4 ゾンビ攻防戦と見つめる者
ガープ内部での会話パートのイメージBGMはヤッター○ンのド○ンボー一味のインチキ商売の曲で戦闘パートBGM はラストハルマ○ドンの戦闘曲Ⅰをイメージして書いています。
ゴオオオオオオオオオオオッ、、、、
ゴオオオオオオオオオオオッ、、、、、、、
戦闘員達の携行する火炎放射器が紅蓮の炎を猛烈に吹き出し蠢く死骸を
火葬してゆく。
「ふむ、やはり重機関銃よりも火炎放射器を主武装に据えた方が抜群に効率が
良いのう。」
「…可能じゃなかったな。敵の殲滅。もう4日目なのにキリが無いわ。」
そう、この世界に転移して来てもう4日間、夜になると平原を埋め尽くす
ゾンビが出現し暗黒結社ガープは総出で対処を余儀なくされていた。
ガープ側も負傷した戦闘員達や怪人も回復し戦闘に参加しているがとにかく
敵の数が尋常ではない。
「なあに、敵は確実に勢力を落としておるわ。時間当たりの数が初日の半数
以下じゃし、腐敗が進み鮮度が落ちたゾンビの比率が増えた。」
「要するにこの地域のゾンビの原材料が尽きそうって事だな。それに気持ち悪い
だけで敵の戦力も殆ど脅威にならなかったし。」
教授の解析によって得られた敵の強さ。
屍毒を持ち痛みを感じず突いても斬っても怯まない。
無意識のセーブが無く体力を使うので怪力。
しかし、腐りかけの肉や骨格標本のような体なので脆く
戦闘員が持つ重機関銃の掃射で簡単にバラバラになる。
もっとも上半身をふっ飛ばしても下半身だけで歩いて来るなど
機関銃では二度手間になりがちなので火炎放射器に切り替えたが。
12・7ミリの重機関銃でさえこれなのだから怪人モーキンの
鉤爪斬撃を受けたゾンビはマグナム銃で撃たれた水風船のように
木っ端微塵となっていた。
「戦闘員の部隊だけで充分に対処できたかもしれんのう。」
ガープ戦闘員
怪人製造技術を応用した超強化人間。
身長2メートルほどの人型で細マッチョにも見えるシルエット。
身体は甲殻類のような薄紫色の外殻に覆われている。
モノアイのシンプルな頭部と相まって機能美があるサイボーグの
ような姿だ。
体重は常人の2倍はあるが筋力は5倍を超え高い運動性能と反応速度
を持つ。その筋力を生かして常人では1人で持つのが難しい重機関銃や
ロケットランチャーをまるで小銃のように装備して暴れまわる。
外殻も高い防弾性能を備えるがその上にプロテクター付きの戦闘スーツと
フルフェイスのヘルメットを装備するので高い防御力と生存性を持つ。
「怪人や戦闘機ハイドルまで投入するのは過剰戦力じゃったか?」
「そんな事ないッスよ死神教授。やっぱ怪人が居た方が効率が
段違いッスよ!ほら。」
ちょうど交代で戻って来た怪人モーキンが指差すモニタースクリーンに
今まさに外で別の怪人がゾンビの群れをまとめて蹴散らす様子が映っていた。
魚、それは魚に似ていた。最恐の淡水魚とも呼び名も高い通称ムベンガ、
本名はゴライアスタイガーフィッシュと呼ばれる獰猛魚を3メートルの
大きさにして手と足を生やしたような姿。
怪人ウオトトスである。
ウオトトスは牙だらけの恐ろしい口を開くと細い糸状の水流をブレスの
ように撃ち出す。ウオトトスのブレスは超高圧ウォーターカッターであり
厚さ30cmの鋼鉄を簡単に切断してしまう。
しかもカッターとして撃ち出すのは水ではない。強酸の溶解液だ。
フッ酸より遥かに強力な溶解液で少量でもアフリカ象などに浴びせかければ
約3秒で骨も残さず溶けて無くなってしまう。人間など飛沫を浴びただけ
でジ・エンドだ。
その溶解液カッターブレスを横に薙ぎ払うように吐いて数十体のゾンビを
まとめて始末してゆく怪人の姿はモニター越しでさえ畏怖を感じる。
「やっぱウオさんパネェッス!!あの液は浴びせられたく無いッス。」
「あの溶解液は大気に触れ反応すると10秒ほどで無害な物に
なるがの。でなくば地面に落ちた液が地中深くどこまでも溶かしてゆくわ。」
この会話中もカメラが次々と切り替わりモニタースクリーンには外の戦況
を伝えるべく様々な場面が映る。ふいにウオトトスの最恐顔がアップになった。
「いや~自分が言うのも変ッスけど、怪人ってやっぱバケモンッスねぇ!
マジおっかないッス。」
モーキンの軽薄な言葉に即座のツッコミが後ろから入った。
「アウトや。予防線に『自分が言うのも~』って言うても特大ブーメランが
グッサリと突き刺さっとるがな。」
モーキンが振り返るといつの間にか別の怪人がそこにいた。
ずんぐりした身体に太い手足。巨大な甲羅を背負いワニガメを凶悪にした
ような面相。背中の甲羅の真ん中よりやや前方の位置に長く太い
ヘラクレスオオカブト虫の背のツノのような突起が付いている。
甲羅のツノ突起は水晶の様な円柱を外殻が覆っている大砲のような形状だ。
怪人カノン・タートル
生体器官としてビーム砲発射器官を持ち、個体として最大級の火力を持つ
準戦略級の怪人だ。
背中に持つのは重陽子砲でいわゆるプロトンビーム砲である。拡散させ細かい
熱線をシャワーのように発射する事も出来れば収束させ極太のプロトンビーム
を放つ事もできる。
プロトンビームの破壊力は直撃すれば航空母艦を一瞬で蒸発させる威力があり
シャワー状の熱線も装甲車両を爆散・消滅させる程度の威力を持つ。
単体の怪人ながら威力は要塞に取り付けられているビーム砲塔より上なのだ。
ただし、
代償として機動力や体力は全怪人中の最下位。かろうじて防御力だけは
及第点という長所と短所のはっきりしたアンバランスの取れた怪人であった。
「いや、カノンさんの欠点は関西弁になっちゃったって事ッス。前みたいに
威圧感ある喋り方で語尾にキャノーン!!とか叫んでた方が怖かったッスよ。」
「人の黒歴史をほじくらんといて。」
「悪い悪い。んじゃ俺は休憩させてもらうッス。」
「ふむ、カノン・タートルか。何事じゃ?まだ第3戦隊の出撃まで間がある
はずじゃ。無駄の嫌いなお前さんが来た以上なにか用件があるじゃろ?」
「返事の催促ですわ。6時間前に兵站局が出した戦況を鑑みての弾薬節約
の提案についての。了承なら認可も貰える様に書類も持参で出頭ですねん。」
こう見えて実はカノン・タートルは兵站・生産部門の所属スタッフなのだ。
元々が優秀な後方担当者としての組織参加だったのが遺伝子検査で怪人適正
を持つ事が判明し、掛け持ちで前線と兵站の双方の仕事をする怪人となった。
「敵は数は多いけど弱っちいんで、弾薬の使用量を絞って貰いたいですわ。
戦闘機が使うとるクラスター爆弾とか自走地雷とか生産コストが掛かるの
使わんでも楽勝やないですか。」
「ううむ…。」
「原料となる資源の確保も見通しの立たん状態やし、ここは節約でっせ
死神教授。」
「参謀としても兵站局の提案に賛同しよう。弾薬を大量に使う必要の
ある強敵が現れたとき弾薬不足に陥っていたら目も当てられん。」
烈風参謀の口添えもあり教授は兵站局の提案を採用する。
「よかろう。戦局は安定しておるし問題無いじゃろ。」
「おおきに!!もし火力不足になったら自分が残業でプロトンビームを
ドカドカ撃ちまくりますよって♪」
「残業はせんでいい。このまま戦況が推移するなら問題ないわい。
わざわざ催促の為に出頭させてすまなかったの。お前さんはよく
働いとる。時間を見つけて休息は充分取ってくれ。」
「おおきに。何か気ぃ使わしてすんません。教授もお忙しかった
んでしょ?検討時間を考えてもずっと内線での返事が出来なかった
ほど手ぇ離せんかったんと違います?」
「まあな。実は敵の解析として前線から持って来たゾンビどもの
腐肉から細胞サンプルを取りゲノム解析しておったんじゃよ。」
「うへぇ…。」
「お前さんも前線で戦っていて思わなかったか?明らかに人間ではない
者のゾンビが混じっとったじゃろ?」
「そう言うたら、確かに変な体型しとったり妙にデカかったりとかする
ゾンビが居てたなぁ。あと何かの動物のゾンビも。メッチャ腐っとった
から元は想像もつかんかったですけど。」
「うむ。そうだな。だからワシはゲノム解析で生前の姿を復元してみた。
今モニターに出すから少し見てゆけ。」
最初に直立した若い男性の画像が幾つかの数値と共に出た。
「見ての通りほぼ人間じゃ。地球のコーカソイドに近い特徴が
あるのもこの地域の緯度と気温から北方に近い事が推察される
からと考えられる。、、、だが。」
「髪の毛、めっちゃ緑でっせ。アニメのキャラみたいや。」
「そうじゃ。他に人間と思われるサンプルを21例ほど調べたが
体毛の色が青や緑、真紅などで地球人のような茶色や黒の毛色は
1例も居なかった。」
次に表示されたのは2体。
1体目は全体的に細身で耳の先端が尖っている。銀色の頭髪
でそれ以外の体毛の無い華奢な種族。
2体目はずっと背は低いが恐ろしい筋肉量で体力は1体目の倍は
ありそうだった。毛深く濃い紫色の頭髪と見事な髭を生やしている種族。
「何ちゅうか『定番』やと思うわ。」
「将軍と同じような事を言うのう。ゲームか何かの話だそうじゃが、
次を見たらお前さんも『定番の悪役かよ』と言うのか?」
2体目、3体目が消え4体目の復元画像が表示される。
やや大柄ながら人間サイズで肌色が暗灰色。顔は猪か豚を連想する
逞しい体躯の種族だ。
「将軍の感想に以下同文。」
ふん。
死神教授は面白く無さそうに鼻を鳴らし、
「問題は次の連中じゃ。生きた個体に遭遇する可能性がある以上、
今後の方針に組み込まねばなるまい。」
次の復元からは大きさを比較する為に同サイズの人間の画像と同時に
表示されていく。
いきなり人間の倍近い身長3メートルはある雄牛に似た頭部を持った
種族。
次はライオンのような身体に蝙蝠の様な翼と蠍の尾を持つ獣。
そして人間より遥かに巨体で赤い鱗と翼を持った大トカゲのような
巨獣。
存在する事が判明した恐るべき怪物たちに怪人は絶句するのだった。
同時刻
時空要塞から少し距離のある低い丘の頂。
アンデッドの大群とガープの戦闘部隊の戦いを見ている者達が居た。
互いにアンデッド避けの聖水を浴びせ掛け、気配遮蔽の魔法を掛けて
草むらにしゃがみ潜む者達。
謎の鋼鉄の巨城の前で無数のアンデッドと恐るべき破壊力を持つ
謎の集団との激闘。遠見の魔法越しにも伝わる凄まじい戦い。
もし発見され攻撃の矛先が自分達に向けられたら破滅しかない。
息を潜め勇気を振り絞り彼らは一部始終を見届けていた。




