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36 魔王軍の四天王VS秘密結社の大幹部

新年あけましておめでとうございます。


ガープ空間


それは物理空間ではあるが次元断層により一時的に

三次元空間とは切り離された擬似亜空間である。


ドーム状の内部は直径50メートル程。僅かな空間に

過ぎない。


だが明らかに外部とは隔絶した一つの世界、異様なる

別天地だった。


外部の様子は極彩色のオーロラのような次元の壁に阻まれて

よく見えずフラッシュのような閃光が奔る薄暗い空間、足元

に地面らしきものはあるが腰辺りまで昇る霞のせいでよく見えない。



重力も大気組成も全く違うその暗き場に対峙する巨頭たち。



全身から死と破壊のオーラを放射し隙無く大剣を構える漆黒。

魔王軍四天王のインプルスコーニの姿はまさに暴虐たる巨悪。


対するは秘密結社の大幹部にして最上級怪人と化した死神教授。

両手と触手を広げた姿は他に言いようも無いほどの邪悪の権化。



巨悪VS邪悪




先に動くは武闘公インプルスコーニ。その周囲の霧が音も無く吹き散った。



     !!!キーン!!!



闇澱む空間に澄んだ音が一つ。その後に武闘公の気合が轟いた。


「絶技!!闇刻一閃!!」


初手で最大の必殺技を繰り出した武闘公インプルスコーニ。

数多の敵を屠り去って来た大技の名は闇刻一閃。かつてこの

技を用いて倒せなかった敵はただ1人、勇者ゼファー。


武闘公の闇刻一閃と勇者の剣技、『福音の聖撃』が激突した時、

武闘公の持つ闇剣ヴァイイが折れ砕け勇者の聖光剣ディンギルの

力の一部が永遠に失われた。結果、双方が痛み分けとなった戦いだ。


いま武闘公が使っている大剣も強力な剣だが闇剣ヴァイイに比べ

数段落ちる。その意味では万全とは言えぬかも知れぬ。だが…


ギリッ…


歯噛みするインプルスコーニに平然とした死神教授の声が届く。


「これはまた恐ろしい斬り方じゃな。理論的に説明がつかん

攻撃とは実に興味深いわい。光の速度をあっさり凌駕とはな。」


闇刻一閃


一言で表せばただの一振りにすぎない。ただし斬撃を終える時間が

0秒・・、もしくは限り無く0に近い無時間で剣を斬り終える攻撃。

それは時間操作ではない。おそらく時間停止より凄まじい。


「そんな速度で剣先が動く。一瞬とはいえ物質がそれほどの速度で

動けば途方もないエネルギーが発生するがそれさえも全て敵を切断

する力に変えておるか。その技を使えばジェノサイダーガープや要

塞も簡単に破壊できたじゃろうにのう。…連発できん技かの?」


「…貴様、一体どんな手品を使っている?」


発言する声に合わせ触手が脈動し不気味に眼を明滅させる

最上級怪人アーマーテンタクル姿の死神教授。その無傷な

姿に殺気を迸らせるインプルスコーニ。


「この期に及んでホログラフィーなど使っておらんよ。殺気?

とやらで分かるんじゃろう?」


ズシャアアアア!!!!


闇刻一閃ほどのデタラメさはないが強烈を極める一撃を

無言で放つ武闘公インプルスコーニ。


放った武技は幻幽崩斬。霊魂やエネルギー生命、アストラル体など

非実体の存在を斬り捨てる技である。


魔力を乗せ発動するスキル、言霊を発し技を確実に発動する

ために技名を発音する必要がある。だが技が不発となる可能

性を承知で無言で繰り出し武技の使用を読まれないよう攻撃

を仕掛けたのだ。そして武技は見事に発動し命中。だが…


「無駄じゃ無駄じゃぁぁ!!」


「ぬうぅ!!この世とあの世の狭間にいる霊体すら斬り捨てる

我が剣技が通じぬだと!!」


「狭間じゃろ?片足をこっち側・・・・に突っ込んどる存在と

物理宇宙のに在って像だけ投影している我が身とを

比べるでないわ!!」


触手を振りかざし叫びながら迫るアーマーテンタクル。


その身体は生体亜空間制御器官によって虚数構成体へと変換され

この物理宇宙から完全に切り離された虚数空間に存在が移っていた。


まだ立体ホログラフィーの方が実体に近いと言える。理論的にあら

ゆる攻撃や干渉は不可能なのだ。しかも…


グニュルルルルル…!!!


 ザッ!ジュワン!!


「うぬぅ?!」


アーマーテンタクルの鞭のような触手攻撃、半ば幻影のような存在

だと考え始めていたその攻撃に対してインプルスコーニの回避行動

は精彩を欠き、鎧の肩アーマーに僅かに掠った。その瞬間、その部

分の鎧が消滅する。


極限まで魔力付与された獄炎隕鉄の鎧が、だ。


グニュルルルルル…!!!

 グニュルルルルル…!!!


攻撃が当たる瞬間、コンマ0.00001だけ接触面を虚数基から

実数基へと変化させ実体化し必殺『分子結合崩壊』攻撃を仕掛ける

アーマーテンタクルの猛攻を回避で凌ぐインプルスコーニ。一方的

な攻防が続くが魔王軍四天王たる者、既に勝機を見出していた。


「なめるなぁぁぁ!!タコジジイ!!!」


「ぐぬぅ!!」


飛燕のようにインプルスコーニの剣先が翻り暗褐色の刃が

悪しき輝きを放つ。


見事なる一撃。迫っていた触手の一本が斬り飛ばされた!


触手が実体化するコンマ0.00001の僅かな時間のうち

更に分子結合崩壊攻撃を発動するまでの、コンマの中のコンマ、

一瞬と言うも愚かしい刹那の瞬間に斬撃を放つ神技。


ビチィイイイ…ピチピチ…ピチピチ…


縦から斜めに切断された触手。うごめき跳ねるソレを即座に

痛覚神経を遮断し唖然として見るアーマーテンタクル自身。


虚数構成体を維持する複雑なエネルギー循環を管理しコンマの

攻撃タイミングを計るのは全てアーマーテンタクルの頭脳だ。


論理思考や自我とは別に異常に高められた演算処理能力。それは

脳の未使用部分を開放した上に外宇宙からもたらされた生体兵器

技術によって造られた超シナプス細胞によって増量された脳の力

でスーパーコンピュータ並みの5ペタフロップスの演算速度を持つ。


その頭脳は確率論的に偶然の命中が触手を斬ったと結論付けていた。

しかしこの異世界に転移して魔法という未知の存在を知り新たな経験

を経たアーマーテンタクルこと死神教授の理性は即座に考えを改める。


「…凄まじい技量よのう。」


左腕の触手の一本を失い余裕をも失った声でアーマーテンタクルが

賞賛する。同時に明滅していた瞳が赤く輝き全力投入の構えを取った。



甘く見て同じ攻撃を繰り返したら確実に敗北する。


そう確信していた死神教授には既に余裕はない。もうすぐガープ空間

の消失時間に到達する。通常空間で虚数構成体を維持出来るのは1分

間だけ。ガープ空間を再展開する隙など武闘公は与えてくれまい。死

神教授は全力攻勢に出るつもりだ。


一方の武闘公インプルスコーニも限界が近い様子である。

余りにも違う大気組成と重力は深刻なデバフとなっていたのだ。


魔素が皆無、そして酸素も皆無な上に彼だけ3倍の重力がかかっている。

インプルスコーニにとってもこれほどの苦境は過去に数えるほどしか経験

していない。次で確実に決着を付けるべく残存する魔力を可能な限り活性

化させた。


その時、何の前触れも無く音も発てないままアーマーテンタクルが

増えた・・・。2分身や3分身どころではなく12体もの分身が現れて

各自バラバラに動きながら武闘公を包囲し襲撃する。


13体のアーマーテンタクルが一斉に数十本の触手で攻撃をかけてきた。

インプルスコーニは剣を構えたまま微動だにしない。


だが、


インプルスコーニが不動の姿勢のまま周囲の霧だけが竜巻のように

激しく渦巻いたかと思うと爆風のように拡散した!


     !!!キーン!!!


「絶技!!闇刻一閃!!」


インプルスコーニの怒号のような気合と澄んだ音が鳴った時、

本物のアーマーテンタクルの触手を闇刻一閃が斬り裂いていた!!


「ぬぐあああ?!」


その瞬間、虚像の12体の怪人の姿が消える。


「完璧すぎる虚像だった。っが、殺気がまるで無かったがな。」


勝利を確信しインプルスコーニが膝を突く。全ての魔力を

搾り出し、更に技の反動が途轍もない消耗を強いているのだ。


実体化し攻撃可能となった瞬間の触手に闇刻一閃を受けてしまった

アーマーテンタクル。痛覚などという鈍くて遅い信号など待たず生

体レーダーの空間認識で事態を察知したアーマーテンタクルとその

頭脳は躊躇う事無く重い決断を即実行した。


斬られた触手に繋がっている右足を根元から斬り捨てたのだ。


闇刻一閃の剣先が触手に触れた瞬間に本体と右足の空間を

切り離す。足の付け根からザックリと切り離され大量出血

が盛大に吹き出す重大な損傷を負ってしまう。


だがそれで済んだ。


先っちょを切られただけの触手。だが闇刻一閃の凄まじいエネ

ルギーを秘めた切断力に触手の先端からイナズマの様な勢いで

亀裂が走り一気にその上の右足までをズタズタに斬り裂いてしまった。


もし右足を切り離すのがコンマ1秒でも遅れていたら

闇刻一閃の秘めたエネルギーはアーマーテンタクルを

一刀両断にし最上級怪人といえど絶命は免れなかったろう。


グニュルルルルル…!!!

グニュルルルルル…!!!


力を振り絞り無言で攻撃を繰り出すアーマーテンタクル。

勝利を確信した心の隙、そして肉体の激しい消耗で動きの

止まっていたインプルスコーニの様子。まさに千載一遇の好機だった。


それを油断と断じるのは酷だろう。


闇刻一閃を身体に受けて生存した前例なぞ無い。

ありえない筈の最上級怪人の攻撃を驚愕しながら

も致命的な部位への一撃だけは避けきったインプル

スコーニは最大限に賞賛されるべきだ。


分子結合崩壊


アーマーテンタクルの触手から高周波で共振させた単分子を

放出し対象の分子や原子の結合を崩壊させ完全破壊し素粒子に

分解消滅させる武器。自身を含め対象以外を消滅させないよう

放射をコントロールするには高度な計算能力が必須の凶悪兵器だ。


いかなる物質でも消滅させられるその攻撃はインプルスコーニ

から命以外の多くを奪った。


「おおおっああああっ!!」


インプルスコーニの右腕、肘から先と大剣が消滅した。

そして上半身を覆う漆黒の鎧の大半と魔獣を模した兜が

消えその素顔が露になる。


若者と評してよい瑞々しい容貌。くっきりと太い眉に

人好きしそうな明るい人柄を想起させそうな顔立ち。


もしも表情があればの話だが。


堅く目を閉じ完全な無表情。それが頭部の奇怪さを際立たせて

いた。


額から後頭部まで頭全体を不気味なモノが覆いかぶさっている。

巨大なフナ虫のような禍々しい奇怪生物。それはインプルスコー

ニの頭部に乗っているだけでなく無数にある脚や触覚をその頭部

に挿し込んでいた。


奇怪な虫には人間のような目玉が一つ備わっており

ギロギロ目を動かすとそれに合わせた様に無表情の

口から言葉が放たれる。


「ジジイィが!!我が闇刻一閃を受けながらまだ生きて戦えるなど

埒外の化物か!!だが気配で分かるぞ。貴様は今や現身だな!」


「化物にバケモノ呼ばわりは心外じゃな。そっちがお前さんの本体と

言う訳かい。」


「それがっ!!!どうしたあぁぁ!!」


インプルスコーニは地を蹴り一瞬で間合いを詰めると残った

左手を手刀としてアーマーテンタクルに斬りかかる。


ザシュッッッッッ!


包丁でイカを捌くような音をさせアーマーテンタクルの触手を

更に一つ切り落とした。


右足を失うイレギュラーで虚数構成体を維持する複雑怪奇な

エネルギー循環に齟齬が生じ虚数空間という無敵の鎧が剥が

されていたアーマーテンタクル。下級や上級の怪人などとは

比較にならない強靭な身体組織を持つが魔王軍四天王の手刀

はそれ自体が英雄クラスの剣術に匹敵しその斬撃に抗し得な

かった。


首を狙われたアーマーテンタクルはインプルスコーニの手刀の

威力を推定し、触手で首を守ったのだ。


だが、死神教授としての冷徹な計算はインプルスコーニの体力

の限界を算出し激昂しやすい性格をも利用しての勝利の方程式

をすでに組み上げていた。


対峙する二人の周囲に連続してフラッシュが光りガープ空間を

仕切る次元の壁に亀裂が入る。ガープ空間の限界時間。まも

なくこの異空間は消失し通常空間に復帰しようとしていた。




一方、



親玉たちが異空間で対決している頃、通常空間でも配下達が激烈な

戦いを繰り広げていた。


「「「「ヒイイイィィィィィアアァァァァ…」」」」


世にもおぞましい奇声を上げダークレイスの大群が要塞前面の

とある一角に陣取る戦闘員の部隊に迫る。


呪いや毒化、爆裂するエネルギー波を放つ攻撃呪文ティルトウェーブ

などの魔法攻撃を堡塁跡を掩体陣地として立て篭もり魔法に対処する

戦闘員部隊。それに対しダークレイスは直接攻撃に打って出たのだ。


吸精接触。ダークレイスの手に直接触れられたが最後、生命力を

吸い取られ瞬く間に絶命する。それを成す為に両手を広げ滑るよ

うな動きで直進するダークレイス群。



にょき



その目前に奇妙な物が地面の水道メーターボックスのような

収納設備から姿を現した。一定間隔で何基かが現れて並ぶ。


戦闘員達が立て篭もっている一角はこの『散水スプリンクラー』

設備が比較的多く残存している区画だった。


ぷしゃあああああ………


「「「「ヒエエエエエエェェェェ……」」」」


世にも情けない悲鳴を上げてダークレイス達はたじろぎ動きを

止めてしまった。



スプリンクラーが散水するのは聖水。ダークレイスほどの上位

アンデッドを倒す効果は無いが苦手ではあるのだろう。


そうして動きを止めたダークレイスに対しガープ戦闘員たちの

猛射が始まる。


10名の戦闘員がチームで電磁レール砲五門を操作する。要塞の

電源を活用できる場なら携行式といえど砲弾を撃ち尽くすまで攻

撃可能だ。


そして12・7mm重機関銃を携行した戦闘員が16名。彼らが

毎分1300発の発射速度の重機で濃密な弾幕を形成し、聖水

を避けて回り込もうとしているダークレイスを射竦めた。


ドガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!

ドガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!


物理攻撃無効のはずのダークレイスに着弾する射撃。その理由は

弾丸にあった。魔力付与である。


ただ、地球由来の物質には魔力付与は不可能だったのでマールート世界

の金属を魔力付与する予定の弾丸などにコーティングし魔術師ギルドの

師弟コンビに魔力付与してもらったのだ。


少ない質量で充分な魔力を保持でき砲身内の摩擦や熱に損壊し難いとの

判断でコーティングする金属にミスリルが使用されている。


ミスリル魔力弾を放つ重機関銃。無理矢理な科学と魔法の合体攻撃だが

ダークレイスには効果抜群であった。


上級冒険者の魔力付与ソードの一撃に対し重機関銃の魔力弾の百撃が

劣る事はなかった。蜂の巣にされ1体、また1体と消滅させられるダ

ークレイス。だが彼らを襲う攻撃はそれだけではない。


同じく魔化されたミスリルで覆われたオメガ・タングステン砲弾を

打ち出す電磁レール砲。その威力は縦に貫通し2~3体のダークレ

イスを一撃で消し去っていく。


指揮官のいないダークレイス隊は統制を失い不利な状況へと追い込

まれていった。



ダークレイス部隊の陣頭指揮を取るはずだった闘魔将ドルブ。だが

彼もまた熾烈な戦いの真っ最中であった。


ドルブを包囲するように散開し連携する戦闘員10名。彼らは

どこかSFチックなデザインの狙撃銃のような装備を構えている。


先手を取ったのはドルブだった。


ジャアアアアア!!


3名の戦闘員の足元から間欠泉のような勢いで液体が噴き出す。

それは液体の身体を持つ水怪ドルブの一部であった。


よく見れば球形の液体であるドルブの直径が3メートルから2メートル

ほどに縮んでいる。その分を地下から戦闘員達の足元に伸ばしていたのだ。


「ちょこまかとよく動く。だが、まず3匹を始末してくれよう。」


うがいしながら喋るような声でドルブが宣告すると3名の戦闘員を覆って

いたドルブ液が一瞬でその体内へと流れ込んだ。飲食しない身体構造の

戦闘員だが呼吸などに必要な開口構造が存在する。そこから体内に侵入

したドルブは強力な水圧をかけ一気に膨張。戦闘員達の身体は破裂して

彼らの命は奪われた。


戦闘員NO505、通称ピアニスト。戦闘員NO893、通称ヤクザ。

戦闘員NO25、通称ダジャレ親父。この世界初のガープ戦死者である。


だが残った戦闘員達は平常通り戦闘行為を継続している。それが戦闘員

という者だからだ。死した仲間に思いを馳せるのは戦いが終ってからでいい。


「動きを止めるな!!奴に狙いを絞らせず攻撃チャンスを見極めるぞ!」


攻撃チャンスを狙う戦闘員達に支援火力が助太刀する。


ドドドン!

 ドドドン!


巨大ロボ、ジェノサイダーガープ3号。武闘公インプルスコーニの

猛攻で機能停止寸前だが残存している小口径火砲で水怪ドルブに向け

攻撃を開始した。本来は肉薄攻撃で迫る歩兵の掃討に用いる擲弾を撃

ち込むが闘魔将のドルブには効果が薄い。


だがドルブの意識は完全に巨大ロボットの方に向いた。


「ザコ共より先にアレに止めを刺しておくべきだな。」


そう言うやドルブは地面の下に染み込ませ広げていた身体を引き戻し、

一つの塊りになり巨大アメーバのような動きでジェノサイダーガープ

へとよじ登っていく。


異様な動きながら異様な素早さで巨大ロボの破損箇所から内部へと侵入

する水怪ドルブ。


内部の隙間から重要機器や動力源と思われる場所に進出。内側から水圧を

かけて膨張し片っ端から粉砕してゆく。更に液体の身体が通電させ電気回

路を焼く副次効果まで加わり内部の破壊は急速に進んだ。



バコォォォォン バコォォォォン…


分厚い装甲の内側から篭った釣鐘の音のような響きが続き破損箇所から

炎と黒煙が立ち上る。ロボの装甲を吹き飛ばせない小爆発が中で連発し

ているのだ。程なくジェノサイダーガープの目の光りが消え機能停止、

そのまま横倒しに倒れ臥した。


「ヴォフォフォフォ、実に他愛も無いガラクタであったな。」


ロボの胸部にある亀裂から大きな水滴の姿で出てきた水怪ドルブが

勝ち誇ったようにあざ笑い、そのまま地面へ降下した。


そこを射撃体勢で待ち構えていた戦闘員部隊の一斉射撃が迎え撃つ。

地面に降りて染み込まれる前、ドルブが一塊のうちに決着を着ける

べく狙い撃った。


ドゥドゥドゥドゥドゥドゥ…

 ドゥドゥドゥドゥドゥドゥ…


X型の特徴的なマズルフラッシュを光らせながらSFチックな長銃の

連射音が響く。


それを確認してドルブはほくそ笑んだ。


ドルブの身体に効果が無かった敵の連弾攻撃、30mmバルカン砲と

同系列の兵器であると思われたからだ。


だが、敵弾が命中した瞬間、ドルブは驚愕する事になる。


戦闘員達が装備しているのは特殊ニードルガンだった。それは短針銃のよ

うな微細な針を無数に打ち出す形式ではなく姿勢制御が可能の大型の針を

セミオートで撃ち出す兵器だ。


骨子は先端が必ず目標に向く事と銃身内を含め目標以外の物体に特殊効果

の針を接触させないで撃つ銃である事だった。


今回使用されている針弾は凍結ニードル。


未来科学チートと言うべき熱伝導を完全遮断できる特殊皮膜に覆われた

重金属の針。それは-273.15 ℃の絶対零度に冷やされたまま遮断皮膜で

維持されていた。


脆弱な特殊皮膜は固体だろうと液体だろうと対象物体に命中した途端に

剥がれ散り超低温の針が突き刺さる。


凍結ニードル1本でホッキョクグマが凍りつく。ましてや7丁のニードルガンの

凍結ニードルの連射を喰らったら生きたマッコウクジラでも即座に冷凍マグロの

ように身体の芯までカチコチに凍結するだろう。


先に倒していた戦闘員3名。彼らの落としたニードルガンのうち1丁が破損し

吹き出た冷気に凍り付いている事にドルブが気が付いていれば違った対応を

していたかも知れぬ。なにしろドルブの弱点は冷気なのだ。


ズブッ!!ズブッ!!ズブッ!!ズブッ!!ズブッ!!ズブッ!!


水怪ドルブの体内に絶対零度の針が次々と打ち込まれてゆく。ホワイト

ドラゴンの冷気ブレスや冷凍呪文などと比べてもずっと強烈な低温攻撃。


ドルブは断末魔の悲鳴を上げる事すら出来ないままデッカイ氷の塊りに

変わり果ててしまった。


ドスン


そのまま墜ちた氷塊ドルブ。すぐ傍らには黒煙を上げ破損箇所から炎を吹く

ジェノサイダーガープがあり、その熱で氷が溶けドルブが蘇生する可能性が

あったので戦闘員達は移送する作業に取り掛かろうとした。



ドオオオオオオオオン!!



その時、落雷のような音を響かせて怪奇な光を放つドーム状の次元断層、

外から見たガープ空間が大きく歪み捻れる様に撓んで消滅した。



ガープ空間が存在していた場に死闘を伺わせる凄惨な姿のアーマーテンタクルと

インプルスコーニが対峙している。



「あああっ!!アレはまさか!」


ガープ要塞内で戦いの様子をモニター越しに固唾を呑んで見守っていた

王子にして上級導師のレムルスがインプルスコーニを見つめて絶叫した。


アーマーテンタクルと同様に満身創痍のインプルスコーニは鎧と兜を

喪失し素顔を晒している。彼はそこから目を離す事が出来ない。


「間違いない!兄上だ!!あれはアニーサス兄上だ!!」



それは魔王軍との戦いで行方不明となっていたラースラン王国の

第一王子アニーサスの行方が判明した瞬間であった。






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