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35 巨大魔獣VS侵略ロボット

いつもお読みいただきありがとうございます。

私、この年末年始は多忙を極め執筆の時間が

得られそうに無く今回を年内最後の投稿となります。


次回は新年の1月9日の土曜日の投稿を予定。ご了承下さいまし。



 



侵略ロボ・ジェノサイダーガープ3号、全高150メートルを

超えるメタリックな土偶ロボットが不気味に目を光らせて浮き

上がりイオンジェット・ホバーの推力で滑るように迫る。


対する超巨大魔獣ゼルーガは全長300メートルという巨体

をたじろかせ前進を止め様子を伺う。


釈然としない思いを口調に乗せ魔王軍四天王、武闘公インプル

スコーニは呻く。


「何なのだあれは?いったい何故…」


「アレは元の世界で我らガープが戦った最終決戦に惜しくも完成寸前

で間に合わなかった戦略兵器じゃよ。もっとも、その未完成部分とい

うのは生物・化学兵器無差別散布というこの世界で使うつもりの無い

機能なので関係機能を取り払えば完成品という訳なのじゃ。」


「そうではない!何故あんな兵器をこの場に間に合わせる事が出来た?

まるで…」


「まるでも何も貴様らの襲来は予期しておったよ?当たり前じゃろ?」


「なっ!」


「貴様らも読んでいるじゃろう?ワシ等の弱点は数の少なさだと。

元の世界でも戦闘力や技術力の優越があっても数的な劣勢が世界

征服最大のネックじゃった。破壊工作活動以外での戦闘行為は

常にまとまって行動する必要があった。分散なぞ愚の骨頂。」


ここで死神教授は微笑む。人相の悪さから実に邪悪な笑みである。


「あえてラースラン支援で兵力分断して見せたのじゃ。貴様らが

そこを突く狡猾さを持っていて助かったわい。侵略者として手本

通り襲撃に来てくれた礼に手厚く迎えてやろうかのう。」


「黙れジジイ!!我らを甘く見た事をあの世で後悔するがいい!」


ブワアァァァ!!!!


あたり一面に強烈な熱風が吹き渡る。ホログラフィーの死神教授には

無意味だが魔王軍の連中もまったく平然としている。一旦鎮火した防

衛施設の火災が再燃したくらいの熱量なのだが。



ゴヴォオオオオオオオオオオオオ!!!!


超巨大魔獣ゼルーガが巨大な口から猛烈な炎を吹き出していた。

放射状に広がる青白から白に輝く超高温の炎は対象である侵略

ロボ・ジェノサイダーガープを包み更に数百メートルの範囲に

広がる。恐ろしく広範囲な火炎放射だ。しかし…


「うぬっ。」


猛烈な炎の中から土偶のような巨大ロボが平然と姿を現す。


「おのれぃ、聖都アスカニアの街を焼き払ったゼルーガの極大業火が

効かぬとは…」


「街を焼き払った?要するに一般住宅と非戦闘員を焼いただけじゃ

ろう?そんなものがジェノサイダーガープに通用するはずが無いわ。」


ズシャアア!!


インプルスコーニは無言で剛剣を振るう。武技を用いずとも神速の

剣さばきだ。


斬り裂かれた地面。その場に存在していた死神教授の幻影は消えていた。


「ただでは済まさん…」


魔王軍の四天王は怒気を込め鉄の城塞を睨みながら吐き捨てた。



そして巨大魔獣VS侵略ロボの戦い、ゼルーガの火炎放射のお返しと

ばかりにジェノサイダーガープの腹部と肩のミサイルハッチが開き

十数発のミサイルが一斉発射され即座に連続爆発音が響く。極至近

距離なのだから当然だ。展開している師団単位の戦力を面で制圧する

火力を受けてなおゼルーガは揺るがない。異常な再生力と生命力に

加え痛覚を持たない大怪物は肉弾戦に持ち込もうと前進を開始する。





「あの大怪獣はジェノサイダー・ガープに任せておけば問題無い

ようじゃの。アホみたいな生命力はあるが肉体の強靭さは爬虫類

一般と大差ない。ジェノサイダー・ガープの切り札の1つが有効

な筈じゃ。」


ホログラフィー投影を終えた教授はインプルスコーニを煽っていた

口調とは違い真面目な口ぶりで分析する。


「どうやら教授殿は最初から予想していたようですな。魔王軍の

襲来とその構成も。」


「ええ、我々の活動や戦いを敵が情報収集し調べればこうなる

じゃろうと予期出来ますわい。我らは爆裂兵器や熱線射撃など

の投射攻撃主体の戦い方しか披露しておりませんでな。しかし…」


ジジルジイ大導師と教授の会話、予定通りな展開のはずだが

死神教授に何故か余裕が無い様子だ。


「ダークレイスとやらは魔力付与した武器で対抗できる。以前に

提供して頂いた闘魔将どもの情報から水怪ドルブなる奴の弱点が

冷気である事も判明しておる。…じゃが、直接乗り込んで来た

魔王軍四天王インプルスコーニ、奴の存在だけで魔王軍全体の

戦力値が激増しておるわい。」


「ですが、あのゼルーガを仕留める事が可能な巨大ゴーレムならば

武闘公インプルスコーニに対処出来るのではありませんか?」


王国の王子にして上級導師のロムルスの指摘を培養槽の中の闇大将軍

が否定した。


「あの大怪獣より武闘公っての方が強いぜ。戦術AIの推測じゃ奴は

うちの改造人間のモーキン、カノンタートルにウオトトスの三人が

同時に挑んでも倒すのは無理らしい。つまり…」


「ワシが直接出るほかあるまいのう。」


気負った様子も無く死神教授がつまらなそうに吐露した。




アンギャアアアアアアア!!


  ゴキィィンンン!


接近した大魔獣ゼルーガが咆哮を上げ侵略ロボに攻撃を仕掛ける。

とてつもない体重を乗せた尾の一撃をぶち当てた。


猛烈な勢いのゼルーガの尻尾は土偶のような侵略ロボ、ジェノサイダー

ガープの腰付近に当たり巨大ロボを大きく揺るがせる。さらにもう一撃。


ビュービィィィィィ………


だが侵略ロボは対抗するように防御機構を発動し電動ヒゲ剃り器の

ような音を発し全身が霞むように振動する。


ジェノサイダー・ガープの装甲の表面にはミクロン単位のトゲが

剣山のようにびっしり生え揃っている。そして装甲全体が高周波

振動し触れる物体を全て粉砕するのだ。


高周波振動装甲に触れたゼルーガの尻尾は粉微塵に吹き飛んだ。

巨大魔獣は一時的に尻尾を失いたたらを踏む。


見る間に尻尾を再生するゼルーガに向け今度はジェノサイダー

ガープが攻撃を仕掛けた。


巨大ロボの顔、両目の間の下から筒状の物が伸びる。ちょうど

ディフォルメされた蛸のようなタコチュー口のようなそこから

強烈な射撃が開始された。



高速破壊砲。


要するにバルカン砲なのだが口径が20㎜や30mm等ではなく

88mmの巨大バルカン砲、更に砲身内にライフリングが刻まれ

てない滑空砲となっており威力と射程が増し、ワザと弾道を

ブレさせて広範囲に破壊力のシャワーを撒き散らす破壊兵器。


高層ビルを一瞬で粉末に変えてしまうその射撃を至近距離

かつ巨体ゆえゼルーガは正面からまともに浴びせ掛けられ

てしまう。


ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!


ゼルーガは悲鳴の咆哮を上げる事すら出来なかった。

頭部が消失し上半身がザクザクと削られて行く。だが

下半身の直前、特に胴回りが太い箇所で高速破壊砲が

削る速度よりもゼルーガの肉体再生速度が勝り破壊が

止まってしまう。


程なく88mm砲弾を撃ち尽し高速破壊砲が沈黙すると

巨大魔獣ゼルーガは再生し何事も無かったかのように

咆哮を上げた。


「ふむ、中核部位がある訳ではなく細胞全てが再生力

を備えておるようじゃの。」


「そんな…一体どうすれば…」


「なに、心配いらんぞ。ジェノサイダー・ガープAIもあれに

対抗する切り札を使うじゃろう。それが駄目なら奥の手じゃ。」


一体どれだけ隠し玉を持っているのだろう?そう思いながら

ロムルスはスクリーンで展開される戦いの様子に意識を向ける

のだった。



痛みを感じないとはいえ巨大魔獣ゼルーガは一方的に攻撃を

受けた事に激昂していた。牙だらけの口を開き身構える。何か

の大技を繰り出そうとしているようだがジェノサイダーガープ

が先手を打った。


ジェノサイダーガープの胸のミサイルハッチが開き左右の

大型ミサイルを2発同時発射する。


ズドォォォーン!!


 ガガァァァーン!!


小型の航空機ほどのサイズのミサイルが連続命中し再生した

ばかりのゼルーガの頭部と胸部を吹き飛ばす。しかしそれは

次なる攻撃の序曲に過ぎない。


ミサイルを発射した直後に侵略ロボは合体を解きパーツごとに

バラバラに飛行し巨大魔獣を円形に取り囲む。そしてパーツ間

に放電実験のような稲妻が走りスパークし始める。


「ほほう、これは一体?」


「この後のマイクロ波攻撃の下準備ですじゃジジルジイ殿。

巨大魔獣が細胞単位で再生するなら全細胞を電子レンジの

要領で全て加熱して焼いてしまえばよい。原理は電子レンジ

と同じじゃが遥かに強力な『収束マイクロ波照射攻撃』が

13.9メガワットの大出力で放たれる!大魔王の戦略兵器よ、

果たしてこれに耐えられるかのう。」


取り囲まれた大魔獣ゼルーガは一時的に頭部を失い立ち尽している。

その直上に侵略ロボ・ジェノサイダーガープの頭部が飛来しホバリ

ング。そして怪光線としか表現しようがない放射状に広がる光線を

目から放ちゼルーガの全身に照射された!



ビイイィィーーーーーム!!



ミサイルで頭や胸を潰し一時的に眼や脳など感覚器官を失わせ

無抵抗化させる。だがミサイルを放った理由がもう1つあった。


「奴は火炎放射攻撃をしておったからの。口腔や喉、火炎に関係

ありそうな部位など熱に強い細胞を吹き飛ばしておいてやった。

再生中の幹細胞はそんな特質はないじゃろう。加熱ムラがあると

上手く料理・・できんでな。」


本来は防衛施設や軍艦などを乗組員ごと蒸し焼きにする兵器である。

ゼルーガの全身は一瞬でメイラード反応を示した後、急速に焼け焦げ

て行く。


しかし苦痛を感じないゼルーガは暴れる事無く全細胞を加熱され

頭部の再生を果たせぬまま全細胞が炭化。収束マイクロ波照射が

終わった段階で灰燼に帰していた。




ドッゴオオオオオン!!!


圧勝した侵略ロボット。合体し勝ち誇るかに見えたその腕が突如爆散する。


剣を構えるは武闘公インプルスコーニ。


「武技、真裂一閃!」


ビュービィィィィィ………


神速の跳躍で剣を振るう武闘公にジェノサイダーガープは

鉄壁の高周波振動装甲を発動し対応した。しかし…


ズガアァァァン!!!!


何事も無かったようにロボの残った腕も切り刻まれ爆散する。

四天王がロボを圧倒しているが魔王軍はバラバラにガープ要塞

に向かおうとはせず待機している様子だ。


「ふむ、流石に来ぬか。魔力付与して頂いた隔壁と電磁バリアー

フィールドで分断するつもりじゃったがロボを仕留めてから全員

一塊でくるようじゃな。」


(こちらが予期していた事から罠の可能性を見抜かれたか…

抜かったわい。)


「もはや猶予はないようだの。出るとしよう。」




侵略ロボット・ジェノサイダーガープ。超巨大魔獣さえ仕留めた

巨大ロボは残念ながら無敵ではなかったらしい。人間サイズの武

闘公インプルスコーニの激烈な攻撃によって両腕を破壊され破損

箇所は計測不能なほど増えてゆく。


近接防衛用の小口径火器は全て跳ね返されるがむしろ僥倖だったか

もしれぬ。もし高速破壊砲や大型ミサイルが残っていて跳ね返され

れば即終了していただろう。


「ええい、手間の掛かるデクの坊めが!オリハルコンゴーレムすら

これほど面倒ではなかったぞ!」


だが、流石に150メートル級の巨大ロボを相手に武闘公も疲労の

色が濃い。武技を発動するのに必要な内なる魔力を補うため周囲の

魔素を取り込む呼吸法を続けながらぼやく。


「スクラップ寸前じゃな。まさか重機動型の巨大ロボをとして

相手に出来る者とこれほど早くこの世界で出会うとはいささか予想外

じゃったわ。」


「…また出てきたかジジイ。ご自慢の巨大ゴーレムが砕け散るのを

そこで見て…現身か!!」



背後に要塞に残った最後の戦闘員36名を引き連れて死神教授が

幽鬼のように立っていた。


インプルスコーニが振り返ると同時に教授は顔の半分を覆う仮面の

ようなフェイス・プロテクターを外す。そこに人ならざる眼、人なら

ざる皮膚の異形を垣間見せた瞬間、教授そのものが人外へと変貌した。



死神教授だったモノは二回りほど体が大きくなり装備は全て

はじけ飛んだ。


その頭部は巻貝状の殻を被ったタコ、つまりアンモナイトに

似た形状で全身の皮膚もタコかイカを思わせる周囲の色に合

わせ目まぐるしく模様を変化させる異形。二の腕からそれぞれ

2本ずつ、足にも2本ずつの計8本の手足と同じ太さの触手が

伸び蠢いている。


巻貝状の殻は宝石化したアンモナイトの化石、アンモライトの

ような幻想的な色合いだがその美しさが逆に全体の奇怪さを

際立たせていた。


最上級怪人 アーマーテンタクル


それが死神教授のもう一つの姿だった!!



「ガープ空間!!発動!!!」


アーマーテンタクルが両手を広げるとそこを起点に次元断層で

切り取られたドーム状の空間が発生し魔王軍やガープ戦闘員ら

と離れインプルスコーニとアーマーテンタクルの二人だけが

空間内に閉じ込められる。


「な。何だこれは?!」


「我ら最上級怪人には生体亜空間制御器官が備わっていてのう。

それを利用した閉鎖空間じゃ。すまんが此方に多少のバフが乗る

のじゃが時間制限付きじゃから大めに見てくれんかの?」



チャキ……


無言で剣を構える武闘公インプルスコーニ。



「くくくっ、では四天王VS三大幹部の死闘の幕開けと行こうかの!!」





次回は新年の1月9日の土曜日の投稿になります。

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