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31 竜都へと迫る空中艦隊

来週からまた土曜日夕刻の次話投稿の形に戻ります。


ラゴル王朝の竜都ドルーガ・ライラス。


その中枢たる大竜宮殿の中央庭園に今、無数の

幟旗が並び極彩色の戦衣に身を包んだ竜族の

参戦貴族達が豪華な装飾に彩られたバルコニー

の玉座に平伏している。


玉座の左右には将帥や軍師などが並び後方に

高級士官や将校が控えている。


中央の玉座に座る竜帝王ラゴル・ダイナスの

命令によって決戦を直接見物できるこの場に

大本営を移したのだった。



ジャアアアアアアアアンン!!!


地球の銅鑼に似た楽器が打ち鳴らされ大音響が

こだまする。


銅鑼に酷似しているが直径は30メートル以上あり

竜形態になったホワイトドラゴンが巨大な撥を用い

て打ち鳴らしていた。


巨大銅鑼の音を合図に平伏していた貴族達が立ち上がる。


「余の忠実なる臣よ!!汝らは誰の為に戦うのか?」


竜帝王が立ち上がり出撃するドラゴン部隊に問いかける。


「「「偉大なる竜帝王陛下の為に!!!」」」


ジャアアアアアアアアンン!!!ジャアアアアアアアアンン!!!


出撃するドラゴン貴族が声を合わせ唱和すると銅鑼が鳴る。



「汝らは誰の為に勝利を獲得するつもりであるか?」


「「「偉大なる竜帝王陛下の為に!!!」」」


ジャアアアアアアアアンン!!!ジャアアアアアアアアンン!!!


「最後に問う。この世界は誰の為にあるのか?」


「「「偉大なる竜帝王陛下の為に!!!」」」


ジャアアアアアアアアンン!!!ジャアアアアアアアアンン!!!


「その意気や良し!!行け!ラースランの羽虫を撃滅せよ!」


ジャアアアアアアアアンン!!!ジャアアアアアアアアンン!!!

ジャアアアアアアアアンン!!!ジャアアアアアアアアンン!!!

ジャアアアアアアアアンン!!!ジャアアアアアアアアンン!!!


竜帝王の号令と共に銅鑼が連続で打ち鳴らされ、貴族たちは

格好付けたポーズで次々とドラゴン形態に変身して飛び立つ。



この様子を内心で呆れ果てながら五大賢者の1人である

青玉の賢人ハーリクは眺めていた。


(何と愚かしい。戦場において時間は宝石のように貴重だと

いうに下らぬ式典で無駄にしおって。)


夜が明ける前、最終防衛ラインに配置されていた使い捨て

ではない偵察隊までが通信途絶し事態を察知したハーリク

は即座に迎撃体制を取るように進言した。


だが竜帝王が下した命令は出陣式の準備だった。


結局、目視できる距離まで迫った敵は豆粒のよう

だった状態から目が良い者なら艦艇の形状を把握

出来るほど接近されている。


(これでは迎撃できる機会は一度のみ。しかも手間取れ

ばこの竜都まで敵の攻撃が及ぶだろう。まったく、ワシ

がレモラ・オーブを用意して必勝の準備をしてやった故

に問題無かろうが連中だけに任せていたら危なかったな。)


そのレモラ・オーブは既にハーリクの手によって起動し、

絹の布地で保護されてプラチナドラゴンへと変じた侯爵令

嬢ベルクーナの手の中にある。


ラゴル王朝に属するドラゴンの内、成竜として戦えるのは

550頭余り。その内の400頭が迎撃部隊として飛び立った。






一方のラースラン空中艦隊、艦列のやや後方に2号ガープ艦が

随行している。既に竜都奇襲攻撃隊を搭載した1号艦は別進路

を取っておりここにはいない。時空戦闘機ハイドルを1号艦の

搭載機のうち4機を含め12機を2号艦が管制している。


飛行甲板に搭載しきれないので艦の周囲に4機が展開していた。


2号艦の船室から複雑な視線をそのハイドルに向ける者達がいる。

ルーフルとフィンだ。ラースラン軍令部の意見により部下とは別

の船室での抑留となったが怪我のケアをするという名目で1人だ

け、つまり自薦他薦でフィンが付き添う事になったのである。


形としては抑留だが可能な限り便宜を図る。というネータン総司令

の言葉を受けルーフルは戦いを見届けることが可能な居室を要望し、

目視監視に使う大きな窓のある監視船室が用意された。


大きな窓、二人並んで上半身が見える程度の窓が3方向に設えられ

ている部屋で見通しは良い。


窓はガープ技術陣が分厚い特殊な防弾ガラスを嵌めている上に

堅牢な金属の支柱が窓枠と一体化しており普通の手段では破れ

ない。もしルーフルがドラゴン化して破ろうとすれば狭い室内

でフィンがペッチャンコに潰れるに違いなく、ルーフルの人柄

からそれはありえない。ゆえにラースラン側は見張りも置いて

いなかった。


つまり二人っきりである。



「少し休まれますか?」


いくら生命力が強いミスリルドラゴンでもビーム砲直撃の傷は

簡単に癒えず、ルーフルは上半身裸のまま包帯を巻いてフィン

に肩を借り窓際に立っていた。


「いや、疲れはていない。大丈夫だよフィン、我々はこの

戦いを最後まで見届ける責務がある。へばってられないさ。」


「辛くなったらすぐ言って下さいね。それにしてもこっち側はあ

の恐っそろしいガープのハイドルって戦闘艇まで臨戦態勢なのに

竜都は何やっているんですかね…」


切り捨てられたとはいえ母国である。その緩慢な反応に

心配になってくる。


「ん、そうでもない。やっとって感じだけど…動いたね。」


ルーフルが見つめる先、空中に浮かぶ円盤状の島、竜都ドル

ーガ・ライラスから雲霞の如く飛行物体が舞い上がり艦隊に

向かって来るようだった。


だが…


「馬鹿な!何を考えているんだ大本営は?!」


竜都から出撃したドラゴン軍団は艦隊に向いた杭のような

密集陣形で突き進んでゆく。その常識外れな戦法に思わず

声を上げてしまうルーフル。


ドラゴンとは単体でも強大な存在だ。特にゴールドやシルバー、

プラチナなどの上位種は1,2頭で巨大な戦列艦に対抗できる

戦闘力を有している。


単独でも敵艦に辿り着ければ撃破する事が可能なのだから

艦砲射撃の的を絞らせず散開して襲撃するのがドラゴン軍の

王道戦術。本来は広く展開し上下左右など縦横無尽に位置取り

して攻めるべきなのだ。


密集突撃など論外。


事実、有効射程に入った途端、ラースラン艦隊から密集した

ドラゴンに向け魔導砲の集中砲火が開始される。


  ドギュルルルルルルル!!!

  ドギュルルルルルルル!!!


    ドギュルルルルルルル!!!

    ドギュルルルルルルル!!!


明確な殺意の込められた青白いエネルギー弾がドラゴンの命を

刈り取ろうと轟音を響かせ迫る。


しかし、ある座標に到達したとたん、エネルギー弾は輝きを失い

大きさも半減。猛烈な弾速がくたびれた蝶のようにヘロヘロと進

むかの如く鈍速化。ドラゴンたちは歓声の咆哮を上げた。


「ふふっ。こんな砲撃など目を閉じても避けられるわ。」


先頭を行くプラチナドラゴンのベルクーナが楽しげに嘯く。

事実、彼女は弱体化した砲撃を華麗な飛翔で回避する。


優れた飛行能力を持つ彼女だけではない。どちらかと言うと

鈍重な飛行能力のブラックドラゴンの従者オバタリアも難無く

貧弱な砲撃を回避してゆく。


想像以上のレモラ・オーブの威力。ドラゴン軍はラースラン側

が慌てふためいていると確信していた。しかし…






「ガープハウニブとかいう小型飛行機械の収集して来た

情報の通り魔法無効化のアイテムを使って来たな。思った

より大規模で強力だったが。」


「他種族の一般兵からの情報ですからね。詳細を調べる為に

竜都の中枢までガープ・ハウニブを送り込むには露見のリスク

が高すぎて見送りましたから判明した情報が限られます。」


ラースラン艦隊の旗艦マトゥの作戦室に緊張や狼狽は無い。

ネータン総司令官と烈風参謀が予測の修正と対応を協議し

ている。


「魔導砲弾の減衰位置から効果範囲とその中心、つまり問題の

マジックアイテムの存在する位置を計算で割り出してあります。」


「そんなややこしい事をせずとも一目で分かるわ。あの先頭の

シルバー…いやプラチナドラゴンが持っているのだろう?すぐ

に破壊は可能か?烈風参謀。」


「いつでも破壊出来ます。しかしもう少し誘い込みましょう。

彼らが引き返せない所まで進んだタイミングで命綱を切り落と

す方が効果的ですからな。」


「くくくっ、魔法や魔力に依存しない攻撃手段を持つ貴様ら

ガープが切り札だ。ラゴルの阿呆どもが気が付く前に一気に

決めてしまおうか。」


ここで幕僚の1人、ダラン准将が発言を求めた。


「司令官閣下、このままでは無駄弾となるばかりの艦砲射撃を

一時中断すべきかと考えます。」


「いえ、出来れば砲撃は継続して頂きたいのですが。」


「ほう。理由をお聞かせ願えませんか?烈風参謀殿。」


「敵に魔法遮断の効果を実感させ、それに依存させる為に。」


「なるほど。流石は烈風参謀殿。良い考えですが容赦が無いですな。」


二人の会話を聞いていたネータン総司令は前を向いたまま口端を

上げて命令を発する。


「適度に砲撃を継続しつつ艦隊陣形を包囲隊形へと移行せよ。」


ネータン総司令官の命令に従い艦隊は突き進んでくるドラゴン軍団を

飲み込む体制を取るのだった。






「凄い。あの勢いならもしかしてラースラン艦隊を打ち破って

しまうかも…」


魔道砲を無力化しながら猛進するドラゴン軍団の迫力に船室から

眺めていたフィンが押されぎみに呟く。だがルーフルの見解は違

うようだ。


「……1頭でも多く生き残り降伏してくれると良いんだが。」


「?」


フィンと一緒にガープ艦から戦場を見つめているルーフルは

難しい顔で一言。彼の脳裏にはネータン総司令と底の知れぬ

烈風参謀の姿が浮かんでいた。そして確信している。王朝に

とって甘い展開になるはずが無いと。


ズズン…


その時、小さな衝撃があり艦に搭載されていた時空戦闘機

ハイドルが次々と発進し始めた。先に展開していた4機と

共に編隊を組み12機全てがドラゴン軍団へと殺到する。


その死の翼共の後姿を見たフィンはルーフルの言葉の

意味を理解するのだった。






ドギュルルルルルルル!!!

  ドギュルルルルルルル!!!


「…哀れなものね。無駄と知りながら精一杯の抵抗を

続けるのは。でももうお終い。せいぜい派手に散りなさい。」


プラチナドラゴンのベルクーナは有頂天であった。もう一息で

ラースランの艦列まで到達する。敵の攻撃は問題無く弱体化し

あと少し距離を詰めれば艦艇の魔導エンジンも力を失うだろう。


目前に迫った勝利に意識を高揚させていたベルクーナは

それ・・に対する反応が遅れてしまった。


知らぬ間に左斜め前方に進出していた妙に平べったい奇怪な

戦闘艇から攻撃を受ける。戦闘艇は何か棒のような物を発射

して攻撃をかけてきたのだ。


「煙を吹きながら飛ぶバリスタの矢?そんな物が当たるかしら?」


しかしそれ・・はバリスタの矢などではなかった。


SSR-71短・中・長距離空対空ミサイル『黒鳥』、この大型の

空対空ミサイルは視程内射程、視程外射程のどちらでも

運用可能であり最高速度マッハ6で飛翔し弾頭のH・TNT炸薬

80㎏の威力で敵を撃破する。


発射直後に一気にトップスピードへと加速した漆黒のミサイル

にベルクーナは目を剥くが即座に反応し、機敏に回避行動を成

功させる。


だが、驚く事に直撃コースを上手く避けたはずの黒いミサイルは

正確に追尾して来てベルクーナへと迫る!!


刹那の瞬間、マッハの時間だ。ベルクーナは意識を向ける間も

叫び声を上げる隙も無かった。


ズガァァァン!!


ミサイルは正確にロックオン対象、プラチナドラゴンのベルクーナ

が手に持っていたマジックアイテムへと命中する。


ベルクーナが意識を向けた瞬間、手の中の希望が消えた事を

痛みと共に知った。


レモラ・オーブは木っ端微塵に砕け散った。マッハ6の速度で重量

が数百キロの物体が衝突し大型航空機を爆散させる量のH・TNT

爆薬が炸裂したのだ。


物理攻撃に弱いオーブが持ち堪えるはずが無い。おまけにベルクー

ナの前脚と胸元も爆発に巻き込まれ肉が爆ぜ一部の骨が露出し幾本も

の指を喪失してしまった。



しかし茫然自失している暇など無い。


平べったい形の奇怪な飛行艇、時空戦闘機ハイドルの一群が次々と

ドラゴンに向け黒いミサイルを放つ。


バルカン砲とミサイル搭載のハイドルが8機、1機につき10発の

ミサイルを有している。つまり80発のSSR71黒鳥ミサイルが

無防備となったドラゴン軍団へと撃ち込まれる事となるのだ。さら

にその後の攻撃のために荷電粒子砲搭載型ハイドル4機が万全の準

備で待機し待ち構えている。


ベルクーナは生き残る為に激痛に耐えながら急上昇や急反転など

あらん限りのスピードで繰り返しこの場を切り抜けようと足掻き

飛び続けた。


「お嬢様!!お怪我の具合は…ぎゃああああ!!!」


ドラゴンは強力な生物である。例え下位のドラゴンでも他の

生き物を圧倒する力と生命力を誇る。


つまり下位であろうとも、このブラックドラゴンの従者である

オバタリアのようにミサイルが顔面に直撃して即死するという

特大級の不運が無い限り簡単には倒れない。


しかし苦痛ある怪我を負う可能性はある。竜族としての誇りを

捨て貴族として贅沢と怠惰に溺れたラゴル王朝のドラゴン達は

この状況に気丈に振る舞えず情け無い醜態、すなわちパニック

に陥るのだった。




無我夢中で逃げ回ったベルクーナはいつの間にかドラゴン軍団

から離れてラースラン艦隊の後衛隊付近を飛んでいた。むろん

魔道砲や普通の強化バリスタの矢は飛んで来る。オーブの加護

が消失したため必死に回避しなければならないが例の奇怪な

飛行艇の攻撃よりはましだった。


「痛ううぅ…、もう鬱陶しい!こっちは負傷してるし一旦地表まで

下降して戦線離脱を…」


砲火を厭って戦闘艦艇から距離を置き特殊任務を担う艦艇と

すれ違う時、ベルクーナの視線が1点に繋ぎ止められる。


そして魂の抜けたような声で一言呟いた。



「…ルーフル殿下?」


不気味な威圧感を放つ異形の艦の船室の窓に勝利の栄光と

共にベルクーナが得られるはずだった人の姿を捉える。


一方、ルーフルとフィンの方も至近に飛来してきたベルクーナ

の姿を視認した。


「あのプラチナドラゴン、酷い怪我してる…」


「……ベルクーナ嬢だ。」


「え!?」


竜族同士ならドラゴン形態でも個の識別は出来る。

痛ましいモノを見る視線で向こうを見据えながら

ルーフルが呟いた言葉にフィンは絶句してしまう。



ベルクーナの方も言葉を失い目を離す事が出来ない。


上半身裸のルーフルがどこかで見たような下等種族の

女と肩を抱き合ってベルクーナの事を見ていた。


哀れみの目で。


ズキン


掴んでいた希望を失いズタズタになった手に痛みが走る。


「あ…ああっ…ああああああああああああ!!!!」


その瞬間、ベルクーナは叫び声を上げルーフルのいる窓に

全力で突進する。


屈辱、怒り、そして悲しみ。様々な想いが一気に込み上げて

来たベルクーナは激情のままブレスを吐いて攻撃しようとした。


ガープ艦に対して。


キン!!


硬質な音を響かせ艦の側舷に設置されているバルカン砲を備え

独立した火器管制やレーダーを持つ近接防御火器システムが即応

し襲撃してきたベルクーナに射撃を開始する。


ドゥルルルルルルルルル!!!!

ドゥルルルルルルルルル!!!!


「あ!?くうぅぅぅ!!」


分発5500発の30mmバルカン砲はベルクーナの身体を叩きのめす。

プラチナ鱗は貫通しなかったが強い衝撃と苦痛でベルクーナの勢いは

止められてしまう。


そして一呼吸遅れて艦首に設置されている砲塔が滑らかに動き、

装備された高プラズマ砲をベルクーナに向けた。


ギュイン!!


恐ろしく弾速の速いプラズマ球が撃ち込まれ回避し損ねた

ベルクーナの後ろ脚の付け根に命中する。


「ぎゃっ!!!」


プラチナの鱗は弾け飛び命中箇所の肉は大きく抉られた。

皮下組織からかなりの深さまで炭化させた上でだ。


ギュイン!!ギュイン!!ギュイン!!ギュイン!!ギュイン!!

ギュイン!!ギュイン!!ギュイン!!ギュイン!!ギュイン!!


威力では荷電粒子ビーム砲の方が強力だが装填速度や連射能力

では高プラズマ砲の方が優れている。対地・対空・対艦にも安定

して使える優秀な兵器だ。


連続して撃ち込まれるプラズマ弾の攻撃にベルクーナは全力飛行の

回避運動で対処を試みる。しかしガープ艦の射撃統制システムと

戦術AIの行動予測は相手にするには悪すぎた。


殆どのプラズマ砲が命中し強力な上位ドラゴンであるはずの

ベルクーナの身体はズタズタにされる。


(お母さんの仇…なんだけど…)


あまりに無残な有様に言葉を失うフィン。


その目前でベルクーナの頭部にプラズマ弾が命中し

動きが止まった。


「!」


命中した弾の射角が浅くベルクーナの頭は勢い良く仰け反ったが

生きているようだ。だが片方の角が部位破壊されて折れ、顔の

右半分が焼け爛れて右目も潰れた様子である。意識が朦朧として

いるのかベルクーナは動きを止めボロボロの前脚、手をルーフル

の方に差し伸べ何か言葉を言っているようだった。


防弾ガラスの向こう側で何も聞き取る事が出来ないルーフルたちは

ベルクーナの残った左目に光る涙を見つめるばかりである。


3秒。


命中弾を受け停止した標的・・を撃破済と仮判断していた

戦術AIと砲手は3秒間その場に飛んでいる標的を生存と判断し

直し攻撃を再開させる。


ギュイン!!ギュイン!!ギュイン!!


1発はベルクーナの右脇腹を貫通し、右の翼に2連続で

プラズマ弾が命中。右翼が捥げ落ちてしまった。


いくら飛行能力に才があっても翼を喪ってはどうにもならぬ。


ベルクーナの身体は錐揉みしながら地表へと墜落し、

ほどなくルーフルとフィンの視界から消えるのだった。



レモラ・オーブの1つとその担い手が消滅し賢人ハーリクの策が

破綻。ラゴル王朝の戦略が揺らぐ最初の瞬間であった。




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― 新着の感想 ―
[一言] もう左に残った涙とかもうだめや いきていてほしいよベルクーナさん  もう衝撃的!  上げてから殺すというのがもう泣ける まじで
[一言] ベルクーナがいきていてあの冒険者たちに拾われるという幕間があったらうれしい
感想一覧
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