだった。
とにかく会合は終わったのだ。後は開戦を待つのみ。
「「「勝利の栄光を我らの手に!!」」」
全員で唱和し各人は自陣へと散る。
だがその時、胡散臭いザン・クオーク選帝侯がボロザーキン将軍に
駆け寄り胡散臭い小声でささやいた。
「急いでお戻りされた方が宜しいでしょう。でないと間に合いませんぞ。」
「??」
悪寒が走る。ボロザーキンは全力で駆け出した。実年齢は43歳だが
ハーフエルフの彼は少年の身体をしている。息を切らしてたどり着いた
自軍陣営では……
「おや、ボロザーキン少将、作戦会合の首尾はいかがでしたかな?」
「…ナグルガスキー大佐、その手に持っている空ビンはもしや…」
ナグルガスキー大佐は小指サイズの小さいビンを掲げ、
「SSSランクの魔法薬ながら無味無臭で殆ど無色透明とは不思議ですな。
ですが確かに強力な魔力が込められているようです。」
「勇気のポーション!あとどれくらい残っている?」
「もう無いですな。私が指揮する親衛第7旅団の1万でちょうど全て
消費しました。ボロザーキン少将や混成師団に回す余剰分はありません。」
「な、何だと?!」
「第一級国民である『ポラック民族』出身者で構成された親衛第7旅団や私が
優遇されるのは当然。三等国民のハーフエルフや下等種族師団が文句を言う資格
は無い。身の程を弁え頭に乗らぬ事だ。」
ポラック民族
人間種であり混血も進んでいるが元はポラ連邦を樹立した異界から渡来して来た
人々の子孫である。頭髪は様々だが銀色の虹彩を特徴とする瞳を持ち、ポラ連邦
において第一級国民であり第二級国民の通常の人間種より上位に位置付けられた
連邦の特権民族であった。
「っ!!…」
元々弱い立場である。言い返す言葉すら噛み殺すボロザーキンをナグルガスキーは
冷笑を浮かべ見下ろすのだった。
一方、大アルガン帝国軍陣営に戻ったメルタボリー皇女に側近のソバスチャンが
恭しい態度で勇気のポーションを差し出した。
「妾は飲まぬ。下げよ。それと決して我が軍の将兵にも配布してはならぬぞ。」
「は?!いや、しかし…」
「それより聞けソバスチャン。攻撃は正午と決まった。全部隊に早めの食事を
供してやれ。食うのは良いものじゃ。」
「皇女殿下に言上つかまつります。これなるポーションは超魔法文明の結実たる
勝利の妙薬。確実に生き残り聖戦を勝利で飾るに……」
「くどい!!2度も言わせるな!!そのポーションは誰にも飲ませるでないぞ。
よいなソバスチャン。」
「…おおせのままに。メルタボリー殿下。」
カッ カッ カッ
自他共に認める忠臣ソバスチャンが意気消沈して通路を行く。
(未知の敵ガープ相手に勝ち残る手段を1つでも多く積み上げねばならぬ。
超魔法文明のポーションなれば確実に力になる…)
「心中お察ししますぞ。ソバスチャン殿。」
「これはザン・クオーク選帝侯殿。お見苦しい姿をお見せして申し訳ない。」
「自信溢れる主君とは時に忠臣の諫言を聞かず危機に陥る事が往々にしてある
ものです。もっとも頼りとすべき者を蔑ろにする方の未来は暗い。」
「それは……しかし殿下の意向に従うのが家臣というもの。」
「破滅へと向かう主君を救う為に苦渋の決断をするのが真の忠義では
ありませんか?ソバスチャン殿。」
ずずいっと前に出てソバスチャンの耳元で囁くザン・クオーク。
「幸いな事に『勇気のポーション』は無味無臭で透明な薬。そして間もなく
全部隊と皇女殿下に食事が供されます。ここが決断の時かと……」
目を見開き固まるソバスチャン。ザン・クオーク選帝侯が暇の挨拶をして
立ち去る事にも気が付かないまま彼は深い思考に沈んでいた。
勇気のポーションは他陣営でも場を騒がせていた。
ロガー獣人族連合の陣営では黒ヒョウ獣人のガック隊長やヒグマ獣人の
ハニクゥード隊長が怒り心頭となっている。
勇気のポーションを運んで来た聖堂騎士団。その上級騎士の数名がロガー司令部
の天幕にもポーションを持参しやって来た。そして獣人連合軍の幹部達にポーシ
ョンを手渡しで配ったのだ。受け取ったポーションをさっそく飲み下すサダン司
令官の耳にガック隊長とハニクゥード隊長の怒号が聞こえた。
「てっめえら!!何でペピート将軍を無視するんだよ!!」
「は?将軍?このチビのウサギ獣人がですか??」
ポーションを受け取ろうと手を伸ばし、何も貰えず固まっているペピートに
対して疑念の視線を向ける聖堂騎士団にロガー側の表情が一気に険しくなる。
「ポーションは限られており実際に戦闘する方を優先するよう申し付かって
おりますので。それにウサギ獣人を召使いではなく将軍にするなど酔狂も…
あ、ヒイィィィ!!」
ペピートを召使い呼ばわりされてサーベルタイガーのラゾーナ将軍が牙を剥き
激怒し、恐慌をきたした上級騎士共は転がるように立ち去った。
「無礼な連中だな。ガック隊長、すまないが外でペピート将軍の分のポーション
を確保してきてくれないか?」
「がってん承知!!」
サダン司令官に命じられガック隊長が飛び出そうとした時、ペピートが
待ったをかける。
「待ってくれ。それは兵の分だ。不愉快な連中だったが言い分にも一理ある。
後方で指揮する俺より前線で戦闘する者にポーションを与えるべきだろう。
だから俺の分は不要だ。」
そう言ってペピートは頑としてポーションを受け取らなかった。
またガック隊長とハニクゥード隊長、その配下達のペピートの直属部隊も
経緯に激昂しポーション服用を拒絶。薬を他部隊に回してしまう。それを
後で知ったペピートに叱られる事となるのだった。
そしてクレギオン陣営。
公女の陣幕においてマウリッツ軍監が難しい表情で手に持った
勇気のポーションを凝視している。
それを悲しげな目で見ていた公女サニアは小さく息を付き、
「貴方がそこまで神聖教会と五大賢者様を疑うなら仕方ありません。
その勇気のポーションは私が飲みま…え?!」
サニア公女が替わりにポーションを飲むと言った瞬間にマウリッツが
勇気のポーションを一気に飲み干した。
「私は神聖教会も大賢者も信じない。俺が信じるのは貴女だけだ。
戦いの結果がどう転ぼうと貴女だけは必ず無事に祖国に帰還させてみせる。」
マウリッツは不敵な笑みで言い放つとポーションの空き瓶を地面に叩きつけ
意外に派手な破壊音を立ててポーションの瓶は砕け散った。
結局、勇気のポーションは列強国だけに配布され小国や傭兵団には存在すら
知らされていなかった。巨大な聖戦連合軍は内部に軋轢の萌芽を抱えながら
戦闘態勢で配置に付く。そして…
ザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッザッ!!
20万超えの兵士がガープ侵略基地を見つめ一斉に盾を構え抜刀した。
間もなく決戦開始となる正午を迎える。




